10期 予想歴16年
◎コディーノ
9着/4人気
○キズナ1着/1人
▲アポロソニック3着/8人
△タマモベストプレイ8着/10人
【予想】
展開はアポロソニックの逃げが想定されるが、外からサムソンズプライドも絡んでくる。この2頭ぐらいしかハッキリとした逃げ馬はいないのだが、2列目勢はそれなりにいるし、好位にかけては皐月賞上位組が犇めく形。極端に緩むということは無いだろうが、皐月賞ほど極端に前傾ラップになり基礎スピードとポテンシャル勝負に特化するとも思わない。昨年ほど一貫ペースにならずに、多少なりともトップスピードやギアチェンジも問われる、総合力を重視して予想していきたい。
◎コディーノは正直かなり迷ったが、信じることにした。追い切りは正直良く見えなかった。ただ相手はルルーシュだし、芝コースでもあったので、その判断よりもこれまでの戦績の分析を重視。まず皐月賞なのだが、このレースは前傾ラップで基礎スピード勝負に特化した形。12.1 - 12.0 - 11.9 - 12.0 - 12.0とそこからも落とさない完全な持久戦なのだが、ここで3~4角前が壁になり押し上げていけずに、そうこうしている内に外からロゴタイプとエピファネイアに前を向かれ、逆転されて直線を向いたことが痛い。直線進路を取ってからはばてずに食らいついていて、ポジションを落とさずに先に出し抜く競馬が出来ていればチャンスは有ったと判断している。朝日杯でも基礎スピードが問われても高いパフォーマンスは見せたがロゴタイプを差せなかった。反面で札幌2歳Sで12.6 - 12.0 - 11.6 - 11.3の流れで外に出して一気に加速して突き抜けたり、東スポ杯2歳Sでは大逃げ馬がいたのであてにならないにせよ13.1 - 12.2 - 10.9 - 11.4のラップ、直線序盤から楽に内から突き抜けているように、とにかく要所でのギアチェンジ能力の高さと、そこからのトップスピードの高さも当然高い。またこれらをコントロールする能力にもたけていて、かつ基礎スピードが問われても崩れないとかなり高い総合力を持っている。ハイペースにも対応、スローペースでも折り合える。これなら2400mで多少ペースが落ち込むポイントが有れば距離は問題ないだろう。ポテンシャル勝負に特化してしまうと不安も無きにしも非ずだが、それでもポジショニングの良さである程度は対応できるだろう。出来ればある程度スローペースになって序盤の気性のコントロールでエピファネイアより優位に立ち、要所の加速力でロゴタイプより優位に立ち、そしてポジショニングでキズナより優位に立ち、そして粘るアポロソニックをしっかり捕えて粘り込んでもらいたい。今の時期なら完成度で。
〇キズナは本当は買う予定ではなかったのだが、これまでの追い切りを見てきても直前でここまで極端に目に見えて良化してきたのは初めてなので、素直に買おうと思う。馬券的には全く美味しくないが、この馬の場合はとにかく化け物じみたポテンシャルが武器であることは既に判明済み。毎日杯で平均ペースから12.0 - 11.8 - 11.5 - 11.8 - 12.5のラップで直線一気、L1ズドンと分かりやすいポテンシャルタイプのバテ差だった。ただ緩まずに高い基礎スピードも要求されたうえでのポテンシャル発揮であり、かなり高いパフォーマンスだったことは間違いない。そして京都新聞杯でも絶望的な位置から楽々差し切った。ただ、絶望的な位置から差し切るのは難しいダービーという舞台なので、基本的にはやはり差し損ねのリスクが高い。それでも前走は不利があって下げた形でもあるし、ペースが一貫的で押し上げるタイミングもなかった。そして追い切りの鋭い脚捌きからも加速ラップからも完成期に入ったと見たい。スローで直線ヨーイドンならギアチェンジ組が手ごわい今回は苦しいが、ペースが流れて脚を出しきれる展開になれば。
▲アポロソニックはやはり青葉賞の走りで注意しておきたい。馬場自体はある程度内有利だったが極端と言ったほどではないし、ラップ推移は12.3 - 11.9 - 11.4 - 11.6 - 11.7と4Fから11秒台、そこからL3最速戦でL1が11.7とそこまで落とさずに粘り込んでの内容。そこまでリードもなく脚を出しきれた差し馬が有利な展開だったがそれでも最後まで粘っていた。リードを作って直線を向ければかなり面白い。また、この馬の場合まだ厳しい競馬を体験しておらず、いい意味でも悪い意味でも適性がまだわからない部分が多い。特に山吹賞ではスローから12.4 - 12.2 - 11.6 - 11.4 - 11.6とギアチェンジとトップスピードで出し抜いての逃げ切りだったが、青葉賞では一転して早仕掛けでポテンシャルを引き出してきた。平均的なペースを刻んで良さが出る可能性もダンジグ系なら有り得るだろう。ここ2走が嵌ったと取られているのは間違いないので、今度も楽に逃げられるだろう。皐月賞組が恐らく3列目以降好位集団を占める、そして後方にはキズナが座る。2列目に入りそうなのはそこまで強敵ではない。となるとやはり逃げ馬に対するマークはしにくいし、ある程度離しての逃げも打てる条件と言える。
