実績だけならＰＢが示す通り、本来はキム・ヨナと浅田真央を抜きに予想はできないのだが、トリノでは年齢制限もあって、２人とも冬季五輪には初めての出場となる。

　誰もがご存知の通り、五輪は４年に１度のスポーツの祭典。毎年行われる各選手権とは違い、競輪で言えば年末のグランプリのように、五輪は実質的に１回限りの１発勝負と言っても差し支えない。調整過程も独特なものになるだろうし、会場で味わう雰囲気もまた普段のそれとは全く異なるものだろう。

　当然、誰にとっても実力をそのまま発揮しやすい舞台ではなく、同時に４年に１度きりという競技におけるプレッシャーも半端ではないはず。ならば一度でも五輪を経験していれば、先に強烈な実績でも残さない限り２度目の参加で最初の五輪より力むことはないのではと思う。実力はもちろん必要なのだが、五輪という独特の舞台設定から下馬評通りに収まる可能性は低く、メダル争いは波乱を前提に考えてみたい。

　五輪経験者の立場にアドバンテージがあるという仮定を前提に本命は安藤美姫。2009/2010グランプリファイナルではＳＰでキム・ヨナを上回り１位通過。ＦＳとの総合ではキム・ヨナに後塵を拝したが、２位でその差は２点台。トリノ以降しばらく精彩を欠いていたことを思えば、ここに来てこの得点差ならキム・ヨナを十分に射程圏に入れたと言っても過言ではない。

　トリノは本人にとっておそらく苦くて辛い思い出だろうが、五輪の経験と同じ日本で浅田へ注目が先行しそうな点で、落ち着いて本番へ臨めそうなのも強みに。前回の全日本フィギュアスケート選手権は五輪内定後だけに試走の要素は否定できず、参考外の結果と判断して良いだろう。

　対抗はご当地の後押しに期待込みでＪ・ロシェット。破壊力は感じさせないが、2009年は四大陸選手権と世界選手権で２位に食い込み、度々浅田真央をおさえて上位入賞を果たしている。カナダ代表だけにホームで五輪に参加できることは、何ものにも替え難いメリットとも。トリノでは５位と彼女も五輪を経験済み。舞台がアメリカ大陸とくれば、アジア勢のメダル独占を阻む最先鋒に。

　▲評価は五輪は初めてとなるキム・ヨナと浅田真央で迷ったが、実際３位までの入賞をこれまで外していないキム･ヨナを上位に選択した。キム・ヨナは相手どうこうではなく、もはや自分との闘いという次元に映る。まともなら最も金メダルに近い存在だが、懸念されるのは過熱ぶりが報道されている本国サポーター達の過度の声援。敵がいるとすれば案外身内かもしれない。

　浅田真央は2009年以降やや精彩を欠いているが、2010年は全日本フィギュアスケート選手権、四大陸フィギュアスケート選手権を連覇して久し振りに貫禄を示した。上昇ムードだが最近の３アクセルの成功率然り、キム・ヨナを制して頂点を極めた当時の勢いにはまだ及ばないか。個人的には評価を下げたが、そこは誰もが認める日本のトップスケーター。私の予想をあざ笑うかのごとく、本番では最高の滑りを見せてもらいたい。

02/04 02:32