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【予想】
展開面では意外とこれと言った逃げ馬がいないのだが、マイネルエテルネルが大外に入ったことによって、エーシントップが押し出されてのハナという可能性がより高くなった印象。エーシンは前走スローのギアチェンジでも結果を出しているので、この馬の出方次第になる可能性が高いが、少し緩めてくる可能性がある。2列目もそういったタイプのラブリーデイやネオウィズダムあたりだと思うので、ここが突かなければスローもありうる。その点で、緩みにも対応できる馬を選びたい。特に今の中山はジョッキーもまだ適性ペースが掴めていない印象で、ラップが良く緩んでいるし、この辺に気を付けていきたい。
◎コディーノは展開を考えた上で本命に押し上げた形。結局ひねりの無い本命になってしまったが、エーシントップは距離の加減で大きく飛ばしていくとは限らない、かといってここで厳しいラップで刻む馬も考えにくいとなると、どうしてもこの馬の持ち味である究極のギアチェンジは中弛みやスローのリスクを考えた上では大きな武器になる。とにかく12.6 - 12.0 - 11.6 - 11.3のラップで追い出しを待って直線差を広げた札幌2歳Sや平均ペースから13.1 - 12.2 - 10.9 - 11.4のラップ推移で内から突き抜けた東スポ杯で見せたように説明不要のギアチェンジ能力が武器。しかもトップスピードも高く、ある程度のポテンシャルを持っているのだから、総合力もそれなりには備えている。ただ、ポジショニングに関してはまだ安定していないのでここだけが課題。それでも悪くとも中団には付けられると思うし、弛んだ時にはこの馬の機動力で要所ですっとトップスピードに乗せられる武器、更にペースが上がったとしても前走でポテンシャル面でも非凡なところを見せたわけなので、信頼に足ると思う。
〇テイエムイナズマはコディーノとは真逆のポテンシャル特化タイプ。ポジショニングが悪いので、それをカバーすることができるコースか、或いはカバーしなくても良いコース、展開が必要にはなってくる。デイリー杯では序盤からペースが上がらず、3角までに距離が有ったので押し上げてハナを取りきった形になり、12.5 - 11.7 - 10.9 - 11.7とそこからは楽な競馬で抜け出した。京王杯では3角までの距離が短く、スタート後に坂もあったので押し上げていくのに苦労した。そこからは大外を回してペースアップに入ってしまい、11.9-11.3-11.0-11.4の直線のトップスピード勝負で負けた。それでも意外とばてなかったし、器用さが問われる東京1400で恥ずかしくない競馬ができたのは評価できる。ポテンシャルに関しては非凡なものを見せているので、中山マイル自体は確実に合うと思うが、今回は展開面で緩む可能性がそれなりにあるメンバー構成。そのために、総合力でコディーノとは大きな差があるので対抗に評価を下げた形。嵌れば勝ち切ってもいいだけのポテンシャルは魅力。
▲クラウンレガーロは追い切りが抜群に良く見えたことと、デイリー杯で距離に目途を立てているのも大きい。特にデイリー杯は12.5-11.7-10.9-11.7とトップスピード勝負にシフトした形で、これに最低限対応できたことは距離に対する適性も含めて大きい。最内をうまく立ち回ってマイネルエテルネルは抑えきっているわけで、上手く立ち回ったとはいえ、最後までばてなかった点は中山マイルでもという印象。もともとスピード色が強い馬で、小倉2歳Sではかなり強い競馬をしての2着。また、前走で緩めても大丈夫と総合力の高さも見せた。今の出来の良さと今回の展開の淀みを考えると抑えておきたい。
△エーシントップはやはりポジショニングが武器。今回は自分のペースで競馬が進められる可能性大で、前走を見ても緩めての再加速にも困らないタイプということが判明したし、中京2歳Sでみせた外差し馬場で強烈な前傾ラップ12.0 - 11.8 - 11.7 - 13.0でも押し切っている点から、ポテンシャルも非凡。総合力がかなり高いが、あくまで1400まで。中山1600ならとは思うが、目標にはなるし強敵も多数。ヒモに押さえておく程度にしたい。
