安田記念2013予想

カタストロフィ
10期 予想歴16年

◎ダイワマッジョーレ
  9着/6人気

○グランプリボス10着/2人
▲マイネイサベル4着/15人
△カレンブラックヒル14着/4人


【予想】
 予想の前に雨の降り方次第で変わってくる部分もあるので事前予想の段階では非常に難しい。基本的にこの予想を変えるつもりはないですが、あまりに雨が降るようならちょっと考えます。


 展開は恐らくシルポートがハナを狙う。これを外からヴィルシーナがウィリアムズポジションで突きに行く。更に外からエーシントップ、内からはカレンブラックヒルやガルボが2列目を窺い、この辺がポジションを取りに来るのでペースもやはりそれなりに上がってくる。ここ3年ほどのハイペースと行くかは分からないにせよ、楽なペースにはなりにくいだろう。一貫ペースを想定する。


 ◎ダイワマッジョーレは正直京王杯SCまではマイルは短いと思っていたのだが、東京1400mの厳しいペースで中団につけてそこから強烈に脚を伸ばしてきた。11.8 - 11.4 - 11.4 - 12.1の流れで中団、L1しぶとく食い込んでトライアンフマーチやガルボと言った基礎スピードを持つ強敵をきっちり捕えたのは大きく評価したい。それにこれまでマイルでポジショニングに苦労していたところが、1400の平均ペースと厳しい条件で中団から勝ちに行ってL1ばてずに伸びてきたのは厳しいマイル戦に対応出来るだけのパフォーマンスとみていいと思う。基礎スピード面で大きくパフォーマンスを上げてきた。もともと東京新聞杯でもスローから12.1 - 11.8 - 11.2 - 11.0 - 11.3の流れで後方内から鋭く伸びてL1突っ込んだり、ダービー卿では平均ペースで11.2 - 11.8 - 11.7 - 11.8 - 11.8の流れ、ややポジション後ろになったが直線では一番いい脚でL1ぐんぐん伸びての2着。これまで空もトップスピードとポテンシャルは非凡なものを見せてきていて、京王杯で基礎スピードを見せた。もう疑う必要が無くなったので、後はこの相手にどこまでやれるか。L1の食い込みからも厳しいペースになればなるほど真価を発揮するタイプ、外差も比較的利いている今の馬場でもあり、中団ぐらいから積極的な競馬が出来れば。


 〇グランプリボスは不調時にあった不安定さが影をひそめた。これまでタフな馬場では崩れていたのが雨で少し時計が掛かった昨年のマイルCSでも11.9 - 11.3 - 11.3 - 11.5 - 11.9の流れで外目を回しながら直線痛い不利を受けて立て直し、L1でグンと伸びてサダムパテックに襲い掛かる競馬。まともならという内容で、これまで不安定だった京都でも力を出してきた。前走のマイラーズCでも中団で大外を回しながらも11.5 - 12.1 - 11.5 - 11.7の流れで最後まできっちり伸びきった。もともと府中の高速馬場巧者で一貫ペースで高い基礎スピードとタフなポテンシャルが要求されて良さが出ていたように、ベストは東京マイル。昨年の京王杯のように緩まなければまず好勝負だと思っている。


 ▲マイネイサベルはもともと序盤になるべく脚を使わずに最大の持ち味であるトップスピードとポテンシャルを引き出す競馬が一番だと思っていたのだが、前走VMで序盤に脚を使って11.7 - 11.9 - 11.4 - 11.2 - 11.6の流れで2列目内ポケットからヴィルシーナを出し抜くという競馬が出来ていて、かなりパフォーマンスを上げてきた。正直今がピークなんじゃないかというほどに。今回は引っ張るう馬が多いし何せ混合戦でペースが上がる可能性が高い。無理に前に行く必要もなくこの馬のポジションで内で溜めながら直線でトップスピードを活かしL1でグンと伸びるいつものマイネイサベルの競馬が出来そう。L1の差し込みは牡馬相手でもやれると思っていたし、今回は内目の枠を引いたので条件的にもかなり狙いやすい。嵌れば一発十分ある馬。


 △カレンブラックヒルは悩んだけど、高速馬場で極端な基礎スピードが問われたときに不安がある。一雨降ってNHKマイルの時のように渋ってくれればこの馬の良さが出そうなんだけど。それでもマイラーズCは11.7 - 11.5 - 12.1 - 11.5 - 11.7と緩んだ時に前が壁で苦しかったし、そこからしっかり抜け出して最速地点で良い脚を使えていた。差されはしたけどパフォーマンスとしてはかなり高いと思う。総合力はかなり持っていると思うんだけど、高い基礎スピードが要求されるとマイルでは若干長いのかもしれないと感じるので押さえ程度にしておく。毎日王冠の強烈なパフォーマンスからもこの馬の基礎スピードが一番生きてくるのは1800mのように感じるので。ただばてそうでばてないポテンシャルもかなりもっている馬なので、最短距離を通って基礎スピードが少し足りない部分を補えれば。


 ダークシャドウは別路線組の中では一番買いたい馬ではあるんだけど、やっぱりどうしても人気してしまう。大阪杯の内容は悲観するほどではないし、マイル戦なら狙ってもいいとは思うんだけど。あの超絶レコードの天皇賞秋の内容からも、かなり高い基礎スピードとポテンシャルを持っている。ただ今回はマイル路線組に同じタイプで強敵が多いし、しかもそれらと人気差がない所かむしろ人気している感じなのは狙い辛い。それならダークシャドウがマイルいけそうと言っても、やはり実際にマイルで適性を見せてきた同じタイプの馬を狙いたいと思った。人気以外に消せる材料は無いんだけどね。ワイドでは買い辛い。来るなら頭で来てもおかしくない。


 ショウナンマイティやナカヤマナイトは距離適性で切った。ショウナンは基本的にトップスピードの維持能力に長けている代わりに基礎スピードがかなり低くポジショニングで苦労すると思うので内枠は歓迎も嵌らないと基本的にはきびしい。その点で買い辛い。ナカヤマナイトは総合力の高さで勝負するタイプなので、確実に高い基礎スピードが問われるマイルでは序盤でこの馬の良さが相殺されると思う。トップスピードもポテンシャルもそれなりにはあるけど、ここは強敵が多く苦しいだろう。


