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【予想】
直前にかなりの雨が予想されていて、馬場状態を把握するまで予想を避けたが、どうも馬場悪化を避けられそうにないので、当初の予想をかなり変更して道悪やポテンシャル、展開を重視した。今回馬場が悪化して、タフな馬場での京都戦ということで、まずトップスピードは要求されないレースになるだろう。ポジションの差が非常に重要になってくると思うし、持続力がないと最後まで差しこめない厳しい競馬になると思われる。レジェンドブルーの単騎逃げにヴィルシーナ、スマートシルエット、ホエールキャプチャらがどこまでという形だが、いずれもスローペースでゆったり運べた方が良い馬が多く、ヴィルシーナはオークスの消耗戦で実績があるとはいえ、今回は道悪も絡んでくるし積極的に逃げ馬を追走する条件にはないと思う。というわけでレジェンドブルーの単騎逃げ、2番手以降はスローだが仕掛け所は早くなると予想。波乱の結果に期待する形。
◎レジェンドブルーは見解の段階でも注目はしていたが、脚の遅さがネックで、京都でパンパンの良馬場だと苦しいと思っていたのだが、ここにきて恵みの雨が訪れた。クイーンSでもハナを切ってトップスピード負けしているが、札幌記念では道中変な競馬になりながらもジリジリと自分の脚は使っての6着。そして長距離の丹頂Sでは12.3 - 11.7 - 12.0 - 11.9 - 12.1のラップ推移でハナを切ってしぶとく粘っての4着。軽ハンデではあったが、しぶとさを前面に出してポテンシャルは見せた。今回は確実に単騎逃げの展開が予想できるし、但馬Sでスローから12.7 - 12.5 - 11.7 - 11.4 - 12.4のラップ推移で二の脚を活かして再加速しての勝利。馬場もかなりタフな状態だったが、これで持ち味を活かせていて、ステイゴールド産駒らしく確実に道悪はプラスに働きそう。とにかく重要なのはキレ負けしないだけの位置につけること、そしてトップスピード不足を補える舞台かどうか。今回はどちらも条件が揃ったと言えるし、レースレベル自体も上位以外はかなり低い今年のエリザベス女王杯。波乱の主役になるだけの素質は十分にあるので、後はとにかく腹を括って大逃げに出てほしい。
〇マイネイサベルは道悪巧者。距離もあるし前走で溜めて結果を出したので、今回も中団~後方ぐらいで壁を作りながらの競馬になりそう。想定は大逃げで2~3番手が早めに仕掛けざるを得ない展開なので、じっと待っている差し馬が京都の外回り合流地点で脚を使わず押し上げてこれる良い条件だと思っている。前走府中牝馬Sで勝ったにもかかわらず低評価なので、自ら動く必要はないし、前の壁が進んでいってくれるのを見ながら進路を選べるというのも、内を立ち回れるというのも良い。中山牝馬Sでは重馬場で先行してしぶとく4着に粘っているし、福島記念では強豪牡馬相手に最後に突っ込んできた。動かなくていいしL1の落ち込みでこそ最大の威力を発揮するトップスピード持続型タイプ。距離は正直少し不安はあるが、これだけ条件が揃ったなら目をつぶって狙いたい。
△オールザットジャズは追い切りで一変が確実に見られたというのと、中山牝馬Sで重馬場の中、後方から凄い脚を繰り出してあわやのところまで食い込んでいるところからも、道悪で下り坂からじわっと加速してスピードに乗れる舞台というのは良さそうで、トップスピードがそこまで問われない今の舞台で持続力を活かせれば面白い存在なのは間違いない。クイーンSの内容は一息だったのは確かだが、前走は完全に展開不向きだし、叩いて良化、この条件なら押さえておきたい。
ヴィルシーナは良馬場ならオークスのパフォーマンスからもある程度信頼できた1頭だとは思うのだが、まず道悪になって目標になるという条件はかなり苦しい。道悪適性は未知数ではあるが、一本かぶりの人気の中で、3角の下りで自ら動かなければならない状況、しかも雨でかなりの持続力を要する舞台に替わってしまったら展開、条件的にはちょっと苦しい印象は否めない。これを1倍台で狙うには難しいかな。
ホエールキャプチャは道悪自体は気にならないけど、これも使える脚が一瞬しかないから目標にされると苦しいだろうし、今の馬場でロンスパ戦、早めに動かなければいけない立場というのもヴィルシーナ同様苦しい。
フミノイマージンはスピードに乗ってというタイプなので、今の道悪は必ずしも歓迎材料ではないだろうということと、やはり外から押し上げていく展開が予想されるので、前を見ながら勝ちに行く競馬をして、今の馬場で甘くなることは想定しておきたい。