ロゴタイプは外枠に入っちゃったのがちょっとなあという感じ。ある程度軽い馬場でトップスピードやギアチェンジを活かしてパフォーマンスを上げてきたので、外からロスが有ってポジションが下がったり、要所で外を回さざるを得なくなると甘くなる可能性はクローバー賞からも高い。
【展望】
いよいよ中央GIは今年も残すところ後2戦。一つは総決算となる有馬記念、もう一つは来年のクラシックを占う重要なレース、今週行われる朝日杯FSだ。ここ最近はGIにもかかわらず距離、コースの関係で有力馬に嫌われてしまい、クラシックからは随分と縁遠くなってしまっていて、ここ10年朝日杯勝ち馬のクラシック制覇はなされていない。しかし今年は札幌2歳S、東スポ杯の勝ち馬がこのレースに殴り込み。これに対抗するは朝日杯に向けて短距離路線を歩んできた京王杯2歳S覇者。この2強にデイリー杯2歳S、新潟2歳S、小倉2歳Sの覇者も終結。更に2戦2勝のきんもくせい特別勝ち馬、連勝の勢いで京王杯2着と力を示した実力馬なども登録。小粒ながらも骨っぽい有力馬多数で混戦だったムードの中に断然2013クラシックの主役筆頭の馬が殴り込んできた。近年でも稀に見る超ハイレベル戦。今回は東西で有力馬が上手く分散していて、久しぶりに面白い展開でもあり、東西で前後編を組み分けたい。
東軍総大将は飛ぶ鳥を落とす勢いで断然来年のクラシック主役候補のコディーノ。新馬戦は出遅れてしまいどうなることかと思われたが、12.7 - 11.9 - 11.3 - 11.1のラップ推移で外からじわっと押し上げて直線楽に突き抜けた。緩いペースだったし、トップスピードをL1で出す形での圧勝で、あらゆる面でまだまだ未知数な所が多かった。一つ言えるのはこのスローでL1最速戦にできるレベルには最低限であったというぐらい。この時点では出遅れもあったし決して高い評価はしていなかった。一変したのが札幌2歳S。内枠からポンとスタートを切ると、そのまま2列目の内ポケットで競馬する。12.6 - 12.0 - 11.6 - 11.3と終盤ペースアップしていく流れになったが、緩い地点で外からラウンドワールドが一気に捲ってくると、ほぼ同時にゴーサイン。2列目の最内からスーッと外に持ち出してラウンドワールドと併走。すると直線で勢いに勝るラウンドを尻目に、あっさり加速して楽に差をつけての勝利。もちろん最内をロスなく立ち回ったとはいえ、新馬から比べると格段とポジショニングが良くなったし、何よりあの位置につけて1:48.5と好時計の中で、L1最速戦ですっと反応してしまうギアチェンジ能力とトップスピードの高さ、そしてポテンシャルの高さを見せてきた。ここでようやくこの馬の能力の高さに気づくことができた。2000mではあるが同日古馬1000万クラスがまともなラップ推移で2:00.2。ハロン平均換算で考えればほぼ互角、ラップ推移からの時計の価値を考えても、L1最速で11.3とかなり余裕を持たせている。あの段階で古馬1000万下クラスに匹敵する時計を叩き出している点は素直に評価しないといけないだろう。また東スポ杯2歳Sでは高速馬場へもしっかり対応。ロードシュプリームが刻むハイペースで13.1 - 12.2 - 10.9 - 11.4と中弛みはあるもののこれはロードがばてたことによるもの。4番手の内ポケットで競馬し、3~4角でも最内3列目で競馬して直線。序盤は前列が邪魔で進路が取れず。しかしL2の最速地点で進路が開けるとグンと加速。L1では迫ってきたレッドレイヴンを寄せ付けずに完勝の内容だった。レコードで最後まで余裕が有り、ポテンシャルもかなり高く、その上でギアチェンジの高さ、トップスピードの高さを確実に示してきたというのは強烈としか言いようがない。
ただし、東京スポーツ杯では出はそこまで良くなく、好位を確保できたのは最内枠で前が飛ばしてスペースが広くとれたことが大きい。その点で、やはり不安材料を挙げるとすれば、ポジショニングが安定してこない可能性だろう。また、最内が有利な馬場状態であったことも多少評価を割り引くところにはなる。現時点ではトップスピードとギアチェンジ能力の高さが恐らく世代のトップで、それを補完することができる高いレベルのポテンシャルを持っているという印象だ。後はポジショニングがシッカリ安定しさえすればというところ。ここさえキッチリ安定させることができれば、少なくともハイペースになって極端なポテンシャル勝負にならない限りは常に勝ち負けを争えるだけの総合力の高さがある。今回中山マイルという舞台だが、前走を見てもポテンシャル勝負でも互角以上に戦えるのは間違いない。ただし、序盤のポジショニングに不安が残り、馬場によっては内を通らないと苦しくなる中山マイルでもあるので、総合力の高さは認めるが絶対とは言えない。それでも今の中山の馬場状態ならそれもそこまで大きな不安材料にはならないし、どんな競馬にも対応できる総合力の高さは武器。ここでも当然最上位を争う中心にいるだろう。
