10月13日付報知新聞の「西川賢のオーナーだけが知っている」というコラムにJRAと馬主会との事務折衝の経緯が書かれている。西川氏は中山馬主協会の会長。
内容を簡単に紹介すると、
1.競走事業費が昨年、76億円減額された。
2.JRAは「東日本大震災の影響で、売上に応じて還元する」と言い続けてきた。
3.ところが、今年の売り上げは一昨年とほぼ同水準にまで戻っていなが
ら、JRAが提示した増加額は8億円ほど。
4.全く話にならない。
というもの、ここまではまぁ、いいだろう。
愕然としたのは、その後の主張である。
5.このままでは、個人馬主は消え、クラブ法人と外国人馬主ばかりにな
ってしまう。
6.賞金が下がれば、騎手や調教師、厩務員の意欲が下がってしまう。
7.それで面白い競馬が提供できるか。
8.いずれにしても、競走事業費を一昨年の水準に戻せないようでは、今
後の折衝には応じられない。
まず、5から。
普段大レースをクラブ法人に持っていかれる鬱憤か、クラブ排除の主張を展開しているから、こういう発想が出てくるのだろうが、冷静に考えれば、賞金が下がれば経営的に苦しくなるのは、一般馬主もクラブ会員も同じであって、実際、クラブ馬主の掲示板などでは、これ以上賞金が下がれば一口馬主をやめるという発言も頻繁になされている。
馬主会のこうした発言は、敵の前で内ゲバをやっているようなもので、西川氏のような団塊世代には普通の思考なのかもしれないが、小異を捨てて大同に就くという考えができない者たちを待っているのは敗北の二文字だけだろう。
6はさらに酷い。
大体、人間というものは給料が減ることによって、意欲が減少し、いい加減な仕事をするようになるものかね。
よく賃金値下げを求められた公務員労働組合がこうした主張を展開しているが、外部の一般市民にとっては、公務員というのはそれほど品性下劣な集団なのね、と呆れはしても誰も同情したりはしないものだ。
少なくとも、騎手や調教師、厩務員といった技能を売り物にする職業の者たちがそういう考えをもっていたとしたら、それは、自らの職能に対する自殺行為でしかないだろう。
幸いなことは、こうした主張をしているのが、騎手や調教師、厩務員ではなく、馬主であるということか(まぁ、そのことは彼らが馬主から軽く見られているということの証明ともいえ、騎手や調教師は怒るべきだろう)。
まぁ、個人馬主というのは、ほとんどがお山の大将で、「無理が通れば道理が引っ込む」という日常をおくっているからか、こういうピントのずれた発想が出てくるのだろうが、これでは狡猾な官僚たちに手もなく捻られるのは目に見えている。
ここは、賞金額の減少が我が国の競馬産業の衰退に繋がるというストレートな主張を愚直に粘り強く続けていくしかないだろう。
馬主会にも鋭敏な知性が求められているいうのは、幹部諸兄には失礼に当たるだろうか。