| ワイド 4-6番
380円的中 |
【予想】
まず雨はそれなりに、多分ブエナが勝った時ぐらいの馬場状態になるのではないかと予想。展開はシルポートの単騎逃げだが、番手を確保したいカレンブラックヒルがかなり外枠。アーネストリーの方が先に追っかける展開になるか、カレンが積極的に前に行くかで変わってきそうだが、2番手はかなり離れる展開になるのではないかと予想。シルポートは大逃げ型だが2000mでは持たない公算大なので、シルポートに関わらず2番手が刻むペースが重要になってくる。いずれにせよ、仕掛け所は早くなりそうなので、ポテンシャルが高い馬を上位に取りたい。もちろん道悪もどこまで進むかわからないので、そのあたりも含めたい。あと、事故の関係で馬運車の到着が遅れたというのも地味に大きいかなあ。対象の馬の馬体重を見てからの方が良いとは思う。
◎ルーラーシップはもともと2000mぐらいがベストの馬だろう。この馬の最大の持ち味はポテンシャルの高さ。小器用さがない馬で、トゥザグローリーにある動き出しの良さがこの馬にはない。その代りに宝塚記念でもオルフェーヴルと持続力勝負で互角にやりあえるだけのポテンシャルを持っている。トップスピードに乗るまでに時間がかかるタイプなので、パンパンの良馬場でスローになる危険があるよりは、道悪でポテンシャルが問われた方がより力を発揮しやすいというのも今回の条件としては良い。トップスピード自体も有馬記念で見せたように、順々に加速してやればそれなりには見せている。ただ、やはり本質は宝塚記念で見せたように12.5 - 12.6 - 11.6 - 11.6 - 12.1のラップで強気の競馬でポテンシャルを出し切る競馬。この馬の本質は不良馬場の金鯱賞でキャプテントゥーレを凄い脚で差し切った時。12.5 - 11.8 - 11.8 - 11.7 - 12.8のラップ推移で、押し上げてL1でばてずにぐんぐん伸びてくる。これがこの馬の本質だと思っている。全馬力を出し切る競馬になった時こそがこの馬の出番。スローでもシルポ単騎で縦長競馬なら仕掛け所は必然的に早くなるし、L1落ち込むタフな競馬になれば古馬ではオルフェーヴルに次ぎ、万全のトーセンジョーダンと互角の馬だと思っているので。ここは休み明けだが、追い切りを見る限り不安はないと思うし、力関係でも古馬では1枚抜けた存在だと思っているので。
〇フェノーメノはセントライト記念で完勝、破った上位が軒並み菊花賞で好走というように、今年のセントライト記念はなかなかレベルが高かったと思っている。超高速馬場でスローの展開。5Fから11.8 - 11.7 - 11.5 - 11.4 - 11.8と11秒台が続くロンスパ戦で中目から楽に押し上げて直線序盤で勝負を決した。ハイレベルの中でも1頭ぬけたパフォーマンスだった。この馬は非常に総合力が高い馬で、ダービーでも平均ペースを中団より前で追走し、直線そこからしぶとく伸びてきた。前が脚を出し切る競馬になっていて、ポジションの差が大きな影響を与えたレースだったが、直線半ばで外にヨレなければという内容でもあり、勝ちに等しい内容。ゴールドシップやワールドエースには楽に先着しており、序盤のポジショニングや、ポテンシャルの高さ、トップスピードの高さ、動き出しの良さを高いレベルで兼ね揃えた実力馬とみていい。中山で着外が2度あるのだが、これは岩田が内で詰まって加速戦で出すに出せずに終わっただけ。スムーズに乗って脚を出し切る競馬になれば崩れていない。この馬もルーラーシップ同様に、脚を出し切れる競馬が好ましいので、仕掛けが少し早くなりそうな今回の条件はプラスに働きそう。
△トーセンジョーダンは昨年の覇者。超ハイペースのレコード決着で中団からしぶとく伸びての勝利。この馬もポテンシャル型で、動き出しに弱点がある馬。それだけに、脚を出し切れる展開が望ましいのだが、今回もそれは期待できそう。ただし、やはり休み明け初戦というのと、追い切りの動きにも不満があり、信頼しきれない。その点では評価を2つ下げて△までにした。
カレンブラックヒルは多分ここで勝ったらもう買えるところはないなあと思う。道悪はNHKマイル(良発表だが最終Rの時計見てもとても良ではない)の千切り方を見ても合っていると思う。後は単純に2000mと外枠だけだと思う。でもやっぱリスクがそれなりに大きい馬を1番人気では買いづらい。