東軍副将はローエングリン産駒の星となるか、ロゴタイプ。前走ベゴニア賞ではレコードタイムでの完勝劇。ただ高速馬場でレコード決着とはいうだけではなく、12.2 - 11.5 - 11.3 - 11.5としっかり加速してのものでL1も落としていないという点は評価しないといけない。ハナに競りかけようかというほどの良質なスピードを見せながら、最終的に2列目の最内で競馬をし、中弛みにも対応してしっかりと折り合う。3~4角でも最内を追走し、2列目内で直線。序盤でこの加速ラップに置かれずに先頭列に並びかけると、L2の最速地点でしっかり抜け出す。L1で落ち込むかと思いきや、マンボネフューを寄せ付けずに完勝の内容。マンボネフューと比較するとわかりにくいが、同じ位置にいた2列目の馬は随分千切っている。時計も優秀だが、ラップタイムと競馬の内容を考えると相当強烈な競馬だった。この馬はこれまで北海道開催、つまり洋芝で使われてきた。札幌2歳Sではハナを切って競馬をしたのだが、12.6 - 12.0 - 11.6 - 11.3のラップ推移で徐々に加速していく流れで、3~4角でじわっと離して行ったのだが、L1でトップスピード負けしたこともあって完敗の4着。ただコディーノやラウンドワールドを除けば悪い内容ではなく、特に要所でしっかりペースアップして2列目を少し離しているように、ギアチェンジ能力の高さはある程度見せていた。スピードで押し切れるコース、馬場でなかったことも大きいか。クローバー賞では好位で競馬、4角で中目から2列目に押し上げて直線を向いたが反応は鈍く、ばてないもののジリジリと差し込んでの3着に終わっていた。
札幌ではこんな形だっただけに、全ての適性面で明らかにパフォーマンスが上がっている。特に驚いたのはギアチェンジ能力で、2列目から12.2-11.5の序盤の内に先頭列に並びかけてくるだけの反応力を見せた点は相当評価したい。そしてそのトップスピードをL1まで落ち込ませないトップスピード持続力の高さ。軽い馬場でこそという印象を強烈に植えつけた。正直申し訳ないが、デムーロに替わったことも非常に大きかったのではないかとも思う。また序盤のポジショニング能力の高さも実に魅力的。問題は中山1600mだが、現時点でポテンシャルでは札幌2歳で完敗を喫したコディーノには適わないだろうが、中山1600mではコーナーが長く、オムスビ型なので、よりスピードが問われる舞台にはなるし逆転の余地は十分にある。前走見せたパフォーマンスはかなり強烈なので、あれを見る限り高速馬場のマイル戦ならコディーノを逆転しても…とは思う。ただし、現時点の中山の馬場を考えるとかなり時計が掛かっているし、逃げも展開次第では決まるが、基本的には差し有利馬場の印象だったので、この辺りがどう働くか。とはいえ、いずれにせよコディーノに勝とうと思えばコディーノより内でコディーノより前で競馬がしたいところ。前走で新たな一面を見せた今なら十分レースの中心に加われる。
東軍3番手には新潟2歳Sの覇者ザラストロ。新潟2歳Sの直線の伸びは急だった。新潟マイルにしては比較的平均的な競馬になったが、12.0 - 11.7 - 10.8 - 12.1のラップ推移で終い大外から鋭く伸びた。出負けして後方からの競馬になったが、ペースの割に比較的団子になってポジションの差が出にくかったのもある程度大きかった。直線序盤で早めに仕掛けて中団まで押し上げてくると、L2で突き抜けようかというほどの脚。ただし、L1では苦しくなって内からノウレッジの巻き返しを許してしまい、あわやの辛勝となった。この辺りからも、トップスピード能力は高いが、団子になったのも大きいし早めに仕掛けた分だけギアチェンジもカバーできて、L1で落ち込んでしまったように感じた。