△タマモベストプレイは血統が目くらましになりそうで実際53倍台。スプリングSで正攻法で破っているマイネルホウオウや皐月賞で普通に先着しているメイケイペガスター辺りよりも人気がない。展望でも書いたのである程度省略するが、皐月賞で一貫ペースでパフォーマンスを上げてきた。シンザン記念では追走に苦労して直線伸びなかった。ここからも距離延長で良さが出ている。勿論この馬の最大の武器はこれまで勝ってきたレース、きさらぎ賞からも明らかでトップスピードの高さにある。2400mがプラスと出るかどうかというより、序盤ゆったりと運べる条件に替わるのをプラスととりたい。正直追い切りだけ見れば皐月賞時の方がよく見えたのも事実だが、これまでのパフォーマンスがかなり高く、皐月賞組でダービー出走馬の中では3強に次ぐパフォーマンスを見せているのも事実。また、皐月賞では持ち味を活かせるトップスピード戦にはならなかったし、馬単体で見れば距離延長を歓迎する適性ではある。スプリングSは外差し馬場の状態でロゴタイプの内を通ったこともあるし、皐月賞を見てもこれまでのパフォーマンスを見ても高速馬場向きなのは間違いない。距離さえこなせば有力候補の1頭のはず。ここまで人気がないなら血統を無視して狙いたい。
ロゴタイプは最終的に買い材料に乏しかった。高いパフォーマンスの皐月、朝日杯は一貫ペースで基礎スピードの高さを活かせる競馬だった。スプリングSでは11.7 - 11.6 - 12.1 - 12.3 - 11.4 - 11.9の流れで離れた2列目からロンスパ戦、前が緩めた3角では外に楽に持ち出しその勢いで並びかけての内容。トップスピードを判断するにはベゴニア賞だけになるが、マンボネフュー比較ではそこまで図抜けたパフォーマンスというほどでもない。ありきたりな判断になるが、一貫ペースの皐月賞から少し緩んで加速する競馬になりやすいダービーという舞台ではやはり慎重になる。高いパフォーマンスが基礎スピードを活かす競馬である以上、タマモベストプレイとは真逆の適性でもあり、しかも鞍上はクリスチャンに替わる。府中の乗り方をしっているミルコから弟に替わるのは不安材料だし、皐月はコディーノを目標にできたが今回は目標になる立場だろう。距離不安は個人的にあまり感じないが、皐月賞も朝日杯も良くも悪くもコディーノとは紙一重の差しかない。トップスピードやギアチェンジで高いパフォーマンスを見せてきたコディーノやエピファネイアに対して東京でどこまでやれるかは未知数。その上にキズナがいて、穴馬にもそれなりに魅力的な馬がいる。消去法でどうしても4点では滑り落ちた。
エピファネイアは気性面で。前走皐月賞であれだけ厳しいペースになって掛かるところを見せてしまったのは不安材料になる。これまでも基礎スピードの高さをコントロールすることで要所のギアチェンジやトップスピードに切り替えていた感じなのだが、前走で序盤からスイッチが入ってしまうと厄介だろう。そんな状況で福永となると不安だ。適性的にはギアチェンジ、トップスピードの能力が高い。基礎スピードやポテンシャルは前走で証明したので、総合力は高いがこれをコントロールできないと難しい。そのリスクが有って圏外に落ちる可能性が高いし、同タイプのコディーノが内枠でリスクが小さい以上、こちらは狙い辛くなる。適性的には面白いんだけど、鞍上と前走の反動が気性面に出ないかという点で嫌う。
メイケイペガスターは上手く折り合えれば能力は高いんだが、思ったよりも穴人気しているので嫌う。追い切りも良かったのは確かだけど、2週続けてハードに追われていて、気性面で不安がある馬の追いきりとしてはかなり負荷をかけたなあというのが正直な印象。内枠だし上手く流れに乗りつつ折り合えればチャンスは有ると思うし、下手すれば1着も可能性は否定できないと思うんだが、ワイドという券種上どうしても狙い辛い。
【展望】
3歳馬たちが目指す競馬界最高峰のレース、東京優駿・日本ダービーの時期が遂に来た。 この1週間をダービーウィークというほどに競馬界にとっては大きなレースだ。全てのホースマンが目指すダービーの栄光を今年はどの馬が掴むのか。例年に比べて今年は力関係がハッキリしている。朝日杯1,2着馬がそのまま皐月賞で1,3着。間に入ったのがラジオNIKKEI杯勝ち馬。2歳時から注目されていた皐月賞の1,2,3馬がそのままダービーでも主力を担う。これに待ったをかけるのが前哨戦組。とりわけ京都2200mの舞台の京都新聞杯で強烈な勝ち方を見せ重賞連勝の素質馬が、皐月回避をしてまでダービーに賭けてきた。それに青葉賞組、プリンシパルS勝ち馬はもちろんのこと、今年はNHKマイルCの覇者まで参戦。皐月賞4着馬が故障で離脱したがそれ以外は朝日杯の上位、皐月賞の上位、NHKマイルの上位、ダービートライアル勝ち馬が揃って参戦している。東京優駿という舞台だが、まさに3歳のグランプリレースとなった。前編は関東馬、中編は関西馬、そして後編は東西の秘密兵器、穴馬を分析していこう。競馬というのは実に単純なスポーツだ。この中で、一番最初にゴール板を通過するのは果たしてどの馬か?
