少し前の日刊ゲンダイ(12月11日付)に又井郁生亜州IR代表という人が書いた「中国に流出する競走馬」という記事があった。
うーん、なんだかなぁ。Netから調べたであろう客観的データに間違いはないのだが、この人の主観が書かれている部分は、ちょっとおかしい。
記事の要旨
1. 中国人投資家が1歳馬18頭を4735万円で落札した。
2. 中国では賭博型の競馬は禁止されているが「速度競馬」と呼ばれるイベント型の競馬が全国30カ所で催されている。
3. これらのレースは行政や企業スポンサーからの賞金で成り立っている。
4. 年々盛り上がりを見せており、公営ギャンブル化も十分あり得るとの思惑もある。
5. そうした背景から日本産馬を買い漁る動きは今後ますますエスカレートすることになりそう。
6. 日本勢はこのチャンスを大いに生かしたい。
7. JRAのサイトには、競売情報を中国語で伝える専門ページがお目見えした。
8. 不況のあおりで落札価格が下落傾向だっただけに、中国マネーの流入は大歓迎なのだ。
9. 競馬ファンにとっては、有力馬の流出は悔しいが、苦しい台所事情の業界側は背に腹は代えられない。
うーん、やはり微妙におかしいねぇ。
今回中国人投資家が今回落札したのは、オータムセールで、このセールは、上級馬を対象としたセレクトセール・セレクションセール、中級馬を対象としたサマーセールと異なり、これらのセールの対象にならなかったり、売れ残ったりした下級馬のセールで、そのことは中国人投資家が買った馬の価格が平均260万円強というところからも明らか。
したがって、この程度で「買い漁り」だとか「有力馬の流出」というのは大げさすぎる。
「中国人のやることは何んでも悪い」という最近の世間のというかマスコミの傾向に毒されているのではないか?
生産者にとっては、原価割れ覚悟、次年度の生産のためにいくばくかの足しになればとの思いで出品しているのであるから、「背に腹は代えられない」というのではなくて「大助かり」というのが本音。
それに、今、行われている「速度競馬」が今後さらに発展する可能性は高く、仮に将来的に公営ギャンブル型の競馬が行われるようになれば(私見ではその可能性が高いとは思わないが)、そこに膨大なニーズが発生することにもなる。そのための先行的な試みとしても大いに意味がある。
この記事のような、いたずらに世間を刺激するような書き方は思慮不足であって、書き手には思慮深い考察が必要になる。