その意味ではそこまで突出したポテンシャルは感じなかったし、展開面でも恵まれた部分はあったように感じる。東スポ杯でも少し出負けするが、少し出して行って多少掛かり気味になったのも影響したか、直線では完全に伸び負けしていた。この点からもポジショニング、ポテンシャル面でペースが上がっての不安が有り、中山1600mとなるとちょっと難しいところもあるかなという気はする。外から強気に押し上げてというような競馬ではまだ苦しいと思うので、内でロスなく立ち回ってどこまでトップスピードを活かせるかという所。中山マイルだとちょっと不安があるかもしれない。無理にポジションを取りに行くよりは終いに徹した方が良い結果になるかもしれない。コースロスなく乗って、展開待ちでもこの馬の武器を引き出した方が。前走の負け方を見ると正攻法で中山マイルは厳しい気もする。ホワイトマズルの仔なので中山自体は合いそうな気もするが。
東軍の伏兵はきんもくせい特別でマイネルホウオウと共に抜け出したゴットフリート。こちらもロゴタイプ同様ローエングリン産駒で、こちらはトップスピードの高さを示してきた形。前走は大逃げ馬が有ったのでラップこそ11.8 - 11.9 - 11.4 - 11.8という推移になっている。出はそこまで悪くなかったがほぼ最後方から競馬。直線序盤では仕掛けられていたが、少し反応が鈍く伸びもイマイチだった。ところがエンジンが入ったかL2ではぐんぐん伸びて一気に先頭に躍り出た。最後はマイネルホウオウの抵抗もあって併走で大接戦となったがしっかり捻じ伏せた力は評価すべきだろう。トップスピードの良さが光ったが、ギアチェンジ能力は並という印象。新馬戦では中山1800mのコースで五分のスタートから楽に2列目につけて進めていた。12.1 - 12.0 - 11.3 - 11.4のラップ推移、まだ緩い3角で中目から仕掛けて、4角で先頭列に並びかけて直線。序盤こそケンブリッジサンに粘られるが、L1でグンと伸びてしっかり捕える強さを見せた。時計は平凡だが、ラップ推移からも2F勝負でそれは気にしなくていいし、2着馬が実力馬ケンブリッジサンであったことも十分評価できる。緩い地点で押し上げたのでギアチェンジはやはり評価しにくい点はあるものの、ポジショニングはまずまずのものがあった。そう考えればペースさえ流れればある程度前で競馬ができる馬だと思うし、悪くとも中団ぐらいにはつけられるだけのものはあるはず。中山マイルは一貫ペースになりやすいし、終始下り坂でギアチェンジは必要ない。ポテンシャル面ではまだまだ未知数の面はあるし時計勝負でどこまでやれるかが焦点ではあるが、未知の魅力という点ではやはりトップスピードの高さと持続力は挙げておきたい。内目から流れに乗れれば面白そうだが。
京王杯2着馬ノウレッジもここでは圏内。前走京王杯2歳Sでは東京1400らしいややスローから11.9 - 11.3 - 11.0 - 11.4のトップスピード勝負になっていた。ただ、意外と11.9-11.3と極端なギアチェンジは必要なくなっていて、トップスピードの質にシフトしたレースになったともいえる。スタートは五分、中団での競馬になった。3~4角では中目を追走したが前が壁になって団子状態で直線。直線序盤は進路がなく追走のみ。L2でようやく外に出してここから伸びてくるがL1でも前がばてずにジリジリとしか伸びずの5着だった。トップスピードの高さはそれなりに見せたし、最後もばてなかったが前がこのラップを刻んでしまってはどうしようもなかった。敗因はポジションだとハッキリしているし、最後までばてずに伸びてきた点からもトップスピードの持続力は見せた。これは新潟2歳Sでももっと顕著で、中団から12.0 - 11.7 - 10.8 - 12.1のL2の地点で追い出されてグンと伸びてくるようにこの馬本来の武器は恐らくギアチェンジだろう。またL1でもしぶとくザラストロに食い下がっているのでこの辺も評価できる。ただ、中山マイルなのでこの適性は平均ペースで緩急なく進めば相殺されてしまうのはマイナス材料。それでもポテンシャルの高さは一定以上に示しているので、前走の敗因がポジションだとするならば、今回の舞台は前走よりはプラスになるともいえる。条件は悪くはないのでここでしっかりと今の力を見ておきたい。ここでも展開ひとつで好勝負できる素質は持っているはず。