このレースの中心となるのは、当然ナリタブライアン以来の朝日杯、皐月賞とGI連勝を果たしたロゴタイプだ。血統は父ローエングリン母父サンデーサイレンス。ローエングリンの父であるシングスピールがジャパンカップを制した舞台となる東京2400mでどういう競馬を進めていくかが焦点となるのは間違いないだろう。この馬を中心にレースは進んでいく。今回は皐月賞、朝日杯とGI制覇のコンビである兄ミルコ・デムーロから、スプリングSでともに制した弟クリスチャン・デムーロにバトンタッチ。これまたナリタブライアン以来となる、朝日杯、皐月賞、ダービー制覇となるか。まずは中山のGI2つを分析していこう。まずこの馬の力を初めて強烈に見せつけた中山1600mの舞台、朝日杯FS。中山マイルらしいハイペースで基礎スピードとポテンシャルが問われる競馬になった。ここで外枠から積極的なポジショニング、下げて2列目の競馬で進めていく。道中外目で先頭列を見ながら3角へ。3角で楽な手ごたえで外目追走、4角でじわっと動いて先頭列に躍り出て直線を向くと、序盤で鋭く抜け出す。しかし外からコディーノの強襲を受け叩き合い。最後まで接戦だったが何とか捻じ伏せて3着ゴットフリートや4着フラムドグロワールは寄せ付けずの勝利だった。中山マイルの厳しいペースを楽に追走するだけの基礎スピードの高さ、そしてこのラップ推移でしっかりと粘り込めるポテンシャルの高さはハッキリと見せた。皐月賞も序盤から早いペースで、結果的にコースレコードを出すほどの一貫ペース。12.1 - 12.0 - 11.9 - 12.0 - 12.0の流れ。五分のスタートから中団やや前目につけると、中団の内ぴったりでロスなく進めていく。3角で外に出して前を向くと4角でポジションを押し上げて先頭列で直線。そこからは一気に出し抜いてエピファネイアより前に出る。L1ではそこから突き放すことはできなかったが強敵相手に距離延長でも強い競馬を見せたと言っていいだろう。この2走は共に一貫ペースで高い基礎スピードとポテンシャルで勝ち切った。
一方で緩いペースでも対応できているのがこの馬の持ち味だ。皐月賞の前哨戦のスプリングSでは前半はスローペース、そこから11.7 - 11.6 - 12.1 - 12.3 - 11.4 - 11.9とある程度ロンスパ戦にはなっているもののL2最速11.4という流れ。好スタートから抑えて2列目に下げる競馬。前3頭が離す競馬になったが3角で少し緩んでいてここで外から楽に押し上げて先頭列に並びかけると、前を向いた勢いで一気に4角先頭。そのまましっかり伸びて強敵タマモベストプレイや後のNHKマイルC覇者を完封した内容だった。ギアチェンジに関しては12.3の所で外から押し上げているということもあるので何とも言えないが、最速地点の11.4でしっかりとタマモベストプレイを離していて、トップスピード面で強敵ともいえるこの馬をしっかり上回る脚を使えているのでトップスピード勝負でも高いパフォーマンスを見せたと言っていいだろう。また序盤の緩いペースに多少序盤に折り合いで不安は見せたがすぐに折り合った。ここからも距離延長にもある程度対応できそうだ。そして東京ではベゴニア賞のパフォーマンスだ。マンボネフューを完封して3着以下を千切っている。前後半が速いレースで若干中弛みがあり12.2 - 11.5 - 11.3 - 11.5の流れ。ギアチェンジ能力も問われて高い質のトップスピードが問われた。楽に2列目の内ポケットにつけ抑える。3~4角でも最内でじっとして、前にスペースを置いて2列目最内で直線を向く。序盤ですっと最内に進路を取って並びかけると、L2で出し抜くと追ってくるマンボネフューを最後まで寄せ付けずの完勝だった。確かに高いパフォーマンスを見せたがケチをつけるとすればこの時の東京の芝はかなり内が有利の状態でもあったため、他のレースに比べると相手関係を考えてもそこまで強調できるものではないとしておこう。ただし、緩いペースからしっかりと反応良く出し抜いている点からもギアチェンジ能力、トップスピード自体もある程度高いことは間違いない。
現時点でハッキリしているのは、総合力が高く不安材料が極めて少ない馬だということだ。前半でナリタブライアンになぞらえているのだが、ブライアンと同じく2歳時は敗戦が多かった。ここまで化けた理由はブライアンと違い解せないものの、少なくとも2歳秋からは北海道のころとは全く異なる馬になっている。それだけは間違いないだろう。総合力が高い中で、やはり際立っているのは基礎スピードの高さだろう。朝日杯のハイペースで楽に先行し、抑えてポジションを下げるという器用さ。皐月賞ではコースレコードを叩き出す競馬で内を立ち回ってコーナーで外に出すと一気に押し上げられる。こういった機動力の高さ、コントロールができるのが良さと言っていいだろう。となると東京2400mで課題となるのはやはりトップスピードや高いポテンシャルを問われたケース。中山2000m皐月賞ではハイペースで道中ロスなく進められたこともあるし、コーナーでの立ち回りの良さも活きてきた。しかし東京2400mで皐月賞程のハイペースが有りうるかどうか。ペースが落ち着けばこの馬の最大の良さである基礎スピードを抑えてコントロールをする必要がある。ベゴニア賞を見る限りスローに落ち着いても要所でペースアップに対応するだけのギアチェンジ能力は持っているので、スローになるから必ずしも不安ということは無い。それでもこれまでで最大のパフォーマンスは皐月賞であることは間違いないので、基本的にはきびしい競馬になって基礎スピードの高さを殺さずに進める舞台の方が合っているだろう。ベゴニア賞自体は評価できるにせよ、このクラスになってくるとトップスピードやギアチェンジ能力、ポテンシャルに関して特化した実力馬も出てくるので、焦点はどうやって勝ち切るか。2400mという距離自体は不安は小さいだろうが、この馬の持ち味を考えた時に必ずしも東京2400mでベストパフォーマンスができるかどうかは分からないのが正直な所。今年は特化した実力馬が多いが、どれも弱点が少なく総合力がある程度高い馬たちばかり。それ故に、ちょっとした流れひとつで逆転が有っても驚けない。今回は鞍上もミルコからクリスチャンに替わる。府中の大舞台で活躍しているミルコから乗り替わるのはいかにクリスチャンと言えどもプラス材料とは言い難い。それでも総合力の高さは世代屈指。ロスなく立ち回れる機動力の高さを活かせれば、当然最上位の1頭であることは疑う余地もない。