 ロードカナロアは完璧に立ち回った阪急杯で苦戦だと高い基礎スピードが要求される東京1600だと脚が無くなると思う。基本1200でもトップスピードタイプの馬なので、今の高速馬場でペースが上がりきらず緩い1200よりも東京マイルの一貫ペースの方が遥かに厳しいと思う。今回は普通に狙えない。


 ガルボは良い枠を引いたんだけど、追い切りがあまり目立たなかったので拾い切れなかった形。ヴィルシーナは前走の感じから厳しい競馬自体は良さそうなんだけど、思ったより人気していたなあという印象でこれも拾えなかった。海外馬は日本馬だけでも取捨が難しいので。ヘレンスピリットは少し気になるけどまあ絞って。

【展望】
 東京優駿、日本ダービーが次代のヒーローを誕生させて幕を終えた。そして前半戦もいよいよ終盤を迎える。グランドフィナーレとなる宝塚記念を前に、マイルGI安田記念が行われる。今年はスプリンターから中距離馬まで、これ以上ない程の豪華メンバーが集結した。マイル路線からは当然昨年のマイルCSワンツーを筆頭に、マイル路線に転向し京王杯SCを勝った新進気鋭の4歳馬、そして復活が掛かる昨年のNHKマイルC覇者。これらに加えて別路線は大阪杯でオルフェーヴルに肉薄した切れ者を筆頭に、GI善戦マン、中山GIIの鬼、そして昨年のスプリンターズS、今年の高松宮記念を制し、香港スプリントを勝った歴史的名スプリンターが参戦。これで盛り上がらないわけがない、2週続けて伝説のGIとなるか?今週は前後編2つに分けての展望。前編は今年の安田記念を彩ることになる別路線組、そして後編はマイラー路線の実力馬と海外馬を中心に展望したい。


 別路線組の中心にはやはりGI3勝、それも歴史的偉業となる香港スプリント制覇に敬意を表して、世界のロードカナロアを据えたいところ。スプリンターズSを制してからは4連勝中と目下向かうところ敵なしの状況だ。その中には1400mの阪急杯も含まれており、マイル適性に関してもある程度対応できそうという見方が成されている。まずは1200m路線での結果を分析したうえで、マイルに対応できるかどうかを見ていこう。まず直近のレースとなる高松宮記念から。このレースは昨年と比べても馬場が軽くなり時計が出やすい状態だった。11.4 - 11.2 - 11.0 - 11.6とラップ推移からもかなりトップスピードが問われる競馬となっていて、実際この馬も上り3Fが33.2とかなり速い上がりを出していることからも明らか。レースもスプリント戦とは思えない団子状態の流れで中団からコーナーで広がっていく中でポジションを上げて2列目で直線鋭く突き抜けた競馬。トップスピードタイプのドリームバレンチノが外から食い込んでいることからも、1200戦としては極端なトップスピード勝負になっている。しかし、ここで図抜けたトップスピードを見せてしっかりと勝ち切った。GI初制覇となったスプリンターズSでは超高速馬場で行われ、10.6 - 11.2 - 11.3 - 11.5とトップスピードも基礎スピードも問われる競馬だが、L1が落ちていないようにポテンシャルはそこまで問われなかった。ここで中団外でレースを追走、割と団子状態の中で3~4角外々を回しながら直線では突き抜けた。直線序盤で鋭く伸びてカレンチャンに並びかけ、L1で捻じ伏せる強い競馬だった。香港Sでは好位につけてコーナーで前を向いて直線しっかり突き抜ける圧巻の競馬で世界を制したが、この時も600通過は34秒以上掛かっていたように、ペース自体がそこまで早くない中で脚を使わずトップスピードを引き出した。この馬はこれまで京都1200mで好位から鋭く突き抜けて勝ち上がってきた馬で、1200mでトップスピードを活かしてくるタイプとはっきり言えるだろう。高速馬場の1200mになれば追走で苦しくなることもなく


 一方で1400mで行われた阪急杯では個人的には正直物足りない内容だった。平均ペース気味になりやすい阪神1400mの舞台で、11.2 - 11.6 - 11.6 - 12.2の流れ。好位の内ポケットに入ってはまり込むかと思いきや、前列がかなり飛ばして行って自分の前にかなりスペースが出来た。3~4角を最内で、しかも前のスペースを活かして押して仕掛けながら出口で外に出しスムーズに直線に向けた。その割に弾けなかった。オリービンを捻じ伏せるのにも少し苦労していて、マジンプロスパーにもジリジリ詰められた。もちろん休み明けで斤量58kgも影響したのだろうが、1200mで強敵相手に鋭い脚で突き抜けていたことを考えると少々不満の内容だ。距離に関してというよりは、阪神1400の中でも割と楽なペースで運びながらもトップスピードが削がれていたように感じたのが不満。距離云々ではなく純粋に序盤脚を使うとあまり良くないという印象を受けた。1200mでも昨年の高松宮記念のようにタフな馬場でポテンシャルが問われるような競馬になればやはり甘かった。距離どうこうよりも厳しい競馬に対応できるかが焦点となる。高速馬場なら安定しているので今回の府中の条件自体は良いはずだが、これだけ馬場が高速状態となるとやはり楽なペースは望めない。この馬の場合はこの問題の方が大きいように感じる。見せてきたパフォーマンスは世界でもトップクラス間違いなく、平均ペースでトップスピードを出せる展開になれば1200なら間違いなく強い。しかし1400の阪急杯ではかなり恵まれた中で、やはり圧巻という競馬ではなかった。距離延長もだが、東京マイルのハイペースに対応することができるかどうかだ。競馬の定石的には狙い辛い。それでもトップスピードが出せる展開にさえなれば侮れない所だろう。


