その4
《出口牧場》 98ポイントフラッグ
続いて、現在日高産馬で最も3歳クラシックに近い存在のゴールドシップの母、ポイントフラッグを紹介します。
出口牧場 所在 沙流郡日高町賀張
出口牧場は、年間生産頭数10頭未満、そのおよそ半数が中央へ入厩するという典型的な日高の小牧場。これまでの活躍馬に、83レジェンドテイオーがいる。
(レジェンドテイオーは父ノーザンテースト、母ロイヤルハイブ、母父ロイヤルパレス、22戦5勝。ダービー14着、菊花賞17着。セントライト記念優勝、アルゼンチン共和国杯優勝)
また、一口馬主クラブ、日高ブリーダーズユニオンを構成する22の株主牧場の一つ。
ゴールドシップは、牧場として26年ぶりの牡馬クラシック参戦になる。
牝馬では、昨年、ウッドシップが参戦。
なお、ゴールドシップの小林英一オーナーは、これまでJRAで50頭ほどの馬を持っているが、その半分以上が出口牧場の生産馬で、牧場と深い信頼で結ばれていることがうかがえる。また、小林オーナーは帯広ばんえいでも馬を走らせている。
98ポイントフラッグ F-No[16-h(下総御料:星旗系)]
(太字は重賞勝ち馬)
生産地 日本
血 統 父メジロマックイーン 母パストラリズム 母父ブルラリズム
累代配合
父 メジロマックイーン(異系:パーソロン系:本邦を代表するスピード系ステイヤー)
母父 プルラリズム (ノーザンダンサー系:マイラー、中堅種牡馬)
二代母父 トライバルチーフ(プリンスリーギフト系:早熟、短距離)
三代母父 ラークスパー(ネヴァーセイダイ系:英ダービー馬:本邦種牡馬:種牡馬成績いまいち)
四代母父 ライジングフレーム(シリーン系:中距離:本邦種牡馬、LS3回、総勝利数1379(うちサラブレッド1231)、1958年の年間勝利数176は当時の史上最多記録であり、ノーザンテースト、サンデーサイレンスの出現まで30年以上に渡って保持され続けた)
戦 績 中央15戦1勝
産 駒
04ハニーフラッグ 牝 父フジキセキ 2勝
05ポイントゴールド 牡 父ゴールドアリュール 未勝利
06カントリーフラッグ 牡 父ティンパーカントリー 未勝利
07ミラクルフラッグ 牝 父スパイキュール 1勝
09ゴールドシップ 牡 父ステイゴールド 3勝
(重賞 共同通信杯)
10父フジキセキ 牝
11父ステイゴールド 牡
12父ステイゴールド (予定)
【メモ】
星旗系。星旗は1931年にアメリカから輸入された繁殖牝馬。産駒に、クレオパトラトマス(帝室御賞典)、クモハタ(東京優駿)。
一族に、ハマカゼ(桜花賞)、タカクラヤマ (天皇賞(春))、ハクチカラ(東京優駿、天皇賞・秋、有馬記念)、ニホンピロムーテー(菊花賞)等。
よくぞこの血統をここまで繋げた。
自身は15戦1勝。D級繁殖のレッテルをはりたくなるが、戦績を見てみると、紅梅S、エルフィンS、チューリップ賞がいずれも2着。桜花賞、オークス、エリザベスと参戦。準A級と評価してもよい。重賞勝ち馬の母としての潜在能力は十分といえそう。生産者の期待の一頭ということが分かる。
問題は何故、ステイゴールド×メジロマックイーンはニックスなのかということ。統計上明らかということで済ませてもよいが、その理由を知りたいと思うのが人情。
ステイゴールドの父ディクタスは、アーティスツプルーフ分岐のゲインズボロー系。ゲインズボロ-は英国3冠馬。偉大なるハイペリオン、ソラリオ(セントレジャー)トウヌルソン(本邦LS)の父。これら3系統はいずれも消滅。唯一、フランス熟成血統といえるアーティスツプルーフ系のみが現存している。
だが、トピオ(凱旋門賞:産駒ディアマンテ、シービークイン)、ディクタス(ジャック・ル・マロウ賞:サッカーボーイ、イクノディクタス)、ゲイサン(サンクルー大賞)、サンシー(仏ダービー2着:ハギノトップレディ、キリサンシ―)と、有力後継馬のすべてを日本が輸入してしまった。特にディクタスはフランスに残っていれば確実にサイアーラインを残した馬で、このまま日本で消滅することには、内心忸怩たるものがある。
一方、母父のメジロマックイーンは、トウルビヨン(ヘロド)系で、トウルビヨンはフランスの名馬産家マルセル・ブサックの傑作である。
このフランス由来の二つの異系血統と我が国の超繁栄血統サンデーサイレンス系(サンデーサイレンス自体が南米由来の異系血統でもあるのだが)が日本で何らかの化学反応を起こした結果がこのニックスではないだろうか、という推論。