【展望】
今年は牝馬三冠馬が誕生したが、残念ながらエリザベス女王杯には出ない。3歳勢不動のNo.2が代わりに参戦、これを迎え撃つ古馬陣営で牝馬界No.2決定戦という構図だろう。桜、樫、秋華と全てジェンティルドンナの2着に屈した悲運の名牝を中心に、ようやくGIに手が届いた4歳の実力馬、混合GIIで牡馬を撃破した札幌記念馬が上位だが、古馬の実力馬が前哨戦で負けていて、脇役勢にもつけ入る隙は十分にありそうだ。悲願か意地か、はたまた波乱か、数々のドラマを産み出してきた京都2200m外回りコースで今年はどんなレースが展開されるのか。展望の前半は当然、このレースの中心を担う馬たち。後半は波乱を演出しそうな穴馬たちを中心に進めていきたい。
中心は牝馬クラシック路線で全てジェンティルドンナの後塵を拝した無冠の女王ヴィルシーナ。桜花賞ではアイムユアーズとの叩き合いで少しばてたところをジェンティルドンナに差され、オークスでは未曽有のハイペースを中団から抜け出して粘っていたがジェンティルドンナに千切られ、秋華賞では主導権を握ろうとしたところに小牧に動かされて早めに目標になってしまいハナだけ差されてしまった。桜花賞、オークスはともかく、秋華賞はかなり運に見放された形。スローに落としすぎて小牧が捲ってしまい、これに合せて各馬ペースアップ。11.6 - 11.4 - 11.3 - 11.5 - 12.4と結果的にジェンティルドンナの得意なトップスピード持続戦に対して、ポジションの差を作れないまま直線に向いてしまった。一度は前に出られたが、最後は意外にもかなり抵抗していて、ハナ差まで差し返しての2着。ローズSはジェンティルより後ろで瞬発力勝負では当然苦しいしこれは度外視していい。小頭数の内枠で、番手を確保したかったがスローになって雁行状態になり窮屈になるのを避けて一列下げただけ。本番で逃げるための布石のために、逃げたくても逃げられなかったとみる方が良いだろう。オークスではハイペースを中団で競馬して、距離、ペースにしっかり対応しての2着だが、あの展開でジェンティルドンナに千切られてしまった。だが、12.4 - 12.3 - 12.2 - 12.1 - 11.8 - 11.8のラップ推移で最後までばてない相手のポテンシャルを褒めるべきだろう。桜花賞では割とタフな馬場で12.2 - 12.1 - 11.0 - 12.2とL2最速、L1バテ戦。要所でしっかりと脚を使って強敵のアイムユアーズとの叩き合い。L1のバテでジェンティルドンナに交わされはしたが、しっかりとアイムユアーズを差し切っての2着。
まずはジェンティルドンナとの比較だろう。個人的にジェンティルドンナは中長距離、2400m以上のトップスピード持続戦でこその馬で、ヴィルシーナはマイル~中距離にベストがある基礎スピードが高いタイプだと思っている。秋華賞でジェンティルドンナと差が出なかったことからも、基礎スピードを活かしてポジションの差を作りたいタイプ。個人的にごく平均的な展開になっていたならば、三冠で確実に負けていたのはタフな馬場で持続力が必要な桜花賞だけだと思っている。オークスはスローの動き出し勝負で、秋華賞は序盤のスピードで優位に立てていたはずなので、3冠全て負けたのはポテンシャルの差もあるが、ヴィルシーナにとってはオークス、秋華賞で共に不利な展開になってしまったことが大きいと思っている。ジェンティルドンナは動き出しにやや難があるタイプなのに対し、ヴィルシーナはローズSでワンテンポ遅れてもしっかり抜け出してこれるギアチェンジ能力、ペースが上がっても先行できる基礎スピード、オークスで見せたジェンティルドンナには劣るがポテンシャルの高さ、何より最速地点ではジェンティルドンナにも見劣らないトップスピードの高さ、全てがかなり高いレベルでバランスを取れている総合力が非常に高いタイプ。ハイレベルのこの世代で8戦して全て複勝圏内にいるのがその証拠だろう。