いちょうS勝ち馬フラムドグロワールもウィリアムズで前走同様積極競馬を狙うか。前走いちょうSではスローペースを番手から、12.4 - 11.5 - 11.5 - 11.8のラップ推移でサトノノブレス以下混戦をクビだけ凌いだ。2列目の最内で単騎逃げ馬を見ながらベストなタイミングで一つ外に出し直線。序盤でジリッと迫るとL2でしっかり抜け出す。ただ、L1でサトノノブレスが少し窮屈になり仕掛け遅れて凌ぎ切った印象で、完勝とは言えなかった。正直ラップ推移、レース展開を考えると平凡なパフォーマンスだったかなという印象は否めない。時計もそこそこ出やすい状況でスローだった割にはラップ的にも平凡で実際着差もついていない。レースレベルにも疑問があるので、あまり過大評価はできないか。芙蓉Sではスローから12.3 - 12.0 - 11.4 - 11.2のラップ推移。加速戦でやや後方からの競馬にはなり、仕掛け所でサンブルエミューズに蓋をされてワンテンポ遅れての仕掛け。最後はジリジリ伸びて2着には食い込んだがサンブルエミューズの脚色には及ばず、完敗に近い。ただ、これはL1最速戦で先にトップスピードに乗ったもの勝ちの競馬でもあり、ギアチェンジ能力で不足はあったにせよ、ポテンシャルを出し切った競馬ではなかったともいえる。一連の競馬ではギアチェンジ、トップスピードで不満はあるものの、ポテンシャルに関しては未知数。ダイワメジャー×ブライアンズタイムと、比較的ポテンシャル勝負で良さそうな血統背景でもあり、ペースが上がった時に適性があるのなら勝負になる可能性は否定できない。だが現状の評価だけを見れば、やや過大評価かなというのが正直な印象。ポテンシャルに関してはまだ未知数の域は出ないし、前走もサトノノブレスにL1詰められそうだったのは評価が難しいところだ。鞍上人気もしそうなので。
東軍最後は距離はどうかも葉牡丹賞で強い競馬のトーセンヤマト。前走は序盤スローから12.3 - 12.3 - 12.1 - 11.4 - 12.2と5Fのロンスパ戦、L2最速11.4で2列目からしっかり抜け出す競馬。出は五分だったが二の脚よく楽に2列目につける脚を見せたし、3~4角では最内で前にスペースを置いてこれをうまく生かして競馬。それでも直線最速地点の序盤では少し置かれたが、L1でしぶとく伸びて完勝の内容。中団までの馬のなかではL1一番いい脚を使えていて、ポテンシャルの高さを見せた形。百日草特別でも12.5 - 11.5 - 11.3 - 11.3のラップ推移でギアチェンジとそこからのトップスピードの質が問われた競馬だったが、最後方から反応良く直線序盤で伸び賭けたが前が壁。ブレーキをかけてからも進路確保できず、L1でようやく進路確保しきったが、前もばてずに詰められなかった。ここで見せたのはトップスピードの質もだが、ギアチェンジ能力の高さだったように感じる。その点で中山マイルはどうかという印象だが、ポテンシャルの高さを前走で見せている点は見逃せない。器用さはあまり感じないが、ポジションをきっちり取れれば面白い存在だろう。外枠から多少無理してでも中団ぐらいにつけられれば展開次第で一発十分。
前編は関東の精鋭たちを取り上げた。これに対抗する関西からの刺客は本格派よりもどちらかというとマイル短距離志向の馬が多い。今年は精鋭揃いの東軍に対しても引けを取らないのは流石。
西軍総大将は京王杯2歳Sで鮮やかに抜け出したエーシントップ。血統が父テイルオブザキャット、母父アンブライドルズソングと完全に短距離志向、それもダート向きの傾向が強い。ただ、アンブライドルズソングは母父としては比較的芝馬を多く輩出している印象で、この馬も現状では芝向きだろう。京王杯2歳Sでは好スタートから楽にハナ争いに加わり、勝気だがしっかりと折り合いをつけて抑えることもできた。11.9 - 11.3 - 11.0 - 11.4のラップ推移で楽な手ごたえで3~4角内目を回し、直線序盤でもうマイネルに並びかけるギアチェンジ。するとL2の最速地点で他馬をジリジリ引き離し、最後まで寄せ付けない完全勝利となった。ポジショニングセンス、そしてギアチェンジ能力、トップスピード、ポテンシャル、重要な要素を全て完璧に兼ね揃えた内容で文句のつけようのない完勝だった。