オジュウチョウサンの長山オーナーは有馬記念騎乗を武豊騎手に依頼して返事待ちとされていたが、結果武豊騎手騎乗が決定。この流れからは、武豊騎手が他馬の依頼を断り、引き受けたものと推察される。
他馬というのは、ダービー馬マカヒキ。金子真人オーナーとはディープインパクトなど縁が深い間柄。さらにもう一頭がクリンチャー。前田幸治オーナーは最も縁が深いし、凱旋門賞に挑戦したパートナーでもあった。
これらを蹴ってのオジュウチョウサン選択というのは非常に勇気の要る決断だっただろう。また、武豊騎手が競馬界全体を考えていることの表れではないかと思う。
勝つ可能性からすれば、マカヒキやクリンチャーの方が数段上だということは間違いなく認識しているはず。それは南武特別のレース後のコメントを見ればわかる。「タイムを見ると、まだ一線級とは差を感じますが、伸びしろはある。」これは暗に有馬記念が難しいことを示唆したものだと思う。
和田調教師も、「有馬記念を目指していますが、今後のことはオーナーやジョッキーと相談しながら状態を見て総合的に考えていきます」とトーンダウンしたのは、武豊騎手から意見を受けてのものだったのではないだろうか。
正直、武豊騎手がマカヒキやクリンチャーに跨って勝ったとしても、一般向けにはそこまで大きなニュースにならないだろう。それよりも、何やら変わった馬が有馬記念に出るらしい。それに武豊が乗るらしいぞ、という方がずっと一般的には話題にもニュースにもなるだろう。そこまで武豊騎手は見通していると思う。そういう読みでもなければ引き受けないだろう。
この馬の平場挑戦時に依頼を引き受けたこと自体もそうだが、かつては最弱と話題のハルウララに騎乗したりと、武豊騎手が競馬界の顔として振舞ってくれるケースは多い。
伝説的な実績を残したアスリートが、これほどサービス精神を発揮してくれるケースを私は他に知らない。一競馬ファンとして武豊騎手に最大級の賛辞を送りたい。