【展望】
3歳クラシック路線のチャンピオンが決定した菊花賞。あの激しいレースで圧倒的なパフォーマンスを見せたゴールドシップ。この3歳の大きな波が、古馬の舞台である天皇賞にも襲い掛かる。中心はダービーでそのゴールドシップを退けての2着、セントライト記念馬のステイゴールド産駒。更に、前哨戦毎日王冠で古馬の一線級を楽に撃破、強烈なパフォーマンスを見せ無敗のまま破竹の5連勝と勢いに乗るNHKマイルC覇者。この2頭に対抗するはディフェンディングチャンピオン、海外GIクイーンエリザベス2世Cで圧勝した馬、善戦どまりだが昨年同レース2着の実績を持つ馬、更にその後は未勝利でも腐ってもダービー馬など、迎え撃つ古馬陣も最強馬オルフェーヴルこそいないが、しっかりとした布陣を敷いてきた。シンボリクリスエス以来実に10年ぶりの3歳制覇か、それともオルフェーヴルがいないこここそ最大のチャンス、古馬の意地か。東京2000の舞台でオルフェーヴルへの挑戦権を賭けた戦いが繰り広げられる。前半は3歳勢2頭と穴馬候補を、そして後半には迎え撃つ古馬勢をピックアップしたい。
中心になるのが史上初の無敗での天皇賞制覇、そして10年ぶりとなる3歳での天皇賞制覇をかけたカレンブラックヒルだ。前走は粒ぞろいのメンバー構成だった毎日王冠。そしてプレップレースとしては前半からかなり激しい展開になった。11.8 - 11.8 - 11.5 - 11.7 - 12.2ととても府中1800mのラップ推移とは思えないそれだが、3番手から一旦はポジションを下げながらも最後はしっかりと抜け出してジャスタウェイの追撃を振り切った。直線序盤で一旦はダノンシャークに詰め寄られるぐらいだったのが、最後には逆に突き放していて、後方で脚を溜めていた2頭の急追を凌ぎきっているのは展開を考えてもかなり評価すべき点だろう。ポテンシャル勝負では現役最強クラスと言っても過言ではないし、距離延長でも問題なく脚を使えていた。NHKマイルCではタフな馬場で12.6 - 11.6 - 11.3 - 11.7と緩めて突き放すという競馬をやってのけているが、毎日王冠では勝負どころで少し反応が鈍かった点からも、急速なギアチェンジができるタイプではなく、タフでトップスピードを少し削ぐような馬場の方がこの馬本来の強さは発揮できるかもしれない。その点ではタイキシャトルに近い馬と言えるだろう。ただ、この反応の鈍さも休み明けの影響だと考えれば、2走目で叩いてこの辺りが解消してくる可能性は十分にある。
何せ5戦しか走っておらず、超高速馬場でのギアチェンジ・トップスピード勝負はまだ経験していない。予想を考える側としては、出来れば前哨戦でそういう競馬になって、どこまで対応できるか見たかったのだが残念ながらペースが緩まなかった。それだけに、東京2000mで緩んだ場合に、すっと動き出せるかどうかという点は非常に重要な要素になってくる。また、陣営がそういう競馬は不向きだと思っている場合は、そういう競馬に持ち込ませないかどうか、また同時に2000mという距離がその作戦にどこまで影響を及ぼすかと言ったところまで、色々と難しい要素が多くなってくるだろう。平均ペースでのパフォーマンスはNZTと毎日王冠で証明済み。スローの動き出しの良さもNHKマイルで証明済みではある。あとは、高速馬場での動き出しの問題と、単純に距離の問題だろう。個人的に前走毎日王冠は動き出しタイプの馬が多く出ていて、一貫ペース向きの実力馬は出てこなかったと思っているので、ここでその巨頭ともいえるトーセンジョーダン、ルーラーシップ相手にどこまでやれるか。また、動き出しが問われる展開になった時には毎日王冠で動き出しの良さを封じられた実力馬が逆転する余地まで残されていると思う。この馬のポテンシャルは底知れないが、東京2000の舞台で緩んだ場合はまだ不安はあるとみていいと思う。