これまでタフな馬場でポテンシャルの高さを示してきた形だったのだが、それを高速馬場の舞台で今まで見せてこなかったトップスピードやギアチェンジと言った能力を加えてパフォーマンスを上げてきたのだから、正直かなり驚いた。中京2歳Sではタフな馬場、それも内が少し伸びにくくなっていた馬場の中で12.0 - 11.8 - 11.7 - 13.0と前傾ラップで押し切っている。完璧にロスなく運んだタガノラルフに多少詰められはしたが最後まで譲らずに凌ぎ切っていて、かなりのポテンシャルを見せていたことからも、極めて総合力が高く完成された馬だという印象だ。阪神の新馬戦でも1400mとポテンシャルが問われやすいコースだったが、ここで逃げて完勝。この2戦のイメージを180°変えてきたのが京王杯だったわけだから、適性面では不問だと言える。
ただし、課題はやはり初のマイルという距離。ここ3走で共通しているのは良質なスピードという点。それを活かしてポジションを確保し、高いポテンシャルとある程度のギアチェンジでペースへの対応を可能にしてきたが、やはりマイルになってスローになってしまった場合の不安材料は大きいだろう。中山マイルという点で今回はその危険は皆無と言っても良いだろうが、初距離をどうこなしてくるかが重要だろう。タフな馬場は中京、阪神で経験済みだが、パフォーマンスを考えると軽い馬場の京王杯2歳Sが最も高いと言えるし、今の少し時計が掛かる馬場、外差し傾向の馬場となると他馬につけ入る隙は十分にあるのかなという印象はある。能力は高く、各適正に穴がない。後は相手関係とマイルという距離がこの馬にとってどう転ぶかだ。血統的にはやや長い印象はするのだが、ここは試金石の一戦だろう。
西軍副将はデイリー杯2歳Sで捲って押し切ったテイエムイナズマだ。デイリー杯では出は悪かったがスローの団子に乗じて、向こう正面で一気に押し上げていった。12.5 - 11.7 - 10.9 - 11.7のラップ推移でコーナーで少し離したものの、直線入りで少し外に膨れてしまい差を詰められる。それでもそこから盛り返すと最後は迫るコレクターアイテムや内のクラウン・マイネルの小倉2歳S組を抑えての勝利となった。派手な競馬だったため評価は高かったが、緩いところで押し上げることができただけのものなので、3角までのポジショニングに関しては少なくともかなり恵まれたし、ラップ的にも見た目よりも遥かに楽な展開だったことは間違いない。それでも最後までしぶとく粘りきった点は評価できるし、ポテンシャル面に関しては一定の評価は必要だろう。京王杯2歳Sではデイリー杯で露呈させていたポジショニングの悪さが前面に出た。後方からの競馬でデイリー杯同様に大外から捲る形を見せたが、向こう正面ではなく3~4角になってしまった。11.9 - 11.3 - 11.0 - 11.4と多少緩んではいたので、中団までは押し上げられたが、そこから加速戦になっていく中で、最速地点で置かれてしまった。ただ、この競馬で最後までばてずに食い下がっていた点は評価できる。これを見ても、ポテンシャルは高いものを秘めていて、課題は序盤のポジショニングとはっきりしているし、その上でややギアチェンジ能力とトップスピードが足りないという形。
その点で中山マイルという舞台は面白い。もちろん終始コーナーで平均的なラップを刻みがちなコースなので、いくらポテンシャルが高いからと言っても、これまで同様外を捲っていくような形ではいくらなんでも苦しいだろう。ただ、中山マイルは他の競馬場と比較しても図抜けて緩みにくく、一貫ペースになりやすい。緩急なくて前列が下がってきたりでブレーキをかけるというようなリスクも小さく、よりポテンシャル勝負になりやすい。またペースが引き上げられるのでトップスピードも問われにくく、要所まで下り坂で緩急もつきにくくギアチェンジ能力も必要ない。この馬の弱点を全て補完できるコースと言える。京王杯2歳Sは逆に序盤のポジショニング、そこからのギアチェンジやトップスピードの質が問われていたし、これは度外視できる。デイリー杯は流石に嵌りすぎたが、ポテンシャル勝負になってくれば当然勝負に加われるだけのものは持っている。後は枠と展開次第だろう。