関東勢No.2は2歳時はクラシック候補でも最右翼だったコディーノ。これまでの横山典弘とのコンビから急転直下のクレイグ・ウィリアムズへの乗り替わりというのにも驚かされた。ダービー制覇に懸ける藤沢厩舎の執念にも感じるが、これが吉と出るか凶と出るか。東スポ杯以降は2,3,3と善戦マンのイメージがついてしまった同馬だが、2歳時の高いパフォーマンスから振り返って行きたい。新馬戦では札幌の1800mでドスローから12.7 - 11.9 - 11.3 - 11.1の流れ。出負けしてダッシュが憑かず後方からの競馬になり、内に入り込む競馬。途中で外に出して3角で前を向くと加速ラップでワンテンポ早く押し上げていき、トップスピードに乗って4角では並びかける。直線ではそこからきっちり突き抜けての完勝だった。最後まで一番いい脚を使っての勝利だが、スローでトップスピード勝負に特化したし、後方から押し上げると言ってもレースラップ的には先にトップスピードに乗った方が良い展開。差ほど評価はしていなかった。が、札幌2歳Sで一変する。ややスローではあったが12.5 - 12.6 - 12.0 - 11.6 - 11.3とL1最速戦。課題のゲートを克服すると、ロゴタイプの直後、内ポケットに入り込む。そのままスローペースを折り合って進め、前にスペースを置いて加速しやすい状態で3角。3角でじわっと仕掛けて外に出すスペースを見つけるとしっかり外に出す。4角で外から捲ってきたラウンドワールドに合わせて直線を向くと、ロゴタイプをあっさり交わして加速ラップでぶっちぎっての大楽勝。恐らくこの馬最大のパフォーマンスと言っていいだろう。スローペースから加速していく流れを内ポケットでじっと溜め、前が加速して生まれたスペースを使って外に持ち出す。緩い地点で押し上げてきていたラウンドワールドに併せると、そこから瞬時に加速してぶっちぎった。ラップからも内容的には押し上げてきていたラウンドワールドの方が有利な展開だったのだがトップスピードの質、ギアチェンジ能力の高さをはっきりと見せた内容だった。実際この競馬でロゴタイプを問題としていない。トップスピード勝負、特にペースアップしていく段階でギアチェンジが問われる競馬になれば同世代に敵はいない、とこの時にハッキリ思い、この時点でダービー最右翼だと確信したほどだ。東スポ杯2歳Sでは大逃げ馬がいて変なラップになったが12.0 - 13.1 - 12.2 - 10.9 - 11.4の流れできっちり内から突き抜けての完勝。相手関係からも決して楽な相手ではなかったはずだが内有利馬場でこの馬の展開なら当然の勝利ともいえる。
ではなぜ甘くなったのかがポイントになってくるだろう。朝日杯FSではハイペースで11.5 - 11.9 - 12.2 - 11.8 - 12.1の流れ、好位の内でしっかりとロスなく立ち回って4角で外にしっかり持ち出し直線ですっと反応してロゴタイプを捕えそうだったのだが、そこからL1で甘くなってジリジリ。結局差し切れなかった。要所で前を向いて序盤では捕えるかという勢いだったのだが、やはり持ち味のトップスピードやギアチェンジと言った適性がハイペースで全く活かせなかった。それでもこの高い基礎スピードが問われたマイルでしっかりと対応できているところからも総合力の高さは疑う余地もない。皐月賞でもこれまた厳しい一貫ペース。後半も12.1 - 12.0 - 11.9 - 12.0 - 12.0と淀みない展開で好位馬群の中で進めた。3角で3列目から狭いところを突いて2列目に上がったものの、4角で前が壁になりエピファネイアやロゴタイプに外から押し上げられる展開。ポジション下げて進路確保も苦労して一列下げてから再度追い出されてジリジリとは伸びを見せるものの、流れに沿った競馬が出来なかった。これは正直痛かっただろう。ラップ的にももうなだれ込むしかない競馬で、ポジションを下げて差し返せるほど楽なラップではなかった。ただばてて交わされたわけではなく、前を向きたいタイミングで前を向けず下がってしまったのが致命的だった。これで3着ならかなり高いパフォーマンスと言える。それにこの2走はこの馬の持ち味であるギアチェンジ、トップスピードを削がれての内容でもあり、高い基礎スピードが要求された競馬。これでも3着に食い込めるように総合力は疑いようがない。唯一解せない敗戦は弥生賞なのだが、スローから12.5 - 11.7 - 11.6 - 11.4 - 12.2とロンスパ戦でL1大きく落ち込むポテンシャル勝負。ここで2列目ポケットから進めるいつもの走り、要所でエピファネイアが押し上げていく競馬で前にスペースがない状態で直線を向いたが、それにしても4角で置かれた。そこから進路を取るとジリジリとは伸びてはきたのだが、この馬としてはやはり4角置かれたのは少々不満。ただ、藤沢厩舎で明らかに目標はダービーということを考えても、叩きの叩きというイメージでいる方がいいか。負けはしたが、エピファネイア、キズナを抑えていることも事実。悪い内容ではない。
さて、ここまで見ても総合力ではロゴタイプと伍するのだが、武器はトップスピードであることは間違いない。ギアチェンジ能力に関してはこの馬だけでなくエピファネイアも高いので何とも言えないが、トップスピードの質に関して言えばこの馬が世代最強だろう。札幌2歳S、東スポ杯の内容からもスムーズならば明らかだ。皐月賞、朝日杯で取りこぼしているのは基礎スピードが問われてこの持ち味を相殺されたからとみるのが妥当だろう。皐月賞のハイペースからダービーでどういう展開になるかにもよるが、少なくとも皐月賞程極端なポテンシャル勝負にはならないと見れば、トップスピードを要求される可能性は皐月賞時よりは高くなるだろう。また仮に一貫ペースで基礎スピード、ポテンシャル勝負になったとしても皐月賞を見る限り決して後手に回る馬ではない。しかし勝つ為にはこの馬のトップスピードを引き出す競馬が好ましい。その点で、やはりロゴタイプを見ながらトップスピードで差し切るという競馬が好ましいのだがウィリアムズに替わることで積極的な競馬をする可能性があるというのは個人的にはあまり歓迎しない。どう見ても余力を残した状態でトップスピードを引き出す方がロゴタイプとの直接対決や東スポ杯を見ても明らかなので、積極的に勝ちに行って持ち味を潰すということだけは避けたいだろう。ただし、多少流れる程度のペースなら今の東京2400ではある程度前にいないと話にならないので勝ち負けは別として、信頼度に関してはウィリアムズに替わったからと言って下がるものでもないだろう。これまでのパフォーマンスからも、総合力はロゴタイプに引けを取らず、トップスピード勝負ならば逆転可能だ。