3歳世代からもう一頭の強力な刺客はセントライト記念馬フェノーメノ。ハイレベル世代のダービー2着馬だが、セントライト記念で2着に封じたスカイディグニティが菊花賞で2着。レースレベルとしてもダノンジェラートやラニカイツヨシが菊花賞で善戦していることからも、これらを楽に抑えきっているのは頭一つ以上抜けている証拠。無冠だが、世代最強候補の1頭でゴールドシップにも引けを取らないだろう。セントライト記念では超高速馬場の状態で比較的スローの団子。12.4 - 11.8 - 11.7 - 11.5 - 11.4 - 11.8と5Fからペースアップしてコーナーが速いラップ推移。この最速地点のコーナーで外から押し上げてそのまま押し切った強い競馬は流石。2着に食い込んだスカイディグニティには終い少し差を詰められたものの、既に勝負あった状態。かなり強いパフォーマンスだった。ダービーでは12.4 - 12.3 - 11.7 - 12.0 - 12.4と前半がかなり速い流れで、レースラップは後半少し落ち込む持久力が問われる展開だった。これを中団で追走して終いしぶとく食らいついた。直線半ばぐらいで少し外にヨレ、立て直してからは急追してきたがその差が惜しかった。脚色は最後までこちらの方が上だったし、正攻法で勝ちに行ったが、ポテンシャルを出し切ったディープブリランテをわずかに捕えきれなかったという形。負けてなお強しだし、序盤のポジションセンスがある分、総合力ではゴールドシップを上回っているとみても良いと思う。
唯一の惨敗の弥生賞に関しては、正直岩田の騎乗ミスだと思っている。ヤヤオモ発表ではあったがかなり内有利の馬場状態だったし、その上で13.1 - 12.3 - 11.9 - 11.5 - 12.0のラップ推移。コーナーに入るにつれて徐々に加速する流れの中で、馬群の中で進路を確保できずに要所でまごまご。4角で外を回すが進路がないところに突っ込んでしまって不利を受け、ブレーキをかけて直線を向く始末。一旦最後方まで下がりながらも、そこから凄い脚で猛然と追い込んできて差のない6着だった。展開を考えると明らかに苦しい競馬ながらも、そこから外に持ち出すだけで11.5-12.0のラップ推移で突っ込んでくるというのは今考えれば確かに破格のパフォーマンスだろう。トータルで考えればかなりまとまった適性の持ち主。無敗のカレンブラックヒルの方がインパクトでは目立つが、この馬も隙はなく、特にトップスピードをそれなりに持ちながらも、弥生賞で見せた動き出しの良さや、序盤からポジションを取って行けるセンス。大きな不安材料はないとみてよさそう。ただし、2000mでペースが一貫になった時に、基礎スピードが足りるかどうかはまだちょっとわからない。平均ペースのダービーでちょうどいい感じだったし、セントライト記念は緩くて追走が楽だった。要所でも弥生賞とは違って外からスムーズに押し上げていけた。カギはこの辺りにありそう。それでも極端にペースが上がらなければ力は間違いなく発揮できるし、相手関係を考えても十分戦えるはずだ。
この2頭は長文なので段落分けで。続いて、3歳世代のダークホースとして一躍浮上のジャスタウェイ。前走賞金上積みで、ぎりぎりで本番に滑り込んだ。菊花賞トライアルではなく古馬混合戦の毎日王冠を選んだことが見事に成功。その前走では11.8 - 11.5 - 11.7 - 12.2の一貫ペースで脚を出し切る展開、中団から上がり最速33.0を繰り出して鋭く伸びてきた。ただ、この馬はトップスピードタイプではなく、スピードに乗るまでに少々時間がかかるのと、そのトップスピードを維持する能力の方が長けている。前走のようにL1落ち込む競馬になってようやく本領発揮だったとみていいだろう。アーリントンCでオリービン以下を下した時も、12.4 - 11.7 - 11.2 - 12.3の最速地点ではまだ伸びきれていなかったが、L1の落ち込みで大外をグングンと強襲しての1着。こういった脚を出し切る競馬こそがこの馬の持ち味で、ペースが上がってくれた方が良いのだろう。ゲートセンスが悪く、どうしても後ろからになりがちだった馬が、前走は五分に決めて中団につけられたというのは大きなプラス材料。それでいて脚色も衰えなかったのだから、しっかりと中団のポジションを確保できれば力をより発揮しやすくなるだろう。この馬の場合、全ての敗因が脚を出し切る前に終わっているか、或いはポジションが後ろ過ぎて物理的に届かないか、或いは完全なるトップスピード勝負、何れかになっている。厳しい競馬になれば強敵相手でもやれる要素はあり、前走も単純なフロックで片づけるのは危険だろう。ただし、まずは前走ぐらいのポジションが欲しい、続けてL1落ち込むような持久戦になってくれるかどうか。まだ展開次第の面は抜けない馬だろう。