西軍の3番手は京王杯2歳Sで1400の競馬にも楽に対応してきたラブリーデイ。京王杯2歳Sでは序盤スローから11.9 - 11.3 - 11.0 - 11.4のラップ推移。内枠も良かったが五分のスタートからしっかりと2列目の内ポケットを確保できた。3角では前に上手くスペースを作っていたが、4角でじわっと詰めてしまい前とのスペースが無くなって直線を迎える。そのせいもあってか序盤進路を取ってから追い出すことになったが、進路を取りきると2列目から抜け出してきて最内からしぶとくエーシントップに食い下がる。それでも差は詰まらずに完敗の2着ではあった。直線で進路確保してからの追い出しになった割には鋭く反応できていたと思うし、1400mでポジショニングやギアチェンジ、トップスピードを要求されたがこれにはしっかり対応できたと言える。野路菊Sでは番手で競馬、中弛みが有って12.6 - 12.2 - 11.0 - 11.7のラップ推移だった。これを最初から少し離れていたとはいえ2列目で競馬していて、中弛みでも終始2列目の外をキープ。3~4角で逃げ馬を見ながら楽な手ごたえで直線を向くと、序盤で先頭に立つが、遊びながら。そこで外から一気に未勝利馬のサンマルホームの強襲を受ける。一旦前に出られたが、L1で再び盛り返す余力を見せて最後は差し返しての勝利。東スポ杯を見ると決してトップスピードは低くないはずなので、早めに抜け出して少し遊んでしまったのが原因だろう。レースレベルは低かったが、内容的には悪くない。特にポジショニング能力がそれなりにあるうえで、しっかりとギアチェンジできてトップスピードもそれなりにあるというのは大きな材料。
反面で、これまでで見せ切れていないのがポテンシャル。前走も内をロスなく立ち回って直線すっと抜け出すという、どちからというと器用さを見せてきた形。野路菊Sでは中弛みがあったし先行してそれに対応してきた点はかなりスピードをコントロールしやすいタイプという点で評価はできても、ポテンシャルが高いかどうかは判断できる材料はなかった。その点で、課題はペースが上がってポテンシャル勝負になった時にしっかりと対応できるかどうか、これに尽きる。また、今の中山は比較的時計が掛かっている馬場状態でもあり、当日の状況にもよるがタフな馬場でどこまでやれるかも重要な要素だろう。その点ではリスクも孕んでいると言える。中山マイルだと、内で立ち回れる器用さはあるが、ペースが上がって持ち味のトップスピードやギアチェンジ能力が相殺される可能性が高く、よりポテンシャルが問われてくる。相手もそれなりに強敵が揃ったし、前走は枠や展開に恵まれたのも大きい。ここが試金石の一戦であることは間違いない。少なくとも3列目までの位置は確保したい。
西軍の伏兵はあと朝日杯制覇で中央GI完全制覇となる武豊とティーハーフ。もちろん話題だけで選んだわけではない。前走京都1200mで行われた500万下戦では11.9 - 11.9 - 11.8のラップ推移、京都1200の重馬場でほぼ最後方から鋭く突き抜けた。京都1200によくありがちな下り坂から勢いに乗って突っ込んでくる形だが、タフな馬場で、回復傾向にあった最終の準OPでも勝ち時計が1:09.4ということを考えると、1:10.2という時計はそれなりに評価されてしかるべき。またレースラップではL1を落としていない形になっていて、トップスピード勝負よりもポテンシャルの高さで勝ち切ったと判断すべき。他がばてたところで自身がばてずに突っ込んできたし、実際自身の上がり34.6、次点が35.5なのだから後方待機を差し引いたとしても、かなりいい脚を持続させている。それとタフな馬場でこれを出してきたという点にも注目だ。秋明菊賞では12.0 - 11.8 - 11.0 - 11.4と実質2F戦で淀の下り坂を考えればトップスピード勝負にシフトした形の競馬だったが、ほぼ最後方からの競馬。3~4角で蓋をされる形になったが、コーナーワークで4角で出口で何とか抜け出すと、直線ではほぼ最後方から凄い脚で伸びてきていた。L1でもしっかりとそれを保って差を詰めてくるが、タマモベストプレイにポジションの差で負けた形。前走と比較しても、やはりポジション負けしてしまうコースよりも、ポテンシャル勝負になりやすい条件の方が良さそうだ。その点で距離がどうかの不安は有れど、下り坂でしっかりスピードに乗れば直線良質なトップスピードを長く維持できるという点では非常に面白い。内目でロスなく立ち回って直線しっかり進路を取れれば圏内に加わってきてもいい馬だろう。鞍上の手腕が問われるが、武豊が中央GI完全制覇が掛かった舞台でしっかりと導けるか。