 別路線組2番手にはやはり実績最上位の切れ者ショウナンマイティ。阪神の舞台で強烈すぎる末脚を見せてきた同馬。宝塚記念3着をはじめ、オルフェーヴルやルーラーシップらを相手に互角に立ち回ってきた現役トップクラスの実力馬がマイルに出るというのだからやはり少々驚いた。この馬の良さは何と言ってもL1必ず突っ込んでくるトップスピードとポテンシャルの異次元さにある。前走の大阪杯でも非常にわかりやすい競馬となっていて、スローペースから12.2 - 11.6 - 11.3 - 10.9 - 11.5と加速していく流れになっているのだが、例によって最後方に近い位置からオルフェーヴルの動きに呼応して3角で鞭、そこから激しく追われて追われて後方のままだが前を向いて直線。序盤では伸びきれないもののL1でグンとオルフェーヴルとの差を詰めてくる。それでも流石に相手には完封されたが、エイシンフラッシュはしっかり抑えての2着。瞬間最大のトップスピードが速いというよりも、質の高いトップスピードをかなり長い時間維持できるがゆえにL1で突っ込んでくるというイメージで良いだろう。これに関しては同じ大阪杯でも勝ち切った昨年の方がよりわかりやすいと言える。ヤヤオモでタフな馬場だったが、今年と同じく超スロー12.3 - 11.9 - 11.2 - 12.2の流れ。最後方から外々を回して前を向いて直線。序盤で大外に持ち出すと、L1でただ一頭違う脚を使ってぐんぐん伸びて突き抜けた。トップスピード勝負になってもやはりL1落ち込んで差し切るという内容が多い。


 しかし課題は山ほどある。一つはポジショニング能力が極めて低いこと。常に追い込みでの競馬になっているが、ほとんどのケースではトップスピード勝負になっていてL1の落ち込みで差し込んでくることでパフォーマンスを引き出しているというのは前述のとおり。ただし厳しいペースでの実績がほとんどない。唯一と言っていいのが鳴尾記念2着。厳しい平均ペースで12.0 - 11.7 - 11.5 - 11.0 - 12.2の流れ、L1のバテでやはりグンと伸びてきている。阪神外回り特有のL1差し切りはここでも変わらなかった。ペースが上がって追走に脚を使わされても問題なかったとはいえ、今度は東京1600mという舞台。早いと言っても12秒が刻まれ多少なりとも中弛みが出来ている舞台と違い、11秒台を刻んでL1でも大きく落ち込まないコースということを考えると、やはり序盤のポジショニングが致命的になる可能性は拭えない。もう一つの課題としても1800mの鳴尾記念である程度目途を立てているとはいえマイルの高い基礎スピードを問われて無理に追走して脚をなくす可能性もある。この2つをクリアしないと難しいだろう。ただし、トップスピードの質はここでも通用するし、L1の落ち込みでの差し込みは現役最強クラス。距離適性に関してはロードカナロア同様に不安も大きいし、ロードカナロアよりもこなせそうなイメージがついていると思うので人気も落ちないだろう。馬券的には少々狙い辛い印象は否めない。内枠を引いて一貫ペースに適性が有った上でL1のバテで食い込んでくるような流れになればチャンスは有るだろう。ただし、外々追走になると、ばてるばてない以前に直線で絶望的な位置になるだろう。これをどう乗ってくるか。


 別路線組の3番手にはダンス産駒が意外と好相性の東京1600m、ここで悲願のGI制覇なるかダークシャドウ。ショウナンマイティと並んで古馬王道GI戦線トップクラスの実力馬だ。最大のパフォーマンスは言うまでもなくトーセンジョーダンと接戦まで持ち込んだ天皇賞秋だ。何せこのレースは超ハイペース。東京マイルでもなかなか無い程序盤10秒台が連続して刻まれる殺人ペースだった。後半は11.8 - 12.0 - 11.9 - 12.1 - 11.8と完全に苦しくなるラップだったが、中団で競馬すると直線序盤で前が壁、少し不利があって外に持ち出すロスもあった。そこから立て直してくると先に抜け出していたトーセンジョーダンを相手にしぶとく伸びて急追してきた。L1最後は流石に甘くなったものの、このペースでかなりのパフォーマンスを見せたと言っていい。ポテンシャルの高さ、基礎スピードの高さをかなり高いレベルで見せてきた。また一昨年の毎日王冠勝ちではスローから12.0 - 10.9 - 11.1 - 11.6の流れ、ギアチェンジ、トップスピードが問われたうえに、L3最速でポテンシャルもある程度要求された競馬。ここでかなり後方から直線序盤で進路確保に苦しんで絶望的な位置になったが、L1でぐんぐん伸びてきて一番いい脚を使って差し切っている。トップスピードの高さも当然持っているのだが、やはり一番の持ち味はこのポテンシャルにあると言っていいだろう。そしてもう一つ、2年前ヒルノダムールが制した大阪杯で平均ペース11.6 - 11.6 - 11.3 - 11.8 - 12.2の流れで大外強襲、エイシンフラッシュを差し切っている競馬からも明らかで、ペースが上がって良さが出てきているように基礎スピードも武器である。これはショウナンマイティとは明確に一線を画す適性で、平均的な競馬でポテンシャルを活かせる馬だ。ここからも天皇賞秋のパフォーマンスからも、個人的にマイルの厳しい流れは合っていると考えている。少なくともショウナンマイティよりこなせる可能性は高いだろう。


 ただし、この馬は適性面では良いものを見せているが、ショウナンマイティと違って近走が冴えない。大阪杯からの参戦という点では同じだが。それでも前走は12.2 - 11.6 - 11.3 - 10.9 - 11.5とトップスピードの質が問われる競馬になっていた。ここで2列目の内ポケットに入り込んで前が向けずに競馬をしてしまい、外から押し上げてトップスピードに乗せてきた馬たちに出し抜かれる内容だったと言っていい。この馬の本質はトップスピードに乗せてからの持続力、ポテンシャルにあるのでこの負け方はトップスピードに上手く入れられなかったという内容だったとみていいだろう。悲観するほど悪い競馬ではないという見立てだ。有馬記念は明らかに距離が長く、タフな馬場でのポテンシャル勝負を考えれば相手を見ても悪くない競馬は出来ている。JCはスロー気味の競馬から12.0 - 11.9 - 11.7 - 11.5 - 11.5の流れ。ラップはビートブラックが上手く3角から差を広げた競馬であまりあてにはならないが、外からオルフェーヴルらが捲ることで恐らく早い段階での仕掛けになっていて、恐らくL3最速戦ぐらいにはなっているだろう。ここでは持ち味のトップスピードとポテンシャルを引き出せているが、これだけではやはり苦しい。この馬の良さは基礎スピードの高さにあったわけなので、緩急の無いマイル戦でポテンシャルを出しきる競馬が出来れば東京マイルでも戦えるだろう。あとは相手関係一つだが、東京1800の舞台ではマイラーを圧倒してきているし、これまでのパフォーマンスからも地力最上位は疑う余地はないだろう。ここでGI制覇なるか。