3歳勢はこの3頭のみ。前編では他に気になる穴馬をピックアップしたい。
まずはそろそろ人気が落ちてきそうなトゥザグローリー。前哨戦のスペシャリストと言っても良い程、GII、GIIIには強いがGIに弱い。実際重賞5勝の実績はここに入っても最右翼のものなのだが、GIでは有馬記念2年連続3着が光る程度。ただ、この2年連続3着の内容こそがトゥザグローリーという馬を如実に表しているとみている。どちらも超スローからの終い勝負。一応ヴィクトワールピサが制したときは11.5 - 12.0 - 11.7 - 11.1 - 11.8と5Fで紐解けばロンスパ戦ともいえるのだが、前半が超スローでヴィクトワールが仕掛けたためペースアップしたが、それでもこのクラスの中山では珍しいL2最速11.1とかなりのトップスピードが問われた展開。ここで番手の外からしっかりと伸びて置かれずについていけた。この辺りがこの馬の武器だろう。ペースアップの時にもしっかりと反応できていて、動き出しの良さ、トップスピードの高さという器用さがあるからこそ、前哨戦で問われるスローからのペースアップに対応して直線半ばでグンと伸びてこれるタイプだとみている。実際天皇賞秋にしてもJCにしても、宝塚記念にしても、比較的タフさが問われる競馬になると崩れているように、ポテンシャル勝負では分が悪い。今回シルポートが引っ張るという展開は決して好ましくない条件だろうが、一貫ペースで厳しい流れだった昨年の善戦を見る限り、東京2000ならある程度厳しい競馬になっても大丈夫なように感じる。動き出しの良さを活かせる展開になれば面白いが、ポテンシャルを問われると辛いだろう。
サマー2000チャンピオンのトランスワープが力をつけてGIに殴り込み。新潟記念では11.7 - 10.9 - 10.3 - 11.9のラップ推移で最速地点で中団から2列目までしっかり押し上げてくると、L1でそのままの伸びを維持して差し切った。トップスピード勝負になってどうかとも思ったが、意外と関係なく伸びてきたし、何せL1での伸びが良かった。前後半でペースに緩急があってもトップスピードの持続力を見せた形は最大限の評価をしたい。また、破った相手がタッチミーノットであることからも、十分古馬一線級と戦っていけるだけのパフォーマンスだったと言っていいだろう。これまでのイメージとしては小回り2000mで平均的なスピード持続力を活かしてくるという印象だったのだが、この新潟記念で印象は少し変わって、トップスピード勝負でもL1落ち込む流れなら通用するというだろうと。ただ、府中の場合は展開次第だが動き出しを問われるケースが多いので、スローになった場合しっかり対応できるかどうかはこの血統だけに不安はある。が、アメジストSでは12.6 - 11.0 - 11.0 - 11.6のラップ推移でハナを切って直線突き抜けていて、実は動きだしに関してもある程度の目途は立ててきている。福島民報杯ではハイペースを追走して終い脚が上がった形、福島テレビOPでは後方から競馬も前がペースアップする形で届かなかったが休み明け初戦。ここ2走を評価するならば、怖い一頭であることは間違いないし、どういう展開でも対応できそうな感じも怖い。
オールカマーで完勝、そろそろGIで活躍が期待されそうなナカヤマナイト。オールカマー自体はやや低調なメンバー構成ではあったが、12.6 - 12.6 - 12.0 - 11.7 - 12.3のラップ推移、緩い地点で既に外から押し上げるような競馬になっていて、L3からの加速の地点では楽なポジションにいたことも大きかった。L2で良い手ごたえだった割に直線追ってから伸びきれずにダイワファルコンに粘られた点は不満材料で、正直完勝ではあれど、完璧に乗られ、展開的にも楽な形でのもので不良馬場ということもあり、相手関係を考えてもなかなか前向きな評価は下しにくい。大阪杯、鳴尾記念はスローからの動き出し勝負だったので気にしなくても良いが、宝塚記念でこの馬にとっては良い条件だったにもかかわらず完敗の内容を考えると、現時点ではまだGI級相手に戦えるだけの目途は立てていないように感じる。トップスピードも動き出しも並で、持続力とパワーを使っていきたいタイプだけに、府中ならそれなりに緩まずに持続戦になってもらいたいが、それでもルーラーシップにAJCCで完敗していて、勝ち負けまではなかなか難しいだろうとみるが。つい手を出したくなる馬なのだが、今の段階でこの相手に戦うにはそれなりの追い風が必要だろう。
