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【予想】
2歳戦なのでハッキリとした逃げ馬予想は難しいが、内からニホンピロアンバー、メイショウアサツユ辺りが積極的にペースを作っていく。これに対してクリスマスやホウライアキコと言った所がどういうポジションを取っていくかという所。ペース的には極端なスローにはなりづらいメンバーだろう。基本的には平均~ややスロー、馬場も高速状態にあるので総合力が問われる競馬を想定したい。
◎ホウライアキコは前走のデイリー杯のラップ推移と競馬を見る限り距離不安は全くない。少なくとも完全な前傾ラップで基礎スピード戦となった時に持つかどうかはともかくとして、世代限定戦の内ならそういう競馬にはなりにくいだろう。デイリー杯のパフォーマンスは凄くて、前半3Fが33.9と速い流れ、これにじわっと出して付き合ってスピードに乗った状態から11.3 - 11.8 - 12.2 - 12.2 - 11.4 - 11.7と減速して坂下で12.2と減速するかなりコントロールの難しい競馬になったはずなのだが、ここで簡単に抑えている。そして坂を下り切ってから12.2-11.4とギアチェンジで一気に突き放して完勝。アトムに関しては来年クラシック最右翼の1頭だと思っているので、これに完勝しているというのは最大限評価。この時点で本命にするのは決まっていたし、外枠でもコントロールが利く馬だから問題ない。普通に2,3列目から直線抜け出してくれると。
〇マーブルカテドラルは総合力が高い。新潟2歳Sでは前後半速い流れで番手で付き合う競馬。12.0 - 12.6 - 12.8 - 11.5 - 10.9 - 11.4とコーナーでペースダウンを強いられそこからトップスピード戦になっていて、ここで目標になってしまったし、緩めたところで後続に追撃の余地を与えてしまった。フラットに進めればもっと楽に競馬ができるし、芙蓉Sでも11.9 - 12.3 - 11.7 - 11.6 - 11.9のラップ推移で好位から楽に突き抜けている。基礎スピードがもう少し要求される競馬の方が良さが出やすいし、緩んでも前走や新潟2歳Sから対応できる。現時点で欠点が無い上で、ホウライアキコやハープスター相手に戦えるパフォーマンスと考えるとこの馬が最右翼だろう。
【展望】
今年の2歳牝馬は非常にハイレベル、その中でもひときわ輝く末脚を武器に新潟2歳Sを圧倒的なパフォーマンスで差し切ったのがハープスター。その圧倒的な追い込みを武器に、クラシック戦線を占う名牝への登竜門、阪神ジュベナイルフィリーズの舞台でライバルたちをなでぎることができるか?
個人的に新潟2歳Sの評価としては、トップスピードも高いが何よりも最後までそれを維持できる究極のポテンシャルにあるとみている。ポテンシャルと言ってもこの場合はもはやトップスピードを維持する能力と言って差し支えないだろうが、とにかくトップスピードに乗れば凄まじい。これは分析からも明らかだ。12.0 - 12.6 - 12.8 - 11.5 - 10.9 - 11.4のラップ推移で最後方から3~4角でロスなく立ち回って集団に取り付くと、そこから直線で大外に持ち出す。直線序盤ではまだまだ最後方列にいたがL2でエンジンが掛かると一気に好位列まで取り付き、L1では他馬を一気に差し切るまさにごぼう抜きの競馬だ。また、この新潟2歳Sのレースレベルが非常に高く、これらを一周しているという点からも非常に評判が高い一戦である。新馬戦では中京1400mの舞台でスローから11.9 - 12.5 - 11.5 - 11.9 - 12.0の流れ。追走気味ではあったがなかなか苦労して結局後方に下がる競馬。3角では押し気味に手が動くが反応微妙、下り坂で徐々にエンジンが掛かって前を向いて中団で直線を向くと、そこからはしっかり伸びての完勝。不器用ながらトップスピードに乗りさえすれば何とかしてきたと言っていいだろう。またレースぶりが非常に目立ち、大物感たっぷりで人気を煽るのも仕方がない所はあるだろう。
ただし、現実的に見て基礎スピード面で明らかに見劣るという弱点は決して小さいものではない。前述のラップ推移を見てもらえばわかるのだが、どちらも中弛みの競馬である。基礎スピード不足が致命的にならないレースラップで、実際新潟2歳Sでも序盤はかなり追走に苦労しての最後方である。少なくともポジショニングに関しては好意的材料は皆無だろう。後ろに下げているのではなく、ポジションを取れない。新潟2歳Sでも自身の1000通過タイムは62秒も掛かってしまっている。中弛みが起こりやすい新潟外回りなので何とかなったがコーナー部分が長く、それなりに基礎スピードが要求される阪神1600となると不安材料としては確実にあると言っていい。