それを踏まえたうえで、今回は京都の2200m外回り。外回りだがある程度ペースが上がりやすく、基礎スピードが問われるので、その点ではこの馬の良さは出しやすい。だが、同時に4F勝負で平均的な競馬になりやすいというのもあり、かつ勝負所に下り坂が有る。動き出しの良さはここでは活きてこない、まともな展開なら比較的ポテンシャル勝負になりやすい舞台ではある。総合力も高いし、ポテンシャルも高いが、必ずしもベストコースとは言えないか。ただし、ポジションの差が生まれやすいコースでもあるので、この馬の良さであるポジショニングは武器になる。有力差し馬と直線までに差がなければ勝ち切れるかどうかは微妙な所なので、しっかりと位置取りを確保したいところ。どの展開でも強いが、これと言った強力な武器があるわけでもないので、ハッキリ言って相手関係が全てと言えるだろう。適性的に大きな不安材料はない。とにかくL4からが勝負になりがちなので、後続馬に差を詰められて直線という形は避けたいところ。
相手筆頭には古馬勢の実力馬フミノイマージン。前走の京都大賞典ではギュスターヴクライやオウケンブルースリが早めに動く展開、これに合せて外から追走していく形で直線を向いたが、相手が1枚上だった。12.5 - 12.1 - 11.4 - 11.6 - 12.3のラップ推移で最速地点で中から外を回して脚を使う形。直線序盤で外のメイショウカンパクに併せて伸びてくるが、L1でしぶとさ負けした形だろう。相手が持続戦向きの馬だったし、強い競馬をしたとはいえギュスターヴに迫った4着は評価できる内容だ。札幌記念では強敵のダークシャドウやヒルノダムールを見事に撃破。12.3 - 11.7 - 12.0 - 11.4 - 11.8のラップ推移でいつもより早めに外から仕掛け、最速地点でしっかり伸びて最後までしぶとく粘って勝ち切った。もともとポテンシャルはかなり秘めていた馬で、負けパターンは脚を出し切れずに届かないという形が多かった。2走前大きく崩れたクイーンSでは11.9 - 11.6 - 11.7 - 11.8のラップ推移で3角から進路がなく内でまごまご。直線でも捌けずにそのままという形で脚を出し切れなかった。昨年のエリザベス女王杯でも12.8 - 11.8 - 11.8 - 12.9 - 12.4のラップ推移、シンメイフジが飛ばす形で当てにはならないが、ポジションが悪すぎてジリジリ伸びてきても届かなかった形。札幌記念、前走京都大賞典ではこの辺りを意識してかしっかりと早めに動き出す競馬を心掛けているようで、それで安定して脚を出せるようになったのは大きい。また、地味に阪神牝馬Sでは阪神1400mという高い基礎スピードの持続力が問われた条件での3着に来ていて、これまで時計勝負にも対応しているように、追走に脚を使わされてダメになるタイプではないというのも適性的には良いだろう。
今回は京都芝2200m外という条件。京都2400mに比べると比較的中距離寄りのスピードが問われるケースが多いが、この馬自身は追走で脚を使わされても大丈夫なタイプなので、これは問題ないだろう。ただし、序盤のポジショニングが上手い馬では決してないので、やはりここがポイントとなってきそうだ。ペースがある程度早い中でもポジションを押し上げていけるだけのポテンシャルは持っているし、ポテンシャルはヴィルシーナに勝るとも劣らないものを持っている。ただ、総合力ではヴィルシーナの方に分があると思うので、とにかく勝負どころまでにしっかりとヴィルシーナとの差を詰めておきたい。仮に緩むようなことがあればそこでしっかりと脚を使わずに差を詰めておきたいし、緩まないこともありうるので、序盤にできるだけ良いポジションが欲しい。ただ、頑張っても後方からになると思うので、3角の上り坂の前までにしっかりとポジションを上げていく競馬が必要だろう。トップスピードも持続力も良いものがあるので、しっかりとそれを出し切ってやれれば当然好勝負すべき馬。そこに尽きるだろう。
3番手にはヴィクトリアマイルで悲願のGIタイトル奪取に成功したホエールキャプチャ。GIキャプチャーまでは少々時間が掛かったが、4歳世代では総合力No.1の存在だったことは間違いない。桜花賞では11.8 - 11.3 - 12.0 - 12.1のラップ推移、外から王道競馬で後方から鋭く伸びてきたが、内をうまく立ち回ったマルセリーナの出し抜きにあって2着惜敗。オークスでは後方から競馬しすぎて12.2 - 12.5 - 11.8 - 11.5 - 12.0のラップ推移で脚を余しての3着惜敗。秋華賞では12.2 - 11.9 - 12.1 - 11.7 - 12.0で平均ペース、勝負どころで外をまわした分、伸びあぐねて3着完敗。それでも内有利の馬場状態、展開で内から出し抜けを食らったのが大きいし、相手もポテンシャル型のアヴェンチュラが内でロスなく立ち回ってのものだったから、完敗だったとはいえ大きく見劣る競馬ではない。