前編最後はここにきても結局よくわからない馬サダムパテック。東京2000で行われた皐月賞ではオルフェーヴルに完敗も決して悪い内容ではない2着だった。12.7 - 11.8 - 11.7 - 11.8のラップ推移で実質は3F勝負だが、雨が残っていて良馬場発表は名ばかりの時計が掛かる馬場状態だった。そんな中で、最内ポケットから進路が作れず、オルフェーヴルが抜け出してきたところを通って何とか2着を確保したという形。緩んでの加速という流れで進路が作れず後手を踏んだ分もあったが、オルフェーヴルには完敗の内容。それでもタフな馬場という今となってはオルフェーヴルのホームともいえる状態で、最後の脚はそれとそう変わらなかったのだがら、やはりポテンシャルは秘めている。距離に関しても、セントライト記念で高速馬場の一貫ペースでも3着、中弛みがあったとはいえ菊花賞で5着と形は作っているので、決して2000が長いということはないと考える。京王杯SCの内容からも、序盤あまりスピードが問われずに、11.7 - 11.3 - 11.3 - 11.6と比較的トップスピードを問われる展開で外から伸びてきた。それでも一番いい脚だったのが、意外にもゴール前のL1で、ここで迫ってきたインプレスウイナーに差を広げていた。トップスピードの高さもだが、より持続力の方が強いタイプのようにも感じる。ただ、この馬も一線級相手に戦える目途は立てていない。古馬混合重賞では京王杯SC勝ちと鳴尾記念3着ぐらい。菊花賞の善戦や、京王杯の内容を見ても、案外2000mぐらいでポテンシャルを出し切る競馬の方が合っているかもしれない。いまだに掴みきれない印象はあるが、ここはシルポートが飛ばしてカレンが突く展開が予想されているだけに、紛れれば一発あってもというぐらいの印象ではある。
展望の後編では勢いに勝る3歳馬を前に、オルフェーヴルのライバルたちが壁として立ちはだかる。オルフェーヴルのいないこの天皇賞こそ、各馬タイトル奪取に力が入る一戦ともいえるし、3歳馬相手に負けていられない古豪もいっぱいいる。そんな古豪たちを後編では紹介したい。
筆頭は宝塚記念で2着、国内GIではあと一歩届かない屈指の実力馬ルーラーシップ。ウンベルト・リスポリとのコンビで挑んだ海外GIであるクイーンエリザベス2世Cでは最内の番手から直線鋭く抜け出して突き抜ける圧巻の競馬。海外では反応やトップスピードの違いで千切ってきたが、日本においては脚を出し切る競馬で結果を出してくる印象だ。例えばタフな馬場で持続力を問われた宝塚記念では12.5 - 12.6 - 11.6 - 11.6 - 12.1のラップ推移で、少し中弛みがあったとはいえ平均的な競馬。外から押し上げる競馬をしてほぼ先頭で直線を向いたが、内からコースロスなく立ち回ってきたオルフェーヴルにL2で突き放されてしまう。それでもL1のバテでは離されずに食らいついていた。この馬もオルフェーヴルに匹敵するだけのトップスピード持続力の持ち主で、途中でハナに立って自分の競馬が出来なかったドバイSCを除いて、ばてて負けたということがただの一度もないという点は面白い。反面で、すっと動き出すような器用さを問われる競馬では勝ち切れないケースが多い。有馬記念でも1度目は11.5 - 12.0 - 11.7 - 11.1 - 11.8のラップで完全にキレ負けして、L2でついていくのがやっとというところだった。2度目、去年の有馬記念では12.0 - 11.9 - 11.4 - 11.3 - 11.3とトップスピードは問われたが、動き出しはゆったりとしていてそこまで問われない展開。外からオルフェーヴルの後ろを追走していたが、要所でじわじわとしか伸びてこなかった。最後は伸びてきていたし、トップスピードの持続力は高いが、ポジションが後ろ過ぎて届かない競馬になった。オルフェーヴルにはトップスピードで見劣っている感じで、持続力では伍するほどのポテンシャルは持っていると思っている。東京2000mとなるとある程度トップスピードの高さと、動き出しも問われやすいコースではあるが、今回シルポートがハナを切る展開ならば、この馬の持ち味が出てくる可能性は高い。とはいえ、本質的にはステイヤー的な要素が強いと思っているので、良質なスピードが問われたときにしっかり追走できるかどうか。昨年の宝塚記念の内容からも、平均的なスピードで押し切られると苦しいように感じるので、このクラスの超高速馬場の2000mという距離がどう出るかだろう。