関東馬3番手にはNHKマイルCを制し、変則2冠でマイネル軍団夢のダービー制覇を狙うマイネルホウオウ。ディープスカイ以来となるNHKマイル、ダービーの変則2冠を狙う。この馬の評価はかなり難しいところも多かったのだが、NHKマイルCで評価を180度変える必要が出てきたというのが個人的な感想だ。これまでのこの馬の持ち味はギアチェンジだと思っていた。理由はコスモス賞で、中弛みがあって13.0 - 12.2 - 11.6 - 11.2 - 11.9というL2最速戦。ここで、3列目から外目動いて3角で仕掛けると、楽な手ごたえで一気に先頭に並びかける。直線序盤の最速地点で一気に出し抜いたが、L1でラウンドワールドに差される競馬。要所ですっと動いて出し抜いて最速地点で先頭に立つもポテンシャルで差されたという競馬だと判断した。ギアチェンジ型だろうと。実際少しペースが上がった東スポ杯や札幌2歳Sでは全然良さが出なかったし、ポテンシャルを問われる競馬では苦しいという見立てをしていた。中山マイルでも割と平均ペースとなったひいらぎ賞では12.0 - 12.1 - 11.8 - 11.6 - 12.3の流れで2列目で進めて、3角で押し上げて先頭列で直線を向くと序盤でしぶとく伸びてL1でもジリジリしぶとく捻じ伏せたがクリノチョモランマには急追されていた。ジュニアCでは逆に少しスローの競馬になって12.2 - 12.3 - 11.7 - 11.2 - 11.6と加速する競馬。前のマイネルブルズアイを見ながら2番手で進めて、4角でじわっと並びかけて直線序盤に2列目を引き離す強い競馬。ギアチェンジ、トップスピードが問われた競馬で完勝。これらを総合的に判断して、厳しい競馬は合わないだろうと思っていたのだが、NHKマイルCでこれまでとは全く違うレベルのパフォーマンスを見せてきた。
NHKマイルCでは一貫ペースで11.7 - 11.3 - 11.6 - 12.0の流れ。L3最速戦で明らかにポテンシャルが問われる競馬になっているが、後方から鋭く伸びる。L2では一気に先頭列を飲み込みにかかり、L1でも最後までばてずに内の2頭を捻じ伏せての勝利。これまで重賞戦線でのパフォーマンスを見ても、ちょっと足りない馬だったことは確かなのだが、このNHKマイルの内容はこれまでとは確実に一線を画す内容だった。よくよく考えれば伏線は有った。スプリングSでスローから11.7 - 11.6 - 12.1 - 12.3 - 11.4 - 11.9とロンスパ戦ながらL2で最速11.4とトップスピードとポテンシャルが問われる競馬。ゲートは悪くなかったが中山1800の外枠で団子とポジションはどうしても下がってしまい、中団での競馬。ここから3~4角終始大外を回してマンボネフューの後方で仕掛けると、直線で外からしぶとく伸びてくる。要所で外をまわした分、序盤に置かれたがL1で突っ込んできてタマモベストプレイは詰めていた。レースレベル自体も高かったと思うが、地味にポテンシャル勝負となったところできっちりと結果を出してきた。しかも、中山1800特有の序盤スローからのロンスパ戦である。ここからもスロー、ペースアップでロンスパ戦でL1食い込むというような競馬は比較的長距離的な競馬ともいえ、ここで最後に食い込んできていることからも、意外と2400mは苦にしないかもしれない。NHKマイルもこれまでは中途半端にポジションを取りに行って序盤脚を使って終い甘くなっていた競馬から、後方で脚を溜めることで爆発させた形。この馬は序盤にできるだけ脚を使わずに後半勝負に徹した方がいいのかもしれない。
それらを総合的に判断し、東京2400mの舞台をこなせるかもしれないという前提でも、やはりスプリングSの1,2着、ロゴタイプはもちろんだが現時点ではタマモベストプレイにも劣る部分が多い。NHKマイルもこれまでからは飛躍的にパフォーマンスを上げてきているが、相手が相手でもあり、走破時計も取り立てて早いわけでもない。展開を考えれば、ペースの割に前が総崩れしたことも勝因の一つであることは間違いない。それに今年のマイル路線は朝日杯1,2着馬がクラシック路線に進んだことも大きいので、GI馬とは言ってもやはり優位な立場ではないだろう。ただし、NHKマイルの形でこれまでにないものを引き出してきた以上、やはり無視できる存在でもない。高松宮記念勝ち馬スズカフェニックスを父に持つだけに血統的距離不安は表に出てくるのだろうが、母父フレンチデピュティでもある。緩急には対応できるタイプでスプリングSの内容からも、馬単体で見れば距離は問題ないだろう。それよりもNHKマイル同様にしっかりと脚を溜めて弾けさせることができるかどうかだろう。