昨年のエリ女では積極的な競馬で12.8 - 11.8 - 11.8 - 12.9 - 12.4のラップ推移、単騎の番手から抜け出しを図って一瞬沸かせたが、結局L1で伸びを欠いて4着に終わった。今年に入って勝ち切ったヴィクトリアマイルでは、番手の内ポケットで競馬、11.8 - 11.5 - 11.2 - 11.5と緩んで再加速する流れの中で、内ポケットで後手を踏みやすい形になったにもかかわらず、置いていかれずに最速地点まで馬なりでついていけてしまうほどに素晴らしい反応でドナウブルーを出し抜き退けた。府中牝馬Sでは休み明けがあまり得意ではないとはいえ大きく崩れてしまったが、手応えほどに伸びなかったのは反応が良いタイプなので加速に追う必要がないだけで、既にトップスピードには入っていたというのと、11.8 - 11.3 - 11.2 - 11.5のラップ推移で速い地点で外から押し上げていった分もある。それでもあまりに伸びなかったという点は不安材料であることに変わりはない。
この馬の適性は、とにかくギアチェンジ能力とトップスピードの高さ。基礎スピードもそれなりにあるし、ノリになってからはしっかり先行できるようになったのはプラス材料。ただし、反面で器用さはあるがポテンシャルでは少々見劣るケースがあり、今年の宝塚記念や昨年のエリ女、秋華賞でもそうで、ペースがある程度上がって地力戦になった時に甘さを露呈することが多い。オークスも突き詰めればポテンシャルが高ければL1が12.0なので差し切れても良い。トップスピード、ギアチェンジの能力の高さで早めに抜け出すことが多く、イメージとしてはマイネイサベルと真逆の印象。要所での動き出しが良いタイプなので、出来ればレース展開は緩急があった上で、トップスピードの速さを求められる展開が望ましいだろう。長くいい脚を使えるタイプではないように感じる。その点でL4からの勝負になりやすい京都2200mという舞台は決してベストとは言えないだろう。それでも昨年ある程度厳しい競馬になった中で、4着完敗とはいえ強敵相手に格好をつける競馬はできているし、ベストではないにせよ、悪い条件ではないはず。ただ、今回はやはり前走の負け方、そして宝塚記念での大惨敗と、昨年に比べて力を発揮できる状態かどうかが難しいところにある。状態さえしっかりしていれば、ペースが少し緩んだ時に、内の番手~好位ポケットから一瞬の脚を活かして内から出し抜き粘り込が狙える馬。器用さはかなりのものがあるので、緩いペースでヴィルシーナと差のないポジションならば。後は状態。
4番手には府中牝馬Sで差し切り開眼マイネイサベル。今年はある程度の位置から競馬をしていたが、持ち味のトップスピード持続力が活かせずに中途半端な競馬になることもしばしば。関屋記念は好位を取って勝負どころで窮屈になって出し抜かれたまま詰められずの4着。11.7 - 11.1 - 10.4 - 11.3のラップ推移で最後まで大きくばてない流れ。ここですっと加速しなければいけないところで置かれてしまったのが痛かった。新潟記念はペース自体は緩かったが、それでも3番手から全くいいところなく終わった。勝ち切った府中牝馬Sでは11.8 - 11.3 - 11.2 - 11.5のラップ推移で4角外目からしっかりとエンジンに点火させた状態で直線を向いた。その分、最初から良い脚を使えたし、この馬の持ち味であるトップスピードの持続力を出し切って最後まで良い脚を持続させることができたのが勝因だろう。過去ローズSでもクイーンCでもホエールキャプチャが抜け出した後のL1の落ち込みで伸びてきている馬で、本質的にトップスピードの持続力勝負向きなのは間違いない。序盤に脚を溜めて、ワンテンポ早く動き出すことで持ち味を活かす形が良いだろう。新潟2歳SでもL1落ち込む競馬で勝ち切っていて、後はなかなか勝ちに結びつかないという所からも間違いない。
問題はこの馬の場合、ペースが上がると持ち味のトップスピード持続力を活かせない傾向にある点。気になるのはやはり秋華賞の大惨敗。平均ペースで後方からの競馬。終始外を回されたとは言っても、流石に勝ち馬から2秒も離されてはポテンシャルで差があったと言わざるを得ない。新潟で行われた福島記念では外回り2000mで重馬場。U字コースということもあってトップスピード勝負でL1伸びてきたが、やはり序盤から平均的なスピードを求められた時に大きな課題を残していると言える。恐らくU字の1800mがベスト条件で、1周コースで追走に脚を使わされて良いタイプではないだろう。その点で京都芝外2200mという舞台は歓迎できる材料ではなさそう。オークスで一応こなせているとはいえ、低レベル世代でマイラーのマルセリーナですら4着にきているレースで参考にならない。これやホエールキャプチャにも負けていてはちょっと苦しい感じは否めないが。いっそ腹を括って最後方ぐらいから展開次第の競馬に徹した方が良いかもしれない。普通に勝ちに行く競馬になると2000mがギリギリだと思う。