 別路線組の穴どころからはヴィクトリアマイル3着で力を見せたマイネイサベルを抜擢。この馬はこれまでの考察からもやや難しいところはあるが、基本序盤前にポジションを取りに行くと甘くなり、脚を溜めてポテンシャルを出し切れればかなりのパフォーマンスを見せる反面、トップスピードまで切り替わるまでに時間がかかる、ギアチェンジ能力はそこまで高くない馬というのが個人的なイメージだ。前走のヴィクトリアマイルでは平均ペースで11.9 - 11.4 - 11.2 - 11.6の流れ、トップスピードもそれなりに問われる競馬になったが2列目最内から直線序盤で進路を見つけるとすっと抜け出していて、最速地点で良い脚を使って先頭に立つ競馬。最後はヴィルシーナに捻じ伏せられ、ホエールキャプチャにも差されたものの内容としては立派だった。ただL1で甘くなるという点は変わらなかった。柴田大知が積極的にポジションを取ってそれなりの結果は出したものの、松岡は好位からの競馬を諦めて中団で脚を引き出す競馬で去年秋以降は結果を出してきていた。この競馬に戻ると見た方がいいだろう。そして府中牝馬Sで見せた圧倒的なパフォーマンスは牡馬と混じってもやれるだけのものを見せている。11.8 - 11.3 - 11.2 - 11.5とL3最速ポテンシャル勝負、中団で構えて外から押し上げて全てを捻じ伏せる圧倒的な競馬。こういったポテンシャル勝負でこそ良さを発揮できる馬。時計勝負も歓迎で前走を見ても基礎スピードの高さは見せている。器用さが問われて甘くなったり、序盤脚を使って甘くなったりという悩ましい馬だけに、こういったごまかしのないハイレベル戦になればこの馬の良さが出てくる可能性は高いだろう。L1でしぶとく伸びて圏内に食い込んできても驚けない馬だ。別路線組ではこれが馬券妙味で一番面白い。随分長い間見てきた馬だけに、この舞台で好勝負してくれれば個人的にも感慨深いものもある。そして柴田大知も良いが、マイネルと言えば松岡。当然松岡にも頑張ってもらいたい。


 ナカヤマナイトも東京マイルという舞台に新味を求めてやってきた。中山GIIでは無類の強さを発揮するこの馬も、王道GIでは足りないという状況が続く。オールカマーでは重馬場で12.6 - 12.6 - 12.0 - 11.7 - 12.3の流れをダイワファルコンと共に外から押し上げて4角で2頭のマッチレースに持ち込みそのままダイワを捕えての勝利。要所で動ける脚と、早仕掛けでもある程度持たせることができるポテンシャルを持っている。しかし有馬記念では外枠だったことも影響したにせよ12.5 - 11.9 - 12.1 - 12.1 - 11.9 - 12.0の流れでロンスパ戦ポテンシャル勝負の競馬、外から押し上げて勝ちに行ったものの直線序盤で脚色苦しくなり、L1で下がって6着のダークシャドウにも離される完敗の7着だった。総合力は高いものの王道路線で高い適性が問われると足りないという競馬が続いている。中山記念ではシルポートが大逃げを打つ展開で11.1 - 11.4 - 12.0 - 12.0 - 13.3の流れを中団から押し上げて動いてしっかり捕える競馬。直線入りでは3列目まで押し上げ、そこからしぶとく伸びてL1突き抜けシッカリ勝ち切った。ダイワファルコンを従える競馬が多いが、動いて押し切ると言った競馬が合っている。またシルポートがハイペースで引き離す競馬でも外から押し上げながら最後まで伸びていて1800mでパフォーマンスを保っているように、ある程度距離に対しても目途は立てていると言えるだろう。この馬の場合は新潟大賞典でも平均ペース気味で極端なトップスピード勝負にはならなかったのだが、11.9 - 11.9 - 11.1 - 12.1の流れで序盤挟まれて窮屈になったとはいえ進路が出来てからの伸びもイマイチだった。これまでも中山で押し上げて徐々にギアを切り替えながらの競馬で高いパフォーマンスを見せていたし、U字コースで押し上げるタイミングの無い競馬で、高い基礎スピードとポテンシャルを要求される舞台というのは正直不安も大きいだろう。ここは相手も揃ったし、難しい条件ともいえる。


 ヴィクトリアマイル覇者のヴィルシーナが混合GI安田記念でも力を発揮できるか。前走ヴィクトリアマイルで悲願のGI制覇を成し遂げた。内容は平均ペースから11.9 - 11.4 - 11.2 - 11.6という流れ。極端ではないが多少緩んでいるように、そこまで厳しいというペースではなかったが、2列目外から前を向いて直線と絶好の競馬。しかしそれでも序盤は伸びあぐねてマイネイサベルに出し抜かれている。最速地点での脚もそこまで良くは見せなかったがL1でしぶとく差し返してくると、マイネイサベルを捕えてホエールキャプチャの追撃を丁度凌いだという競馬になった。何とか勝ち切った形だが、要所で苦しんでいたようにやはり少し緩くなって質のいいトップスピード、ギアチェンジが要求されてしまったのが苦戦した要因だろう。ただしこのレースで良かった点もある。それは序盤のポジショニング。驚くほどあっさりと先手を取れた。このポジションで競馬が出来れば大崩れすることは無いだろう。加えてヴィクトリアマイルの内容からも秋華賞の内容からもとにかくポテンシャルが高い。器用さはなく質の良いトップスピードはそこまで持っていない半面で、それに乗せさえすればしぶとい競馬ができる。また基礎スピードも高く前走でそれを再証明した。これまでギアチェンジ能力はある程度持っていると思っていたが、近走それが全く見せられないことからも、世代全体でギアチェンジ能力があまり高くないのかもしれない。VMの内容を見る限り、もう少しペースが緩まず一貫して厳しい競馬の方が良さが出るかもしれない。その点で古馬混合の安田記念で厳しい競馬になってより良さが出てくる可能性は十分にあるだろう。ヴィクトリアマイルの走破時計からはもうちょっと詰めないといけないが、ラップ的には緩んでいたわけだしもう少し詰めてくる可能性はあるだろう。展開が嵌ったホエールキャプチャと接戦、マイネイサベルとも接戦という見立てだと狙いにくそうだが、厳しいペースで伸びしろがあるし、マイネイサベルも皆が思っているほど弱い相手ではない。ここでも戦えそうだが、人気面ではマイネイサベルほどおいしくはならないだろう。


