すみません、GIのないここ2週は連載を休ませていただきました。事後になりまして申し訳ありません。安田記念ではサダムパテックの診断は結果としては失敗に終わりました。これも大変申し訳ないです。今週の宝塚記念はきっちりと結果を残していきたいと思います。
さて、宝塚記念ともなると、あらかた皆有名な馬ばかり。グランプリレースなので当たり前なのですが、皆さんも各馬の特性をしっかり掴んでらっしゃると思われます。自分もここまで来るとある程度各馬の適性を掴めている自信はあるのですが、それでも一応1頭再度見直しておきたいとするならば、クイーンエリザベス2世Cを制して悲願のGIタイトルを奪取したルーラーシップですね。
シャティン競馬場 芝2000m
2:02.38 25.72 - 25.19 - 25.77 - 23.89 - 21.81
下二桁まで、400mごとのラップタイムなので、日本のようにわかりやすく緻密ではないですが、ラスト2Fが最速の競馬、800mで45.6とかなり上り勝負にシフトしていたと思います。これどこが加速ポイントかによって評価も随分と変わってくるのですが、とりあえずレース分析を。
五分のスタートから押して積極的に先行争い。ところが誰も行きたがらないので、ハナに立ってドバイのようなことにならないかという不安もあったが、外から行ってくれたおかげで番手のポケットと絶好位を確保。そのままペースも上がらずに割と団子で、内ポケットでじっと動かずに脚を温存。3角でもペースは上がらず、最内をぴたりと回る。4角で仕掛けると、内にあったわずかなスペースを突いて一気に反応。そのまま先頭に躍り出て直線。直線では序盤からトップスピードに入っていて、とんでもない脚で突き抜けてそのままばてずの圧勝。
もともとルーラーシップとトゥザグローリーというのはGII大将といった感じの馬ではあったと思うんだけど、個人的にはこの2頭は真逆の存在だと思っていた。トゥザグローリーはトップスピードへの切り替えの速さが素晴らしく、またそのトップスピードも一級品。反面スピードが問われる展開になったり、タフな持続力が問われる展開になると脆いところがある。一方のルーラーシップは...。まず有馬記念から見てみたい。
中山芝2500m良
2:36.0 6.8 - 12.0 - 12.4 - 12.1 - 13.1 - 14.4 - 14.3 - 13.0 - 12.0 - 11.9 - 11.4 - 11.3 - 11.3
馬場の割に超スロー、14秒台が刻まれるようなかなりあり得ないほどの展開。そして仕掛けどころも遅く、結局コーナー半ばから。このレベルで中山で3F勝負というかなり力を出し切れなかった馬がいたはずのレース。この馬はどうか。
大外枠から出もそれほど良くなく、最後方からの競馬になってしまう。そこからもう早送りしても良いほど動き無く、3角まで。オルフェーヴルが動いてからの仕掛けとなり、3~4角で大外を回して、窮屈な内の馬とは相対的に押し上げても、先に仕掛けたオルフェーヴルの方がトップスピードに先に乗れていて、手応えで見劣り直線。前がばてないので、こちらもじりじりとしか伸びず。最後までじりじりとした競馬で終わった。まあ、これで上がり33.2なので完全に仕掛けミスですよね。この馬の持ち味はトップスピードではないのは確か。しかしその脚を非常に長く繰り出すことが出来る。
では、その前の有馬記念はどうか。ヴィクトワールピサが向こう正面で捲っての5Fの勝負となった有馬記念。
中山2500m良
2:32.6 6.9 - 11.4 - 12.0 - 12.3 - 12.7 - 13.4 - 13.5 - 12.3 - 11.5 - 12.0 - 11.7 - 11.1 - 11.8
五分のスタートから中団やや後方で進める。1周目のホームストレッチで中団の外までゆったりと押し上げる。向こう正面に入ったところでルーラー自身が少し掛かってしまい、ヴィクトワールの外に押し上げると、ヴィクトワールが仕掛けていった。そこでは動かずに、3角ぐらいで進出。外から押し上げて4角で勝負に出たが、直線では大きくは伸びなかった。
完敗の内容ではあるが、完成度がまだまだ足りていなかったように思われる。このレース自体は本来この馬の持ち味である持続戦になっているが、やはりそれでもL2で11.1とかなりのトップスピードを要求されている分、苦しくなったように感じた。その点ではむしろ、極端な速度を問われずに、外から順々に押し上げていけた、2011年有馬の方が、この馬としてはまだ走りやすかったように思える。
次も敗戦となるが、昨年の宝塚記念だ。これはこれまでの有馬2走とは一転して平均ペースでスピードを問われる展開になっている。勝ち馬アーネストリーが強いパフォーマンスを見せたレースでもあり、ブエナビスタやエイシンフラッシュ、ローズキングダム辺りにも大きく突き放されたこのレース。GIの壁なのか?