前半最後は府中牝馬S2着、動き出しの良さは牝馬トップクラスの実力馬スマートシルエット。前走府中牝馬Sでは逃げ馬を見ながら番手で進む、この馬らしい最高の形で競馬を進めた。11.8 - 11.3 - 11.2 - 11.5のラップ推移で、比較的じわっとした加速戦ではあるのだが、馬なりのままこのラップについていき、直線後半で楽に抜け出してきた。最後はトップスピード持続力でマイネイサベルに屈した形だが、11.8-11.3とあまり極端なギアチェンジが問われなかった分、この馬の良さが出し切れなかった感じはある。この馬は新潟記念で見せたギアチェンジ能力の高さが武器。11.7 - 10.9 - 10.3 - 11.9のラップ推移で、早めに出し抜いてしまうトップスピードとそこまで馬なりで行けるギアチェンジ能力の高さが仇となった形。L1で失速したところに各馬が殺到して差のない6着という悲しい結果になった。かなり過敏なほどに反応が良い馬で、逃げ馬が早々につぶれてしまうと目標になって早仕掛けの結果、L1で差されるケースが多い。手応えの良さに騙されて仕掛けをワンテンポ早くしてしまうのが敗因だろう。勝ち切ったNST賞では強敵スピリタスが迫ってきたが退けた。この時が12.7 - 11.9 - 10.9 - 10.7 - 11.7のラップ推移。これも早めに出し抜いて押し切った形だが、開催序盤の馬場にも恵まれた。こういったように、最大の武器はギアチェンジ能力の高さ。これとトップスピードの質が優秀で、それを活かせる序盤のポジショニング能力の3拍子は揃っている。
ただし、基本的にスロー専用の馬で、タフな馬場で平均ペースのタフな競馬だったマーメイドSではこの馬の良さは微塵も出ずに大惨敗。阪神1800mの夕月特別でもアグネスワルツが飛ばす平均的な競馬に11.8 - 11.0 - 11.6 - 12.6とL3最速のポテンシャル出し切り戦では5着と完敗している。また、京都1800mパールSではスローペースにもかかわらず、12.5 - 11.7 - 11.2 - 11.0 - 11.4のラップ推移で最後に伸びを欠いている。序盤はそれなりに良い脚を使ったがL1で甘くなって伸びきれず。これはトップスピード持続力もそんなにないということと、もう一つの持ち味であるギアチェンジ能力が、京都の下り坂で相殺されたことも大きいように感じる。それを踏まえたうえで、今回のエリザベス女王杯のコースを考えると、序盤から平均的なスピードを要求されつつ、L4の下り坂からのロングスパート戦という形。この馬の特徴を考えると、極めて条件が良くないコースだろう。京都大得意の岩田が、コースロスなく運んでどこまで…というところ。一瞬のトップスピードもかなりいいものがあるので、上手くスローに持ち込んで、直線で出し抜くというような競馬ができれば良いが、少なくとも去年のような展開になると苦しくなるのは間違いないだろう。ポテンシャル型ではなく、ギアチェンジやトップスピードの質で勝負するタイプなので。
前半では有力馬、実績馬を中心に細かい視点からの展望をお届けしました。後半は、玉石混交の脇役勢から上位陣を崩していきそうな穴馬をピックアップしていきたいと思います。
穴馬の中で一番気になっているのがアイルランドTで強豪相手にしっかり勝ちきったアカンサス。東京2000mにしては平均的な競馬となり、11.9 - 11.9 - 11.3 - 11.5 - 11.9のラップ推移でL3最速戦と脚を出し切る競馬となっていたが、ここでそういう競馬に強い強敵リルダヴァルをきっちり捕えて勝ちきったという点は非常に評価できる。また、3着馬がミッキーパンプキン、4着馬もセイクリッドバレーといった重賞勝ち馬相手。平均的なスピードが問われたうえで、そこから脚を出し切る競馬でL1しぶとく伸びてしっかり差し切った。もとからポテンシャルタイプで平均ペースとなったアヴェンチュラが勝った秋華賞でも4着に入ったり、一貫ペースの初富士Sで強敵ケニアブラックを撃破したり、ポテンシャルを出し切れるかどうかがポイントで展開次第の面はある。