前編最後は青葉賞馬ヒラボクディープ。前走接戦でで権利をもぎ取ったが、正直なところやはり皐月賞上位のメンバーと比べると見劣る印象は否めない。ただ、12.3 - 11.9 - 11.4 - 11.6 - 11.7とL3最速戦ポテンシャル勝負で、2列目単独で前列を追いかけて直線序盤からしっかり伸びてきたのは見た目以上の評価をすべきところだろう。L1は少し甘くなったのは間違いないが、4角で中目に持ち出して最速地点で動く勝ちに行く競馬でもあり、もう少しアポロソニックを楽に捕えてほしかったのは事実もL1が11.7ということを考えれば相手を褒めるべきか。それでも走破時計はやはり平凡な枠は出ず。これまで見せてこなかったポテンシャル勝負での勝利は評価できるものの、最上位に打ち勝つにはポテンシャル勝負では厳しいというのが正直なところだ。ただし、これまでこの馬は要所で良さを見せてきた。水仙賞では12.9 - 12.5 - 11.4 - 11.5の流れで2F勝負、ギアチェンジ戦。これで2列目内ポケットから直線進路を確保しきれず前が壁。それでもL1で進路確保するとしっかりと伸びて勝利。こういった器用さも持っている馬。ポテンシャル勝負でもハイレベル戦で勝ち、ギアチェンジ戦で不利な展開になっても取りこぼさない器用さはこの馬の良さでもある。こういうタイプだけに、展開次第で対応できるだろうし、相手が強敵でも上手く立ち回って出し抜くと言った可能性は秘めている。
同コースのゆりかもめ賞では12.8 - 12.4 - 11.3 - 11.5 - 11.7の流れで取りこぼしているのだが、直線で進路確保できずに最後方列まで下げてからの追い込みであり、これはあまり悲観する材料ではない。L1では凄い脚で伸びてきていることからも、まともな展開なら内から突き抜けていたと言える。葉牡丹賞でも12.3 - 12.1 - 11.4 - 12.2の流れで内目で包まれる競馬。ここでも最速地点で前を向けずに仕掛けが遅れた。最後まで伸びてきてはいたが、ここではあまり目立った脚ではなかったことからも、2400mという距離はこの馬にとっては良いだろう。青葉賞のパフォーマンス自体は皐月賞組の内容と比べると平凡と言わざるを得ないが、スローのポテンシャル勝負と、ハイペースのポテンシャル勝負でのものであり、比較することが正しいかどうかも分からない。少なくともこの馬は東京2400mでシッカリ勝ち切るだけの武器は持っていた。ギアチェンジ能力もある程度持っているし、トップスピードも速い。2400mで上手く立ち回れれば皐月賞上位組の適性次第では逆転可能な範囲と言えそうだが。皐月賞上位組が軒並み前で競馬するということもあり、これらを目標に進められれば面白いだろう。
中編は関西の実力馬たちを中心に進めていく。 特に関西からは皐月賞2着馬もだが、やはり毎日杯、京都新聞杯で強い勝ち方をしてきた実力馬がクラシック初参戦ということもあり、これがダービーの中心となっている印象だ。他にもきさらぎ賞勝ち馬、共同通信杯勝ち馬など実力馬も揃う。関西馬GI4連敗を止めてからは2連勝中。この勢いで捲土重来を狙う。
関西馬筆頭は何と言っても後方待機で本格派へと変貌を遂げたキズナ。名手武豊とのコンビでダービーへとしっかりと駒を進めてきた。しかし、この馬は決して順風満帆だったとは言えない。ラジオNIKKEI杯2歳S、そして弥生賞と賞金を積まなくてはいけないところで取りこぼしてしまったからだ。まずはラジオNIKKEI杯2歳Sからだ。話題のエピファネイアとの2強対決というわかりやすい状況、頭数も少なく悪くとも2着は外したくなかったのが本音だろうが、3着と本賞金を詰めなかった。内容としては分かりやすい程の超スロー、タフな馬場で12.9 - 12.0 - 11.5 - 11.0 - 12.0と徐々に加速していく流れになった。逃げるバッドボーイを見ながら2番手で進めていたのだが、3角でエピファネイアが外からじわっと詰めてくると、4角でキズナも仕掛けるのだが反応で見劣り、直線序盤で出し抜かれる。最速地点では抵抗できていたがL1で甘くなり、一旦出ていたバッドボーイにも差し返された。番手で進めたが、質の良いギアチェンジ能力が問われて反応に見劣って3頭併せの中で窮屈になったのも影響したか。エピファネイアが楽に外から押し上げたのとは対照的な競馬になってしまった。そして弥生賞で権利取りを狙ったものの、これも詰め切れなかった。比較的スローから12.5 - 11.7 - 11.6 - 11.4 - 12.2とロンスパ戦になっていてポテンシャルが問われる競馬。この馬としては良い展開だとも思ったのだが、中団で3~4角じわっと押し上げながらの競馬。直線では進路を内に切って馬群の中に突っ込んだがカミノタサハラの外に持ち出すのに少し時間が掛かった。そこからはL1一番いい脚で伸びてきていたと言えるが、それでもこの展開だけにもう少し伸びてきてほしかったところ。内で窮屈な所を突いて反応面で少し鈍かったか。
ここまでは人気先行型で器用さに欠けるポテンシャルタイプという認識だった。とはいえラジニケ杯でも敗れはしたがトップスピード自体でエピファネイアに大きく見劣っていたとも思わなかったが、ギアチェンジを含めるとやはり苦しい戦いになるだろうという評価だった。しかし毎日杯で考えられないほどのパフォーマンスを見せる。平均ペースでかなり厳しい流れ、12.0 - 11.8 - 11.5 - 11.8 - 12.5とL3最速で明らかに脚を出しきる純粋なるポテンシャル勝負。ここで大外からただ一頭ばてずにぐんぐんと伸びてぶっこ抜いたのは競馬ファンの記憶に新しいところだろう。しかもガイヤースヴェルトやバッドボーイと言ったところを相手に、である。バッドボーイには6馬身以上の差を広げて最後まで伸び続けた。この無尽蔵のポテンシャルこそがこの馬最大の武器だったと言える。そして京都新聞杯で完全にそれを証明した。平均ペースで12.6 - 12.3 - 12.1 - 11.8 - 12.0の流れ。3角手前で手を動かして外に出し進路を確保した。そして坂の下りでじわっと仕掛けて徐々に押し上げて前を向いて直線。序盤で進路を閉めに来た馬がいたが弾いて進路確保しきれば、後はものが違うと言わんばかりに大外から涼しい顔で差し切った。大きく落ち込むラップではない中で、大外からロスを作りながらも一気に突き抜けた。ポテンシャルの高さが成せる業だろう。この数走を見てもこの馬はとにかく序盤ゆったり運ばせて、後半ゆったりと加速しながらトップスピードに乗せることが重要だったように感じる。ポテンシャルの高さもそうやって引き出せていて、ラジオNIKKEI杯では要所で急がせすぎたのが響いたと思うし弥生賞では直線で勢いに乗せたいところで内を突いてスムーズにトップスピードに乗せられず、L1で進路を作るまで苦しい展開だったように感じる。距離が伸びて良さも出たが、それ以上に多少絶望的な位置にポジションを取っても脚を出し切れればポテンシャルの高さは世代最強だと言っていいだろう。