阪神芝2200m良
2:10.1R 12.3 - 10.5 - 10.8 - 12.7 - 12.4 - 12.1 - 12.1 - 12.0 - 11.5 - 11.7 - 12.0
レコードも出るはず、少し緩んだが、L6から12秒前後をずっと刻んでL3最速戦。序盤から追走するスピードを問われ、しかも終いのペースアップ、そこからの持久力と高いレベルの総合力を問われたのだから。軽い馬場での総合力勝負と考えればわかりやすい。
スタートでふらついて、かなりバランスを崩して、後方からの競馬に。ナムラクレセントが刻む厳しいラップに、向こう正面で外から押し上げていく競馬。3角でそのまま大外を通さざるを得なくなると、最速地点の3~4角中間地点から、4角にかけて、更にその外へ振られて直線。直線では流石に伸びることなく、上位4頭には離され、なだれ込むだけの5着に終わった。
ただ、このレースはこの馬としてはやはり高速馬場のスピード持続戦になったことが痛かったと思うし、淀みない流れの中で勝負所、それも最速地点で大外から押し上げての内容を考えれば、かなり頑張っているともいえる。エイシンフラッシュやアーネストリーはコースロスなく立ち回っていた。同時に高速馬場になるとスピード面での不安を露呈させたと。
いずれにせよここまでのレースで香港を除けば、敗因としては勝負所での動き出しの反応がやや鈍い点、そしてそれが起因するコースロスの多い競馬、かつ勝負所の最速地点で置かれるといったように、少し器用さに欠ける印象が強かった。
では、勝ってきたレースからいくらか気になるレースを。まず鳴尾記念。この馬にとっては初重賞となったレース。この時はまだ阪神芝外1800mという条件。
阪神芝外1800m良
1:44.9 12.5 - 11.0 - 11.6 - 11.7 - 11.7 - 11.6 - 11.4 - 11.3 - 12.1
五分のスタートから好位の外、じわっと追走して外から押し上げていくような形。阪神1800mにしてはよどみない平均ペースで3角。3~4角で中目を追走、少し鞭で仕掛けられながら好位で直線。序盤でしっかりと追われるが、ここでの伸びは意外と微妙で、むしろリルダヴァルに交わされるかもというような感じだったが、 そこからがしぶとかった。L1の坂で再び差を広げに掛かると、最後はバテ差しで突っ込んできたヒルノダムールの強襲を苦にせずしっかりリードを保っての勝利。
個人的にはこれがこの馬の持ち味だと思っている。トップスピードはそこまでではないが、最後のひと踏ん張りが強い。それだけに、道中勝負所で無理をしないでも良いように、しっかりとしたポジションにつけることが重要なように感じている。
もう一つ、金鯱賞。これはキャプテントゥーレやアーネストリーを大外からぶっこ抜く、視覚的なインパクトが相当なレース。
京都芝内2000m不
2:02.4 12.6 - 11.4 - 12.6 - 12.8 - 12.4 - 12.5 - 11.8 - 11.8 - 11.7 - 12.8
相当に出遅れて離れた最後方からの競馬。そこからすぐに盛り返して、後方集団まで入り込む。2角過ぎではまだ抑えているような感じだったが、3角の手前で徐々に外から動いていく形。3~4角で外目から手ごたえ良く運んで、5馬身差ほど、4番手まで押し上げて直線。序盤はキャプテントゥーレの二の脚に突き放される形になるのだが、L1のバテでグンと伸びてきて、前のキャプテンを楽々とらえての完勝。
ここからも、この馬の良さを引き出すには、とにかく脚を出し切ることが全て。不良馬場を得意としている馬ではあるが、それはなかなかばてないといった持続力があるからでもある。それと、とにかくワンテンポ早い仕掛けが大事。個人的にはどこにつけるかよりも、どこで仕掛けるかのほうが大事だと思っている。仮に前につけたところで、勝負所で反応が悪く遅れてしまえば、後手後手に回る羽目になり、結果として持ち味の末脚の持続力が活かせなくなっては問題。
これらを考えたうえで、再度香港を分析すると、ラップとしてはかなりスロー。加速ラップで内ポケットからすっと最内を反応良く突くという内容はこれまでにない器用さを見せた。これをどこまで額面通り信じていいかはわからないが、少なくとも今回は先行力が高い馬が多いレース。前走のような楽なポジショニングは望めない可能性が高い。しかし、同時にリスポリが引き出した先行力、ウィリアムズなら更にポジション争いで優位に動いてくれるとも思えるので、この辺りはどう転ぶかは正直なところわからない。
今回注目馬診断で分析をした結果、ルーラーシップは「脚を出し切れる競馬が出来れば勝負になる」という、やや抽象的な形を取らせてもらいます。ポテンシャルという点ではかなりのものをもっていますが、前走がまず日本のスピード勝負で出来る保証がないという点。ただしウィリアムズにはもってこいのポテンシャルを出し切れないタイプの馬。不安やリスクはあれど、オルフェーヴルを地力で負かしてもおかしくないだけのポテンシャルは秘めています。
理想を言えば、少し時計が掛かる馬場で、中目の枠が良いでしょう。不良までいってもこの馬としては大歓迎の馬場。あとは、勝負所でどこを通すか、またワンテンポ早く動けるか。この馬の場合は、勝負所でトップスピード負けをするのが一番まずい展開。L1で踏ん張れる馬なので、早い段階で先頭に立つぐらいの競馬が理想。その点でもウィリアムズという騎手はもってこいだと思います。
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