2走前の秋風Sでは12.2 - 11.9 - 11.1 - 11.2の2F勝負で緩いところでポジションを下げてはどうしようもない。自分から良い位置につけるタイプでもないので、ある程度ペースが早く、緩急がない方が良いだろう。また、そういった展開のマーメイドSで力負けしているのだが、この馬は道悪の中山牝馬Sでもそうだが、タフな馬場を得意としていない印象なので、あまり気にする必要はないだろう。脚を出し切る競馬ならば、まだ底を見せていないだけに、上位は強敵でもポテンシャルタイプが少ないここなら十分圏内以上に加わってこれるとみる。内枠でも引いてうまく嵌れば面白い1頭だろう。
マーメイドS2着のクリスマスキャロルも警戒すべき1頭。マーメイドSではタフな馬場で平均的な競馬。ポテンシャルの高さを要求される舞台となったが、12.0 - 11.7 - 12.0 - 12.1 - 12.4のラップ推移で最後方からしぶとく伸びを見せて2着の内容。タフな馬場で結果を出してきた形だが、この馬自身高速馬場でも問題なく脚を伸ばしてきている。御室特別では12.9 - 11.9 - 11.3 - 10.9 - 11.1と完全なトップスピード勝負になっているのだが、3列目から3~4角で2列目に押し上げ、出口で外に出すと最速地点の直線序盤で一気に先頭に。そのまま抜け出し迫るアマファソンを寄せ付けずに完勝の内容。トップスピードはなかなかいいものを持っている。中山1800mの野島崎特別でも11.7 - 11.7 - 11.7 - 11.7 - 11.9のラップ推移でしっかり追走、直線抜け出したところに強敵ラブフールの強襲を受けて差された。準OPを飛ばして重賞で好走したため、レースレベルが測りにくいがパフォーマンスはなかなか高く、ポテンシャルも底を見せていない。府中牝馬Sでは後方から最内を突いたが11.8 - 11.3 - 11.2 - 11.5のラップ推移、L1できっちり追われない中で、ジリジリとは伸びていたがポジションの差、仕掛けの差もあって惨敗。ポテンシャルタイプだけに内で仕掛け遅れ、ポジション後方では厳しかったし休み明けなのでそこまで気にする必要はないだろう。ポテンシャル勝負向きの馬なのは確かで、京都の下り坂加速戦も合っているように感じる。ここ2走は最後方に近い形だが、もともとはそれなりの位置で競馬ができるタイプの馬。これもある程度内枠の方が良いだろう。
昨年のエリザベス女王杯で5着と健闘しているレインボーダリアも再度圏内。府中牝馬Sではいつもより後方からの競馬になってしまったが、11.8 - 11.3 - 11.2 - 11.5のラップ推移で4角で押し上げしっかり加速して直線に向けたのが大きかった。それでも直線序盤は明らかにトップスピード負けしていて、伸びてきたのは後半。外からジリジリと伸びて3列目から抜け出し4着を何とか確保した形。敗因は1800mの外枠でポジションが悪くなったことだろう。出自体は悪くなかったので、内枠ならばもう少しいい位置につけたはず。その点でも休み明けで前哨戦としては実に不気味な負け方だったと言える。クイーンSでは11.9 - 11.6 - 11.7 - 11.8のラップ推移で終始外から追走していく形。ペースアップした3~4角でも大外を回しているが、コーナーが緩い札幌で終始外を回すというのはロスしかない。それでもL1までジリジリとばてずにポジションをキープしての4着は評価できる内容。トップスピードに関しては少し足りないものの、良い持続力を持っているのと、それなりの位置で競馬ができるというのが強み。昨年のエリザベス女王杯では割と平均ペースで12.8 - 11.8 - 11.8 - 12.9 - 12.4のラップ推移、中団からしぶとく伸びてはきたが、最内をロスなく立ち回れたし、最後はホエールキャプチャに迫るとまではいかなかった。この辺りからも、上位陣とやれるかどうかとまでは正直未知数なところもある。今年も取り立てて高いパフォーマンスがあったわけではなく、平均ペース気味では上位と少し差があるので、昨年同様完璧に運んでどこまでという印象だが。