もちろん阪神外1600mは新潟程ではないにせよ、トップスピード、ポテンシャルの方が重要なコースではあるので、ある程度追走さえできれば終いだけでまとめて面倒を、というようなパフォーマンスもできなくはないだろうが、今回は相手がそんなに楽ではない。それに、新潟2歳Sで実力馬相手にあそこまで派手な競馬が出来たのも、先行~好位勢が極端な中弛みの競馬になって良さを出し切れなかったというケースもあっただろう。L4が12.8と強烈に落ち込んだ流れに合わせた馬に対して、こちらは勝手に前が極端に緩めてくれたので漸く取り付けたという所。阪神外1600だとL1は落ち込むだろうが、要所でここまでは緩まないので、序盤のポジションが悪いとなると、押し上げるポイントはL1だけとなる。トップスピードの質も高いので、エンジンさえかかってしまえば速さで押し上げて行くことは可能だろうが、ペースを引き上げて追走に苦労してしまうリスクは非常に大きい。個性派で魅力的な馬であり、前走は嵌ったにせよ強烈だったことは間違いないが、それ故に弱点である基礎スピード不足という点にも焦点を当てておく必要があるだろう。緩急ない基礎スピードが問われる競馬でどこまでやれるか。今後を占う上では非常に重要な一戦となる。
今年のハイレベル2歳牝馬の中でも獅子奮迅の活躍を見せているのがホウライアキコだ。小倉2歳S、デイリー杯2歳Sと混合重賞を2勝、強敵牡馬を問題としない完勝だ。ヨハネスブルグ旋風の中心を担ったその類まれなるスピードで無傷の4連勝となるか。
このレースは2強と思っているが、トップスピードの質の高さ、ポテンシャルの非凡さで名を馳せたハープスターに対して、こちらは基礎スピードの高さ、それをコントロールできる器用さで勝ちあがってきたと言っていい。まずは新馬戦だが、小倉1200mで楽にハナを取り切り11.0 - 11.3 - 11.1 - 11.4のラップで緩めて再加速して出し抜いての完勝で1:07.8と2歳レコードを叩き出しての勝利。馬場が超絶高速馬場だったので、レコード自体はさほど価値は無いにせよ、高いスピードをコントロールし、そしてそれを解く形でしっかりとペースアップできていた。小倉2歳Sでは道悪で11.0 - 11.6 - 11.7 - 12.4と完全な消耗戦、基礎スピードの高さが問われる競馬になったが、五分のスタートからじわっとハナ争いに加わってくるレベル。結局2列目ポケットに控えての競馬になったが、そこから3~4角でロスなく最内を立ち回ると、そのまま直線でしぶとく抜け出し、ベルカントやラブリープラネットを問題としない完勝だった。基礎スピードの高さは紛いの無い本物だったということが証明されたと言っていい。
ただし、この2走は小倉1200でのもの。基礎スピード色が強い競馬であることは間違いなく、デイリー杯2歳Sに出走するに置いて、課題はマイルへの延長だったことは言うまでもない。そのデイリー杯2歳Sでは序盤ハイペースの流れから11.3 - 11.8 - 12.2 - 12.2 - 11.4 - 11.7と中弛みが有り、下り坂を下り終えてからL2最速11.4。12.2-11.4と京都にしてはかなりギアチェンジが要求される競馬となっている。序盤はハッキリ逃げる馬がおらず、じわっとハナを意識して、アグネスドリームを逃げさせて上手く2列目外に下げた形。序盤はかなり早かったが徐々にペースが落ちて行き、3角以降は12秒台を2F続ける競馬なのだが、ここでしっかりコントロールして4角馬なりで先頭列に並びかける。そのまま直線で一気に出し抜いて先頭に躍り出ると最後までしぶとく粘ってアトムの急追を退けた。このパフォーマンスは極めて高いし、また折り合い面で全く心配がなかったというのは少なからず驚いた。特に序盤でペースが早い中でポジションを取ってから、坂の下りでペースが落ちるといういつもとは逆の展開でも和田は大きく手綱を抑えるというようなことはなく、コントロールしきっていた。この内容はかなり強烈だし、個人的にアトムは牡馬の中では最上位の1頭だと思っているので、この馬も目立たないが化け物クラスの可能性は見せている。