 前編最後には3歳マイル路線から唯一参戦エーシントップまで。前走NHKマイルCでは2列目外から運びながらも苦しい競馬になってしまった。11.7 - 11.3 - 11.6 - 12.0の流れで2列目外から追われるが直線序盤で前列のガイヤー、コパノとの差を詰め切れない。そうこうしている間に内外から差を詰めてこられ窮屈になりブレーキをかける不利。これがなかったとしても圏外だっただろうがもうちょっと着順は良かっただろう。ただし、ペースが上がってこれまで見せてきた要所での動き出しが見せられなかった。朝日杯でも苦しい競馬になったとはいえ良さが出なかったように、厳しいペースで不安があるというのは間違いない。勝ってはいるがシンザン記念で平均ペースを刻んで12.0 - 11.9 - 11.5 - 12.3の流れで最内逃げ粘ったもののヘミングウェイに詰められる内容、これはあまり高いパフォーマンスとは言えない。時計的にも平凡だった。この馬の良さは京王杯2歳SやニュージーランドTで見せたようにある程度緩いペースで要求される要所でのギアチェンジ能力にある。NHKマイルではペースが上がってどこまでやれるか期待していたが、正直期待外れだった。現状古馬の厳しいペースに巻き込まれて良さが出てくる可能性を高いとみるには無理があるだろう。序盤無理して良いタイプには全く見えないので、どうせチャレンジするなら脚を溜めてこの馬の新味を引き出してほしいところ。タイプ的に後方からでもギアチェンジ能力高くある程度はやれるはず。それでもここに入れば見劣る部分が多いだろう。


 展望後編は話題を攫っている別路線組を返り討ちにしてやろう、本家本元古馬マイル路線を戦ってきた馬たちの意地を見よ。昨年のマイルCS1,2着馬に今年のマイル重賞を勝ってきた馬たち、さらに海外馬を展望していく。


 マイル路線の中心は昨年のマイルCS、安田記念共に2着とマイルGI路線の重鎮グランプリボスだ。父サクラバクシンオー産駒は1400まで、の時代を終焉させた歴史的名馬。長いスランプに陥っていたが、昨年の安田記念からは割と安定してきている。ただし一つ言えるのが、海外では全く力が出せない。これは馬場の質もあるだろうか、日本でも高速馬場でのパフォーマンスが高い馬なのでそのあたりを敗因と考えるのが妥当と言えるだろう。まず古馬になってから最高のパフォーマンスと言える昨年の安田記念から見ておきたい。ハイペースで11.1 - 11.4 - 11.3 - 11.8 - 11.9の流れ。ストロングリターンが勝ち時計1:31.3とレコードを叩き出す内容でかなり厳しい競馬となっていたが、中団馬群の中で進めていくと、直線で中目からしっかり伸びてきてL2で狭いところを割ってストロングリターンらと共に伸びてくる。L1でストロングリターンと共にしぶとく伸びて先頭列に躍り出るもののストロングリターンに捻じ伏せられた形。負けはしたもののハイペースを中団で追走、直線序盤から最後までしっかりと伸びている点からもトップスピード、ポテンシャルで高いものを見せた上に、ハイペースに対応できる基礎スピードの高さも見せた。サダムパテックやリアルインパクトと言った強敵が伸びあぐねる中で、強敵相手に非常に強い競馬を見せた。昨年のマイルCSではヤヤオモ表記ではあったがそこまで馬場が重くなった印象は無かった。ただ高速馬場とまではいかない状態で平均ペースながら11.9 - 11.3 - 11.3 - 11.5 - 11.9とポテンシャル勝負になっている。ここで中団の内目、サダムパテックの外で競馬して直線外目に持ち出すが、ここで各馬激しくぶつかり合う不利を受けてしまう。しかし立て直すとL1で急追して惜しい2着に入り込んだ。不利を受けなければと言っても過言ではない内容で、やはりL1のしぶとさでポテンシャルを発揮してきたとみていいだろう。


 これまで崩れてきた多くの競馬はヤヤオモ表記でもタフな馬場となっていた京都のマイル戦だったり、京王杯SCのようにギアチェンジや質のいいトップスピードを要求されたりと言った競馬で伸びなかったりという内容が多かった。このスランプ時のパフォーマンスに関しては正直説明できない部分も多分にあり、1度目のスワンSでは割と平均ペースだったが崩れていて、少なくとも1400で基礎スピードが問われると若干足りないというのは間違いなく、昨年のスワンSではスローから11.5 - 11.0 - 11.2 - 11.6と基礎スピードは問われず、トップスピードだけでなくL3最速でポテンシャルが問われたことも大きいだろう。なんとなくマイルは長いんじゃないか?という父バクシンオーのイメージで捕えにくいのだが、毎日王冠の厳しい競馬での意外な善戦からも、マイルは本当にベストとみるのが良いかもしれない。現状で言えることは、高速馬場の東京マイルで一貫ペースが最も力を発揮できる舞台だということだ。京王杯の負け方からも緩んでギアチェンジが要求されるとトップクラス相手には苦労する印象なので、ごまかしのない厳しい競馬になることが勝ち切るには前提条件となるだろう。これまでの紆余曲折から、分析が非常に難しい馬なのだが、少なくとも昨年の安田記念以降はこれまで崩れてきたケースでもしぶとく食い下がってくるようになってきていて、バクシンオーらしく4歳で完成期を迎えているように感じる。今回は別路線組が多く強敵揃いだが、マイル路線のパフォーマンスを考えればこの馬が一歩抜けた存在。時計に影響が出るほど渋ってきたときは課題があるのだが、パンパンの良馬場ならこの馬が最上位だろう。そしてNHKマイル以来久々のGI制覇となるか。