福島牝馬Sを制したオールザットジャズだが、それ以降は不振。福島牝馬Sでは12.4 - 12.3 - 11.5 - 11.7のラップ推移。前半はハイペースだったが中盤少し緩んで再加速戦という形。この前中盤をフラットに無理なく進めて、前が減速して無理せずポジションアップし、そのまま2F戦に向かえたということを考えれば展開的には恵まれた勝利だったと言える。VMではスローで動き出しも問われたし、ポジションも悪く下げてほぼ最後方で直線ではどんな馬でも勝てないだろうし、この惨敗自体は気にしなくても良いが、11.9 - 11.6 - 11.7 - 11.8で4F勝負となったクイーンSでは加速してからしっかり最内をキープできたし全く詰まらずに最短距離を通りながらも伸び負けしている。完全に力負けの印象で、休み明けを考えてもちょっと上位とは小さくない差があるように感じた。前走は叩き2走目、ポジションも悪かったしなだれ込んだだけの内容ではあるが、特段目立つものでもなかった。昨年のエリ女はポジションが悪すぎて参考外ではあるが、現状ちょっとポテンシャルで見劣る部分が多いし、今回他にも魅力的な馬が多数いる中で、個人的には食指は動かない。
マーメイドS3着馬メルヴェイユドールもポテンシャルは不気味。タフな馬場の平均ペースで12.0 - 11.7 - 12.0 - 12.1 - 12.4のラップ推移、直線で外からしぶとく伸びてきたが、最後はクリスマスキャロルに差された形。ハンデ50kgはクリスマスキャロルと同斤ではあるし、ほぼ同等の評価で良いとは思う。これだけ見れば、そこそこやれても良い感じはするが、反面でそれ以降のパフォーマンスがかなり落ちてしまっている点が不満。春はここに出てくるスマートシルエットやレインボーダリア辺りに府中Sでもいい勝負ができていたのだが、秋以降は釜山SもムーンライトHでも準OPでいずれも不満が残る内容。前走は府中牝馬S、ほぼ最後方では苦しいし仕方ないが、恐らく出来落ちの面があると思われる。府中Sでは12.5 - 12.4 - 11.8 - 11.4 - 11.9のラップ推移、ヤマニンエルブが飛ばす形ではあるが、恐らく仕掛けは早い展開だと思われる。ここで最後までジリジリジリジリ伸びてきて最後にレインボーダリアを捕えているように、まともならばトップスピードの持続力が高いタイプ。反応が良い馬ではないので京都の下り坂も合いそうだし、平均的な競馬になってもマーメイドSや壇ノ浦特別のように、馬場を問わず好走している実績はある。正直つかみどころのない馬ではあるのだが、ポテンシャル自体は脇役勢の中でも上位のものがあるだけに。前走後短期放牧に出されているようで、やはり直前の追い切りでしっかりと判断したいところ。上昇気配をはっきり見せれば穴馬として不気味な存在だ。
クリストフ・ルメールを擁して果敢な挑戦ラシンティランテ。ルメール、タキオン、エリ女と言えば、イメージ的にはやはりリトルアマポーラの先行押し切り。この馬は一応2走前に先行できてはいるが、基本的には中団ぐらいで競馬をしてきた馬。その点で少々注目したい馬ではある。が、前走堀川特別は牝馬限定戦で12.1 - 11.3 - 11.2 - 11.4と3Fのトップスピード勝負。坂の下りで上手く加速して直線に向かえていたが、それにしても良いトップスピードの持続力を見せた。ただ、序盤があまりにスローで時計も遅く、基礎スピードが問われる今回の舞台ではあまり参考にならない。夕月特別でもスローで番手から、12.0 - 11.5 - 10.7 - 12.2の競馬で完敗。休み明けもあったが3番手、前にスペースを置いて最内を楽に追走、序盤でしっかり伸びを見せるもL1で甘くなった。1400mになるがポテンシャル勝負になりやすいフィリーズレビューで後方からジリジリとしか伸びずに6着完敗は個人的に不満。とはいえ、タフな馬場だったしこの馬の傾向的にも高速馬場向きなのは確かなので、あまり参考にしない方が良いかもしれない。総合的に考えると、やはりここで戦えるほどの武器は今のところ見せていないように感じるが。ルメールマジックで番手ぐらいから積極的な競馬で運んでどこまでという印象。