さて、それを踏まえたうえで本番の阪神ジュベナイルフィリーズがどうかという点。目下のライバルは恐らくハープスターなのだが、これは実際問題意識には入らないだろう。というのもポジションが真逆だし、まずハープスターが展開面で絡んでくることはないからだ。ホウライアキコは前走のデイリー杯で下り坂でのペースダウンの競馬に対応できている点からも、折り合いに不安はない。基礎スピードも高いのでポジションは取れる。後はスローになって馬群に縦の差が産まれなくなった時に、リードを作り切れないままトップスピード戦となった時に、ハープスターの末脚が爆発しないかどうかだけかなという感じ。ある程度のペースで縦長にという競馬なら、対ハープスターに関しては圧倒的優位になると思っている。デイリー杯ではギアチェンジ面は見せたが序盤はハイペースだったし、ハロンラップで見ると最速地点でも11.4だからそこまで速かったというわけではない。この馬としては基礎スピードの高さとコントロール能力、更に要所ですっと出し抜けるギアチェンジと言った総合力を上手く合わせて、ハープスターに競馬をさせないこと、好位の強敵をしっかり出し抜くこと。この点がカギだろう。和田竜二にオペラオー以来の中央GIのタイトルを捧げることができるか、人馬ともに注目だ。
ハイレベルの2歳牝馬戦線、東京マイルのアルテミスSを勝って4戦3勝としたマーブルカテドラルもこの舞台で主役を狙う。唯一の敗戦となった新潟2歳Sではハープスターの強烈な末脚に屈してしまったが、GIの舞台で雪辱となるか。
前走のアルテミスSでは器用さを前面に引き出しての完勝だった。前半3Fは35.2とそこそこ流れたが、11.8 - 12.5 - 12.8 - 11.9 - 11.2 - 11.6と中弛みが起こってのギアチェンジ戦となっている。ここで中団馬群の中で包まれながら、3~4角でも中目で3列目で直線を向く競馬。直線序盤で進路を確保してから最速地点でジリジリ伸びてくるとL1できっちり差し切った。ギアチェンジ面で非凡とまでは言えないが、とりあえず前を向けない流れでペースアップの競馬になっても置かれなかったという点は評価できるし、トップスピードに乗ってから最後までは良い脚を繰り出してきた。総合力が問われる競馬になったが、全てにおいて高いパフォーマンスは見せてくれたと言える。芙蓉Sでは中山1600mのコースで牡馬相手に完勝。ペースはそこそこ早く、前半3F35.2から11.9 - 12.3 - 11.7 - 11.6 - 11.9と少しは緩んでいるが基本的には平均的な流れ。中団につけて3~4角でも外から押し上げて2列目で直線を迎えると、そのまましぶとく脚を維持して差し切った。基礎スピードがある程度問われる競馬でも中団から早仕掛けで外々押し上げながら最後まで脚を使えたという点で、基礎スピードやポテンシャル面でも良さを見せているというのは大きな材料だろう。
新潟2歳Sをもう一度分析しよう。このレースは前半3Fは35.3とそこそこは流れているのだが、12.0 - 12.6 - 12.8 - 11.5 - 10.9 - 11.4と極端に中弛みが起こってしまったレースでもある。特に4角のL4が12.8というのはかなり遅く、そこからトップスピードに切り替えていかなくてはならない展開だった。この極端な流れに番手追走でもろに巻き込まれてしまった。それでも直線序盤で追われるとしっかりとは伸びたし、2着争いとは僅差。ハープスターにはぶっこ抜かれたが、時計差は0.5差。これだけ中盤に12秒台が連発してしまうとこの緩い地点でハープスターに楽に追い上げさせたというのが痛かったと言えるだろう。本来基礎スピードが高い馬で、総合力もありペースの緩急に対応できたとはいえ、やはり前後半速い競馬となってしまうと後方からフラットに運んできた馬に対しては苦しくなる。個人的にはこの新潟2歳Sの5着はかなり評価している。
総合的な評価としては、この馬の色はまだはっきりしていないので何とも言えない。基礎スピードの高さはホウライアキコの方が上だし、トップスピードの質に関してはハープスターの方が上。ただし、この馬には2頭にはない抜群の安定感があると思う。前後半の速い競馬に巻き込まれても高いパフォーマンスを見せているし、基礎スピード戦の芙蓉Sでも強かった。これと言って弱点が無い馬と言えば分かりやすい。極めて総合力が高い。2強が割と基礎スピードやトップスピードと言った面が秀でているので、やはりこの馬としてはそういう特化戦には持ち込まれたくないというのが本音だろう。ある程度のポジション、そこからスッと動け、トップスピードの質もありながら最後までなかなかばてない。色々な武器を合わせて強敵2頭に相対すことができれば、チャンスは十分にあるだろうとみている。
続きは↓ 12/08 14:21
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