小倉2歳Sの覇者マイネルエテルネルも何とか挽回を果たしたい。前走は京王杯2歳Sで楽にハナを取りきっていながら直線で完全にキレ負けしてしまった。11.9 - 11.3 - 11.0 - 11.4のラップ推移で序盤から伸びずにジリジリ下がって2列目に吸収されると、L2でもトップスピード負け。最後は離されてしまった。デイリー杯ではスローペースから12.5 - 11.7 - 10.9 - 11.7のラップ推移。五分のスタートから2列目内ポケット、テイエムが捲って3列目に下がって3角。3~4角で内目を通して直線。序盤でもそれなりには伸びていたが、L1でジリジリ詰めて3着という形。トップスピードもそれなりには見せていた。そうなると京王杯の敗因が不明。全体的にスローで、トップスピード勝負にシフトしたこともあるが、デイリー杯でもそれなりに対応できていたので、ハナを切って目標がなかったことがもしかしたら影響したかもしれない。それに直線ヨーイドンで上り坂というのも影響したか。これまでは小倉なり京都なりで仕掛け所までに下り坂が有ってここで勢いに乗ってという競馬で上位に来ていたし、どちらかというとポテンシャル勝負で良さが出ていた。実際小倉2歳Sではハイペースを好位追走でしぶとく伸びてきた形。ポテンシャル型だし、2走前で距離への対応を見せた。前走の敗因が東京1400特有のギアチェンジが求められて、この能力が全くなかったと考えれば、中山マイルは都合が良い。また陣営も前走は逃げるつもりではなかったとも言っているので、今回中山マイルで前掛かりになりやすいのもこの馬としてはレースがしやすいだろう。基礎スピードが仇となっているぐらいなので侮れない存在だ。
マイネルエテルネルと仲良く登録、小倉では負けたが京都で先着クラウンレガーロ。父グラスワンダーで、マイルは望むところという印象から入る。デイリー杯ではまずまずのスタートからじわっとハナ、ただ途中で緩すぎてテイエムにまくられて番手のポケットで競馬。3~4角でも最内で直線だが、直線でテイエムが外に行ったので、労せず最短距離を確保。京都外1600mでは教科書通りの競馬を試みたが完敗の内容だった。最後にマイネルエテルネルには詰められていて、展開面を考えると少し恵まれた2着ではあったと言える。ただこの馬も小倉2歳Sで早めに押し上げて目標になった上でマイネルに差される競馬で高いパフォーマンスを見せている。展開や条件次第で前後するし、マイネルには常に接戦できるレベルにはあるということだろう。マイネルよりもポジショニングの良さがあることを前走で示した形だが、ポテンシャルに関してはマイネルの方が上。その点で考えると中山マイルならばマイネルエテルネルを上位に取りたいかなあという印象だ。多少序盤に脚を使ってでもロスなく内目を立ち回りたい。当然内枠が良いだろう。これも展開次第で来れる範囲だろう。
西軍最後はクローバー賞勝ち馬アットウィル。ただクローバー賞は12.1 - 11.8 - 11.8 - 11.7のラップ推移、2列目の最内をロスなく立ちまわって直線でも最内スパッと突き抜けた内容で、完璧に乗られてのもの。正直あまり評価できない。京王杯2歳Sではスタートは悪くなかったし、2列目には付けたがペースが上がらずに前に壁がなく抑えるのに苦労していた形。これまでの傾向からもスピード色が強い競馬だったので、11.9 - 11.3 - 11.0 - 11.4と後半勝負で加速しきれなかった形になったのは仕方ないしこの惨敗はあまり気にしなくていいだろう。中山マイル自体は条件的にも良さそうで、これまでの内容からもポテンシャル型なのは間違いない。ただし、ここは相手も強力だし、評価できるレースが乏しいのも実情で、ここまで手を広げられるかどうかという所。内枠でうまく嵌ればという気もするが、ポテンシャル型で面白い馬もたくさんいるので。
http://blog.livedoor.jp/catassan/ 12/16 15:01
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