 マイル路線相手筆頭には京王杯SCで鮮やかな差し切り勝ちを見せたダイワマッジョーレ。もともとは中距離路線で力を発揮してきた馬が、今年に入ってマイル路線に舵を切った。東京新聞杯、ダービー卿と2着に入り、更に短い1400mの京王杯SCで遂に重賞初制覇となった。元々金鯱賞でハイレベル戦の2着に入り込んだ馬だった。12.7 - 11.9 - 11.8 - 11.8 - 11.7 - 11.5 - 12.0と超ロンスパ戦を最内でロスなく立ち回った事もあるが、直線序盤では鋭く伸びた。最後はポテンシャル型のオーシャンブルーに交わされアドマイヤラクティには詰められたものの相手関係を考えれば価値ある2着だったと言える。近走唯一崩れた中山金杯では12.1 - 11.8 - 11.6 - 11.6 - 11.8の流れ、3~4角で中目前が壁から直線外に持ち出すも序盤反応に苦しんで、L1ジリジリ詰めてくるもという競馬。それでもジャスタウェイには差されてしまっていて、4F勝負でL1落ち込まない競馬でやや消化不良な内容だった。マイルに替わってから東京新聞杯ではスローから11.8 - 11.2 - 11.0 - 11.3とトップスピード勝負。ギアチェンジもそれなりに要求される展開だった。後方から直線最内から進路をクラレントの後ろに替えてクラレントが抜け出してから強襲。L1大きく落ち込まない流れで最後まで伸びてきていた。ここからもかなりのポテンシャル、高いトップスピードを持っていて、反面で基礎スピードが足りないように感じた。ポジショニングが悪く展開が向いたので差し届いたが、外を回すような展開になれば届かなかった可能性が高かった。ダービー卿では比較的前目につけて厳しいペースで11.2 - 11.8 - 11.7 - 11.8 - 11.8の流れに対応。終始外々から4角で鞭が入って少し反応鈍かったが大外からしぶとく伸びてきて差し組では抜けていい脚を使っての2着。ここからも本質的にマイルではポテンシャル勝負向きだったのは間違いない。また基礎スピード面でもパフォーマンスを上げてきていた。



 しかしやはり最大のターニングポイントは京王杯SC勝ちだろう。この京王杯SCは良くありがちな東京1400特有のギアチェンジ戦というわけではないという点は注意すべきポイントだろう。前半3Fが33.9と坂スタートでペースが上がりにくい東京1400としてはかなりのハイペース。そこから11.8 - 11.4 - 11.4 - 12.1とL1落ち込むポテンシャル勝負で基礎スピードも問われる競馬になった。ここで以前より積極的にポジションを取って中団で競馬をすると、3~4角で外目から積極的に前を向いて動くと、直線序盤からジリジリ伸びてきて内から出し抜いていたトライアンフマーチを目標に競馬、L1でこの馬の本領であるポテンシャルを引きだし減速ラップで分かりやすく伸びて突き抜けた。この競馬で言えることは、これまでマイルではポジショニングが悪く、トップスピード勝負でL1のバテで差してきていた馬だったのが、1400の厳しいペースを積極的に中団につけて動いて最後まで良い脚を使った、パフォーマンスの内容が変わってきたという点にある。これまでは追走力が不安で、ポジショニングの差をつけられるといくらL1食い込んでこれても基礎スピードの差で苦しい立場になると思っていたのが、基礎スピード面で大きく向上してきた。この内容ならばマイルGIの厳しい流れもむしろ歓迎と言えそうだ。相手関係に関しては正直やってみないとわからない部分が多いが、少なくとも厳しい競馬となった京王杯でサダムパテックは破っている。ギアチェンジ、トップスピード戦となった東京新聞杯ではその適性を持っているクラレントにL1で詰めてきていた。強敵も多いがこの馬自身前走京王杯のパフォーマンスを見る限り、勝ち負けするだけの目途は立てたと言っていいだろう。ここも通用するはずだ。


 マイル路線3番手には復活なるか、昨年のNHKマイルC覇者カレンブラックヒル。まず昨年のNHKマイルCを再度分析すると、直前の雨でかなりタフな馬場になっていた。その中で、平均ペースから中盤緩めて12.2 - 12.6 - 11.6 - 11.3 - 11.7と前後半が早い中弛みの競馬。これを作り出して二の足でぶっちぎっての完勝だった。時計は馬場を含めるとかなり早く、パフォーマンスという点では抜けていたのは間違いないだろう。ただし冷静になって考えてみると、ペース自体はそこまで早くなく、中盤緩めている。そこから再加速させて二の足で千切っているように高いギアチェンジ能力とトップスピードで結果を出したとみる方が妥当だろう。それと、良馬場発表だが最終レースを見ても明らかに良馬場ではない状態。ここからもタフな馬場に対する適性もかなり高かったと見たい。そして毎日王冠では11.8 - 11.8 - 11.5 - 11.7 - 12.2のラップ推移。厳しい平均ペースを離れた3番手で競馬して直線序盤からしぶとく伸びてL2で先頭に立ちそのまま押し切る強い競馬。ここでは高い基礎スピードとポテンシャルを発揮したと言っていい。初敗北となった天皇賞秋ではシルポートの大逃げでへんてこなラップではあるが、11.6 - 11.8 - 12.0 - 12.8 - 11.8とL1だけで測れば毎日王冠より楽で、よりトップスピード勝負にシフトしているレース。ここで離れた2番手から直線大逃げのシルポートを捕えに行く競馬も、ジリジリとしか伸びずトップスピードを持つ馬たちに差されての5着に終わってしまった。個人的見解とすれば、この馬自身上り34.5は毎日王冠よりも早い。にも関わらず差されたということは、この馬の良さである基礎スピードを活かし切れなかったとみるのが妥当だろう。実際最内ロスなく通ったとはいえギアチェンジ、トップスピードタイプのエイシンフラッシュに出し抜かれているように、シルポートの大逃げは有ったが2番手のカレンブラックヒル以降は比較的楽なペースだったと考えるべきだろう。秋の府中2走は勝ち負け共に評価できる。ただし、適性的にもトップスピード型ではなく、比較的基礎スピードを全面に押し出す競馬で小細工の無い競馬の方がいいという点にある。少なくとも高速馬場ではそうなる。