ただし、これも相手がそれなりレベルだからこそできた芸当。今回は相手が手ごわい。特に皐月3強はいずれも総合力が高い。これと言って明確な弱点がない馬たちばかりだ。強いて挙げれば3頭とも基礎スピードが問われた皐月賞で高いパフォーマンスを見せているという点にあり、先週の桜花賞上位総崩れのオークスでもそうだったが例年に比べて皐月賞がより中距離色の強い競馬になったということもあり、ペースが落ち着いて後半のロングスパート戦になるようならばこちらに分があると言える。一貫ペースになった場合は昨年のダービーでもそうだが基本的にはポジショニングは重要な要素の一つでもあり、出せばある程度は行ける馬とはいえ、これまでのような大味な競馬だと、脚を出しきったとしても位置取りが絶望的になる可能性は高い。京都新聞杯はそれでも相手が弱かったので差し切れたが、皐月賞上位組はきびしいペースからばてずにもう一伸びできる馬たちばかりだ。もちろん3頭ともが東京2400で高いパフォーマンスを維持できるとは限らない。それでもこの馬がダービーという舞台で勝ちきる為には、京都新聞杯よりも早い仕掛けが必要になってくるだろう。トップスピードに乗せれば質もそれなりにある馬だが、瞬間最大ならコディーノやエピファネイアの方が手ごわいとみている。それならばこの馬最大の持ち味であるトップスピードの持続力、ポテンシャルを出しきる競馬に徹するべきだろう。3~4角で多少ロスが有ってもしっかり前を向いて進めてもらいたい。捲土重来は何もキズナだけの言葉ではない。完全復活にはダービー勝利が必要だ、あの憎らしい程勝ちまくった武豊よ、甦れ。そしてその勝利が、いつか佐藤哲三の捲土重来へと繋がるはずだ。
関西馬の2番手では役不足だろう、もう一頭の筆頭と言っていい、皐月賞2着馬のエピファネイアだ。名はキズナに譲り、実はこちらがとる。そういう形となればこの馬にとってベストだろう。そしてダービージョッキーの称号は得られなかった天才福永洋一の息子、鞍上の福永祐一がダービージョッキーとなれるかどうか、当然大きな期待が掛かる人馬だ。この馬は名牝、日米オークス制覇を成し遂げているシーザリオの仔という点でも最初から話題になっていた馬だが、とにかく第一印象はなんて反応の良い馬なんだという所だった。新馬戦では12.6 - 11.6 - 11.3 - 11.1の流れ。L1最速戦で加速していくレースだったわけだが、中団内で前を向けず直線序盤で外に持ち出す。L1でそこから反応してグンと伸びてくる。加速ラップを刻んで楽に千切り捨てた。ちょうど先週オークスを制したメイショウマンボのこぶし賞がこんな感じだったが、トップスピードに切り替わるまでが早く、しかもこれを加速ラップでやってきたという点が凄い。前を向いて押し上げながらならそこまででもないのだが、直線序盤でも外に向かうロスがあった。続く京都2歳Sはもっとわかりやすい。スローから12.0 - 11.6 - 11.2 - 11.2の流れ、2列目内ポケットから直線最内をすっとつく素晴らしい反応で出し抜いての完勝。上位を見てもらえばわかるが決して低レベル戦ではない。しかしトップスピードとギアチェンジが違いすぎた。更にラジオNIKKEI杯2歳S。キズナの欄である程度書いているので割愛させてもらうが、超スローから12.0 - 11.5 - 11.0 - 12.0と加速する流れで3~4角馬なりで押し上げ直線序盤で先頭に立つ競馬。L1でもばてずに伸びてが、やはり最速地点での反応の良さは世代最強だろう。しかし、この3走で明らかにされなかったのは、基礎スピードがどこまで高いのか、そしてポテンシャルがどの程度あるのかだ。
この2つは敗戦をもってある程度高いことが証明された。まず弥生賞ではややスローから12.5 - 11.7 - 11.6 - 11.4 - 12.2の流れ。3角手前で外から押し上げて4角先頭に躍り出る。直線で外から一気に2馬身ほど離してトップスピードの高さを見せるものの、L1で落ち込んで粘り切れずの4着に終わった。ただ、4着とはいえトライアルとしては仕掛けも早くL1大きく落ち込む競馬。しかも最速地点で出し抜くトップスピードを見せた。ポテンシャルがそこまで高いというわけではないが、少なくともこれまで不安と思われていた部分にある程度の目途を立てることができたのは大きいだろう。そして皐月賞では厳しいペースで中団から3~4角中目を押し上げていく競馬。直線序盤で外のロゴタイプと併走でしぶとく抵抗、L1まで大きく離されず半馬身差に踏ん張った。12.1 - 12.0 - 11.9 - 12.0 - 12.0とみても明らかで弥生賞以上に持ち味のトップスピード、ギアチェンジを活かせない競馬になったが、それでも中団からしっかり対応して最後までしぶとく伸びていたように、基礎スピードの高さとポテンシャルはGIでも通用したと言っていいだろう。正直このパフォーマンスには驚かされたが、もともとスピードが勝った馬で、それを何とか折り合ってコントロールすることで引き出したギアチェンジ能力ともいえるので、ペースが上がった方がこの馬としては競馬がしやすかったのかもしれない。
しかしそう考えるとこれまでしっかりと気性面をコントロールできていたのが、皐月賞で厳しいレースを体験したことで折り合い面で悪いところが露呈しないかどうかという不安もある。この馬の良さは世代屈指のギアチェンジ能力とトップスピードの高さ、そして皐月賞、弥生賞で見せた基礎スピード、ポテンシャル面でも不安がないという総合力の高さにある。2400mへの距離延長だけならいいが、前走3歳にしてレースレコードとなる競馬に付き合う形となった反動が気性面に出なければ、という所だろう。だが、それも皐月賞上位全ての馬に言えること。少なくともこれまで一度もコントロールが出来なかったことは無い。スローでもしっかりと折り合って要所で鋭く反応していた。これまでのパフォーマンスを素直に信じるのであれば、距離も2400mまでなら大丈夫だろう。ペースが緩んでも対応できる馬なので、一貫ペースになるよりは多少緩んでくれた方が持ち味は活かせる。ただしコディーノやロゴタイプと言ったところとは力差は良くも悪くも紙一重であり、当然問われるのは鞍上の技量だろう。福永祐一が東京2400mの舞台で輝けるか。オークスでは強いがダービーは勝てない。牡馬クラシックは勝てない。昨年もワールドエースでクラシックを獲れず、ここで逃せば後は無い。馬は強い、後は騎手の捌き一つだろう。オークスでシーザリオが力で勝たせてくれた東京2400mの舞台、今回はその借りを返す時。息子をしっかりとダービー馬へと導くことができるか。