単騎逃げ確定的のレジェンドブルー。スマートシルエットが番手を好む馬なので、ヴィルシーナが積極的に主張しない限りはこの馬がハナを切れる公算が高い。トップスピードが全然足りない馬なので、当然勝負に行くならば序盤からリードを広げて直線までにいかにセーフティリードを作るかというところ。丹頂Sでは前半飛ばし、中盤で13秒台を刻んで中弛み、息を入れてから12.3 - 11.7 - 12.0 - 11.9 - 12.1のラップ推移であわやの場面を作った。但馬Sでもスローで展開が向いたとはいえ12.5 - 11.7 - 11.4 - 12.4のラップ推移でメルヴェイユドールは問題としなかった。ただ、如何せん脚が遅いので、高速馬場の京都だと、スローで動き出して出し抜くという競馬は、その筋のスペシャリストであるスマートシルエットが番手で構える以上物理的に無理だろう。となると後はとばしてどこまでという程度。京都外回りによくありがちな行った馬が粘りきるということも有り得なくはない。多少緩めても問題ないタイプなのは前走で証明しているので、序盤飛ばすだけ飛ばして、大差を作って感覚を狂わせてから少し息を入れるというような競馬ができれば面白い。いずれにせよ、オープン級の持久力は持ち合わせている馬なので、全くのノーマークになりそうならば、番手があまり追いかけない岩田、内田というところからも、大逃げの展開になる可能性は秘めている。普通に札幌記念でもそれなりにばてない競馬が出来ている馬。侮るとかなり危険。単騎大逃げが嵌る可能性まで考えておこう。
オークス馬エリンコートにも触れておきたい。正直現状を見る限り苦しいのは間違いない。オークスは位置取りと仕掛け、それにメンツにかなり恵まれた勝利だったことは、その後の上位馬の結果から明らか。1~2着はポジションと距離適性、3~6着辺りはマイラーだが何とか実力で差してきたという感じの馬。この馬の場合は致命的に脚が遅く、ジリジリとしか伸びない。その点では京都の外回り2200mはまだ可能性を秘めているともいえる。それでも府中牝馬Sでどうにもならないような大惨敗を喫してしまっていて、いくら4F勝負のクイーンSで復調の目途を立てたとは言っても、ここで買えるほどのパフォーマンスではない。クラシックホースとして頑張ってほしいが、現実的に上位進出となると、かなり積極的に運んで脚の遅さをカバーするしかない。いっその事ハナを切ってしまえばとも思うが、テンが遅い馬だし。これでダメなら一度ステイヤーズS辺りに出てみた方が良いかも。
前走1000万下とはいえ圧勝してきているピクシープリンセス。前走はややスローから12.3 - 11.9 - 11.2 - 11.8 - 11.9のラップ推移で直線突き抜ける競馬。相手が終わったリベルタスやエーシングングンクラスだし、圧勝はしたがラップ推移的にも後半落としてはいるので、見た目ほどのインパクトはないかなという印象。加えて、これまで小頭数なので分かりにくいが、序盤のスピードは足りない馬で、距離短縮で基礎スピードも必要な京都芝2200mという条件には不安もあるだろう。有松特別でスローから12.5 - 11.9 - 11.3 - 12.5のラップ推移、バテ差し戦でラニカイツヨシに千切られているし、伸び悩んでいるグッドバニヤンにも完敗。高速馬場が得意な可能性は高いし、中京が丸々当てになるかは分からないが、不安材料がある中で、パフォーマンス的にもそこまででもないのにそれなりに人気しそうというのはちょっと狙い辛い。ポテンシャルは前走を見る限り秘めてはいるが、序盤のスピードが足りないのは間違いないので、そこをデムーロがどう乗るかだろう。
最後に1000万勝ちの身で果敢に挑戦のマイネオーチャード。前走は新潟2000にしては早いペースで中弛みはあったが12.5 - 11.5 - 11.0 - 12.2とL1脚を出し切る競馬で勝ち切った。地味に3着メイショウカドマツだったりそこそこのメンツだったことを考えれば評価できる一戦。これまでのレースの内容からも、負けパターンは届かないケースが多く、美作特別でも12.1 - 11.5 - 11.2 - 11.4のラップ推移で最内、2列目のポケットの位置となり、スムーズに加速ができない流れの中で、進路を確保してからはグンと伸びて逃げ馬を捕えに掛かったが出し抜かれた分、届かなかった形。阿賀野特別ではコーナーが最速の11.4 - 11.2 - 11.1 - 11.9という流れ。内目を通して直線追われたがここで少し離される形。L1ではジリジリと差を詰めてきていたが、ポジションの差も大きかった。京橋特別では12.6 - 11.9 - 11.8 - 11.6 - 11.8 - 12.3のラップ推移でサトノパンサーには差されたが、ムスカテールはしっかり捕えているし、同じ1000万下勝ち馬なら混合戦で強敵相手に善戦できているこの馬の方が不気味だろう。
http://blog.livedoor.jp/catassan/ 11/11 13:20
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