 問題はマイルという距離。これまでNHKマイルのパフォーマンスがあまりにも凄かったのと、マイル実績ばかりだったこともあって距離延長することに不安を感じる人も多かったはず。ただし、毎日王冠、天皇賞秋を見ても、少なくとも距離自体に不安はない。毎日王冠では厳しいペースを積極的な競馬で押し切ったのに対し、天皇賞ではペースが楽だった割に後続との差を作れず、しかも仕掛けが早くなる競馬になったので差されたが無様な負け方はしておらず、かなり強い競馬だった。フェブラリーSは別にしても、マイラーズCで古馬になって初めてハイレベルの基礎スピードが要求されるマイル戦で押し切れなかった。11.5 - 12.1 - 11.5 - 11.7と少しおかしなラップになっていてL1はそこまで落ち込んでいない。差しこまれたのはリードを作れず、ポテンシャル型が下り坂で勢いに乗せてしぶとく伸びてきた分もあるので仕方ないがところもある。実際直線半ばでは抜け出せていたし、L3で緩む競馬を2列目内目で競馬していてここで前を向けずにリードが縮まったのも大きい。緩まなければ後続はリードを詰めるのも苦労したし、外々を回すロスも大きかっただろう。この4着も決して悲観する材料ではないと言っていい。ただし、序盤思ったほどポジショニングが楽ではなかったので、高速馬場で厳しいペースになった時にきっちりと積極的な競馬ができるかがポイントになるだろう。個人的には毎日王冠を見ていても、この馬の基礎スピードを一番活かせるのは1800mという気もする。2000もこなせるぐらいだし、マイルでも強い競馬が出来ているが、高速馬場で良質な基礎スピードが要求されたときにどこまでやれるか。前走の敗因は割とはっきりしているし、相手関係を考えても悪くない内容。じわりと人気を落とせば狙いたい馬ではあるが、東京マイルのハイペースに対応できるほど良質な基礎スピードがあるかどうかはまだ未知数な部分もある。NHKマイルからも馬場が渋れば確実に狙い目だろう。まだ分からない部分はあるが、いずれにせよ見限るのは早計だ。


 穴どころからはマイル路線の古豪ガルボ。この馬も常にあまり人気しない1頭だったが、前走で3着に入ったことで穴人気しそうな嫌いは有ったのだが、今回は別路線組から面白い馬が多く出走することで完全に空気となっている印象。だが、この馬の良さはマイルの厳しいペースにこそある。実際昨年の安田記念でも11.1 - 11.4 - 11.3 - 11.8 - 11.9とかなりのハイペースを中団で追走、直線序盤からジリジリとは伸びていて、最後までばてることなく食らいついての5着。このレースの場合は2列目を確保できそうだったのだが、窮屈になって下げてしまい、そこから徐々にポジションを落としてしまっていた。基礎スピードとポテンシャルが武器の馬。ポジショニングの良さを活かせなかった分もあるし、一概に力負けの5着とは言い切れない。それに昨年の東京新聞杯の勝ち方も11.7 - 11.1 - 11.3 - 11.8の流れで内から出し抜いたコスモセンサーをその直後からL1差し込むという競馬。ポテンシャルが問われる競馬なら大きく崩れない。前走京王杯SCでは東京1400としてはかなりのハイペースで、11.8 - 11.4 - 11.4 - 12.1の流れ。これでも3列目内ポケットから直線進路を確保して序盤でしぶとく伸びてきた。最後まで大きく落とさずにトライアンフマーチやダイワマッジョーレと接戦の内容。この競馬を見ても高い基礎スピードとポテンシャルを持っていることは間違いない。力関係的にもマイル路線組にはやはり少しだけ足りない部分もあるのだが、ハイペースに対応できる基礎スピードはかなり高く、特に今回別路線組が比較的多数を占めている以上、この基礎スピードは大きな武器になるだろう。内ポケットで競馬し、直線で進路を確保してしぶとく抜け出す競馬に持ち込めれば波乱を演出することも可能だ。常に人気がないイメージだが、持ち味を活かせれば安定して上位に食い込んでくるのは大きな魅力だろう。


 昨年のマイルCSの覇者サダムパテックだが高速府中がどうかの不安はぬぐえない。マイルCS勝ちも内枠で脚を溜めて11.9 - 11.3 - 11.3 - 11.5 - 11.9の流れで最内を立ち回って直線不利を最小限にとどめて序盤に突き抜けてグランプリボスの強襲を凌いだ形。ペース自体は平均的で脚を溜めてトップスピードを引き出して出し抜いたという印象。ポテンシャル勝負にはなっているし、ここできっちり勝ち切ったが基礎スピードはそこまで問われなかった。この馬はマイルで厳しい競馬、時計勝負になると崩れている印象で、昨年の安田記念でもハイペースから11.4 - 11.3 - 11.8 - 11.9の流れで中団から良さが出ず。昨年の東京新聞杯でも平均ペースから11.7 - 11.1 - 11.3 - 11.8の流れで外々を回すことにはなったが伸びるどころか失速。ハイペースの京都金杯でも11.9 - 11.9 - 12.0 - 11.5 - 11.8の流れで外々を回すにしてもジリジリとしか伸びなかった。逆に昨年の京王杯SC勝ちでもそうだが11.7 - 11.3 - 11.3 - 11.6の流れでトップスピードが問われる競馬で良さが出てばてずにきっちり差し切っている。トップスピードが問われる競馬で良さを出している感は否めず、ペースが上がって基礎スぴ度が問われると崩れる傾向にあるのは間違いない。前走の京王杯SCでは昨年より重い馬場で昨年よりも早いペース。ここで追走に脚を使って11.8 - 11.4 - 11.4 - 12.1の流れで伸びあぐねた。これでほぼ確定的だとみている。本来はペースがあまり上がらない方が良いタイプなので、今の高速馬場で基礎スピードが要求される東京マイルだと苦しいところもあるだろう。シルポートがどういう出方をするかに大きく左右されるとみていい。出来れば少し緩いペースになってくれた方がこの馬の良さは出るだろう。ただ、そうなると別路線組が結構強力になるのでなかなか馬券的には狙い辛いところ。ダービーを勝って勢いに乗る天才武豊がどう乗るかが非常に興味深い。