関西馬3番手には血統の呪縛から解き放たれているフジキセキ×ホットプレイ産駒タマモベストプレイ。この血統と言えば、タマモホットプレイ、タマモナイスプレイといったわかりやすい血筋で、もってマイルまでという血統だった。割と差し馬が多い血統だったがそれでも1600までしか走らない馬がほとんどだ。良くも悪くもこれまで安定してそういう馬を大量生産してきた組み合わせだけに、このイメージが拭い切れないのかきさらぎ賞以降の3戦は個人的には実力よりも過小評価されている印象だった。しかし、いずれも人気以上の結果となっている。特に皐月賞はハイペースでハイレベルの持久戦、基礎スピードの勝負となっているのだが、ここで中団からしぶとく伸びてきたのはこれまでのこの馬のパフォーマンスを考えるとかなり頑張っていると言える。12.3 - 12.1 - 12.0 - 11.9 - 12.0 - 12.0とハイペースで後半踏ん張る競馬、ラストまでなかなか落とさずレコード決着だった。この流れで中団から競馬し、3~4角で内目を立ち回り直線で3列目まで押し上げる。直線序盤でカミノタサハラと併せてしぶとく食らいつくが最後は少し甘くなった。ポイントなのはこの馬はこれまでトップスピード勝負で結果を出してきていて、一貫ペースでは甘くなっているという点にあった。シンザン記念はハイペースを2列目の内ポケットで追走とこの上なく絶好の位置を通しておきながら直線で伸びあぐねた。そこから距離延長2000mの舞台の一貫ペースでパフォーマンスを引き上げているというのは結構重要な情報で、恐らく1600より2000mの方がいいのだろう。この血統のイメージで騙されてしまいがちなのだが、皐月賞メンバーとシンザン記念のメンバー、そしてパフォーマンスを考えても、2000の方がいいという結論に至るのは自然だと思われる。そしてもう一つ重要なことは、この馬の最大のパフォーマンスはトップスピード勝負にあったという所。
きさらぎ賞では京都1800mの舞台。外回りだがスローで進んだ結果12.2 - 11.7 - 10.9 - 11.9の流れで良質なトップスピード、そして下り坂が過ぎてからの加速となり、ギアチェンジも問われている。ここで2列目外から前を向いて逃げるマズルファイヤーを積極的に目標にして2列目で直線。序盤で鋭く切れて先頭に並びかける。L1でしっかり捻じ伏せる競馬をしたが、目立ったのは直線入りの伸びの方。底から比べると思ったほどL1で突き離せなかった。ただし、このラップでしっかり加速し最速地点で一番いい脚を見せているようにトップスピードの質は高く、ギアチェンジ能力もある。スプリングSではスローだったが11.7 - 11.6 - 12.1 - 12.3 - 11.4 - 11.9とロンスパ戦になっている。ここでも3列目の内で進め、3角でロゴタイプが動いたのに合わせて内目からするする押し上げて直線を向く。ロゴタイプの脚には見劣ったものの、要所でしっかりと内目馬群を突いて押し上げているように、この馬のトップスピードはなかなかいいものを持っている。また、この時は外の方が伸びる馬場になっていたこともあり、この内容だけで外をまわしたロゴタイプに完敗と決めつけるのは早計だろう。比較的後半勝負に強い馬とみていいだろう。京都1400内回り秋明菊賞ではティーハーフを撃破していて、12.0 - 11.8 - 11.0 - 11.4の流れで大外から押し上げていく形、そして最速地点となる4角出口~直線入りで鋭く伸びている。L1でティーハーフの追い込みも決まったが、それでも押し切っての完勝。1400mでもスローなら持ち味を出せていて、基本的にはトップスピードを引き出す競馬が合っているのは間違いないとみて良い。
そして、これまでの考察からも1600より2000mの方がパフォーマンスを上げてきている。しかもトップスピードが売りの馬ということからも、2400mへの距離延長は血統を無視すればプラスに働く可能性が高いとみている。きさらぎ賞でも超スローで外の番手で折り合っているように、気性面での不安は無いに等しい。それに前半無理をさせない方が結果が良いという点からも、東京2400mである程度の位置からトップスピードを引き出す競馬が出来ればここに入っても皐月賞上位組を崩す可能性秘めているとみる。それにキズナに対してポテンシャルでは見劣るだろうが、トップスピードやギアチェンジ面ではこちらが優位に立てるだろう。NHKマイルC覇者のマイネルホウオウにはスプリングSでしっかり先着している。青葉賞組は皐月賞組の脅威となるほどの高いパフォーマンスを見せていない。皐月賞組に比べて東京2400mに替わることがプラスになる材料は多い。しかも血統が良い目くらましになって、恐らく人気はしないだろう。この侮られ方は穴党にはシメシメと言ったところ。内内を上手く立ち回ってロスなく進め、持ち味のトップスピードを引き出せれば東京2400なら炸裂する可能性は高い。一番いい形はロゴタイプの仕掛けに合わせて進路を取ることだろう。ロゴタイプが距離を意識していつもより少し後ろから競馬をしてくれば面白い。スプリングS、皐月賞を見ても上手く押し上げていく馬の直後に進路を取っている和田らしさを見せているし、ダービーでもこれが活きてくる。積極的にロゴタイプが仕掛けてくれればその足元から鋭く伸びて牙を剥く。血統で決めつける者たちへの手痛い一撃をお見舞いすることができるか。個人的には今年のダービー最大の穴馬になると思っている。
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