 シルポートは自身の成績以上にレース全体を予想する上では重要な1頭。近走はハナに立てずにもがいている印象だが、もともとテンが速いという馬ではないのでこれはそれほど気にする必要はない。二の足で勢いがついてから平均的に刻んでいくタイプなので、先にハナを切られて前に行けない状況になると苦しい馬。京王杯SCはあんなペースになったしなかなかダッシュがつかずに苦しい競馬になった。ただ京王杯SCは先行レベルはかなり高いレースで気にする必要はない。マイラーズCではテンの速さでタイキパーシヴァルに見劣ってハナを切れなかった。今回は逃げ馬がトウケイヘイローぐらいだが、これが賞金面ではかなり際どいラインでこれが出てくるかどうかでまた変わってきそう。しかし出てこなければ単騎逃げは十分想定できる。ただし、マイルになると基礎スピードで優位に立てるわけではないので、楽に追走されてリードも作れずという展開になるのはやむを得まい。この馬としてはやはり厳しい競馬になることは間違いないだろう。正直中山1800mで坂スタートで積極的にハナを取りきって平均的に刻むのが一番合っていると思うし、今回は相手も強敵。マイペースで進めたとしても現状苦しい面の方が多いだろう。それでも渋ってくると面白いので、梅雨の時期となった今、多少なりともチャンスは有る。昨年のマイルCSでも少し雨が降ったことで溜め逃げして11.9 - 11.3 - 11.3 - 11.5 - 11.9の流れでしぶとく最後まで踏ん張ってあわやの場面を演出していた。雨が降ればノーマークは怖い存在だ。


 海外馬にも注目しておこう。


 まず昨年の安田記念にも出走して惨敗していたグロリアスデイズ。父ユソネットはミスプロ直仔、母父はマイバブーに至るという血統。日本の高速馬場適性に関してもやはり昨年の安田記念を見ておこう。出は悪くなかったがハイペースでついていくのに苦労していた感じ。ハイペース11.1 - 11.4 - 11.3 - 11.8 - 11.9の流れで終始手が動いての競馬で、コーナーで外を追走直線後方のまま最後まで良いところなしに終わっている。正直これでは日本の高速馬場適性に関しては低いと言わざるを得ないだろう。昨年の香港マイルでは好スタートから下げて中団につけるというような競馬で楽に競馬を進めていて、3~4角でも最内ロスなく進めて出口で外に出し2列目。そこから直線序盤で早めに抜け出したところに外からアンビシャスドラゴンに差されての2着。内容としてはかなりのパフォーマンスと言える。実際サダムパテックやグランプリボスを問題としていない。平均ペース気味で要所で良い脚を使っている形なので、どちらかというと序盤無理をせずにトップスピードを引き出すタイプのように感じた。ヘレンスピリットと一緒に走って4着と先着を許しているチャンピオンズマイルでは、中団最内から3角ぐらいで仕掛けつつの競馬になっているが手応えが香港マイルほど良くなかった。実際進路を確保してからも直線伸びてくることもなくなだれ込んでの4着。ここからもパフォーマンス面では落としてきている印象で、勢いという観点で考えるとチャンピオンズマイルで2着してきた昨年に比べても一息だろう。香港マイル路線では実力馬の一頭に違いはないのだが、昨年の安田記念を見るととても食指は伸びない。適性面で大きな不安を抱えている。


 最後にもう一頭の香港馬ヘレンスピリットにも注目しておこう。血統は父フットステップスインザサンド、母父ウッドマンと此方は比較的日本でもお馴染みの血統だ。フットステップスインザサンドは府中で活躍を見せているセイウンジャガーズと同じ。母父ウッドマンはミスプロ系でも芝適性の高い馬で、高速馬場の時計勝負に実績がある。スピードワールドやヒシアケボノと言った1200~1600mで結果を出してきているスピードタイプ。という血統背景なので、案外日本の高速馬場にも対応できそうな感じは受ける。前走チャンピオンズマイルで2着、これで香港マイル路線での台頭という形になったが、このレースを見ておこう。五分のスタートから積極的に出してハナを取りきるが、外の馬の方が手応え自体はよく行かせてもらったというような印象。そこからマイペースに持ち込んで800通過は47.3ぐらい。そこから終始楽な手ごたえで直線を向くと、しぶとく粘るがダンエクセルに並ばれる。しかしそこからがしぶとく簡単に前に出させずに後続も封じ切って2着を確保。1:33.4と時計的にも早いが、前半4Fが47.3ということを考えても決してペースは早くない。むしろ後半4Fは46.1なのでスローペースだったと言える。その中で二の足でしっかり出し抜いているという点は意外と東京では面白い要素かもしれない。ただし、やはりこのレースを見ても日本のスピード競馬に対応して序盤から楽にハナを切れるような印象は全く受けなかった。これならシルポートの方が速いだろうという印象。逃げて結果を出してきた馬なのは間違いないので、自分の競馬が出来なくなる今回、馬場適性は抜きにしても前走のパフォーマンスを発揮できるかどうかはやや疑わしい。血統的には面白いし、前走のパフォーマンスを見ても逃げられれば日本の高速馬場でもという印象はあるのだが。2~3番手であのパフォーマンスが出来れば。怖いのはこっちの方だとは思う。



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