昨年の覇者トーセンジョーダンも当然最上位の1頭。昨年は札幌記念からの参戦だったが、今回は半年ぶりの休み明けではあり、そのあたりは単純に不安材料ではある。休み明け自体は気になる馬ではないが。この馬の持ち味は何と言っても先行力と持続力。高いレベルで各適性を兼ね揃えた馬だ。ただし、基本的にこの血統らしく動き出しの良さだけは一歩見劣る。大阪杯でも自らラップを刻んでいたが、12.3 - 11.9 - 11.2 - 12.2と急加速を問われたL2で手応えで大きく見劣っていた。代わりに、L1で盛り返していたように、持続力の高さがこの馬の本来の武器。動き出しで不安が少しある馬だけに、基本的にはそれが問われないロングスパート戦向きではあるのだが、昨年の天皇賞のように完全なスピード持続戦でも追走で脚を使わされない辺り基礎スピードもかなり高い。圏外になるときは2度の有馬記念に象徴されるように、スローからの急な動き出しを問われたとき。特にわかりやすいのが1度目の有馬記念。超スローでラップを刻んでいた時にヴィクトワールに一気に競られて急激なギアチェンジを要求された。12.3 - 11.5 - 12.0 - 11.7 - 11.1 - 11.8と緩いペースからL6でギアチェンジ、更にL2でトップスピードに切り替えなければいけない競馬だったが、L2で脚色見劣り、L1で苦しくなってしまった。トップスピード勝負では辛い馬で、ポテンシャル勝負になることが望ましいタイプだろう。また、コーナリングを問われるとよくないようで、旧中京の急カーブで持続戦になっても4着に敗れていたり、北海道開催でもコーナーのきつい函館の五稜郭Sで休み明けとはいえ超格下に負けての5着だったり、有馬の内容を考えても、コーナリングが問われる舞台は得意とは言えないだろう。その点で、広いコースでのびのびと走れる府中の2000mという舞台は絶好と言えそうだ。ポテンシャル勝負なら現役屈指の馬。ルーラーシップとガチでやりあった時が昨年の宝塚しかないが、どちらも消化不良な感じで何とも。東京2000の舞台なら総合力でこちらの方に分があるとみるが。いずれにせよ、昨年の覇者でここに入っても最上位なのは疑う余地はない。あとは極端に緩んで動き出しやトップスピードを極端に問われないことだけを祈るのみだろう。
毎日王冠でまさかの大惨敗を喫したダービー馬エイシンフラッシュ。最強世代と名高かった10世代も今や昔。ヴィクトワールピサ、ヒルノダムールの引退に、三冠馬オルフェーヴルの台頭、ローズキングダムやエイシンフラッシュの低迷ですっかり影が薄くなってしまったこの世代。その世代の中でも、既にルーラーシップに世代No.1の座を奪われてしまうような状態が今年は続く。オールウェザーで適性面の問題があったドバイWCはともかく、宝塚記念、毎日王冠と力負けを喫してしまった感があるのは少々残念だ。もちろん、毎日王冠はこの馬が得意としている動きだしとトップスピードの勝負ではなく、一貫ペースで厳しいスピード持続戦になったこともあるが、それにしてもあまりにも見せ場がなかった。大阪杯でも一瞬は素晴らしい伸びを見せていたし、天皇賞でも一瞬は良い脚を見せている。毎日王冠ではそれすらなかったというのは非常に気がかりだ。もっとも1800mという距離でハイペース、序盤の追走で脚を使ってしまったという懸念は無きにしも非ずだが、前走の内容はそれでもやはり評価を下げざるを得ない内容だった。GI連対があるとはいえ、ダービー以降未勝利という恥ずかしい汚名をいつ雪ぐことができるのか。今回の天皇賞秋もこの馬が得意とするようなスローから動き出しを問われる展開になるかどうか微妙なところ。シルポートが逃げてカレンブラックヒルが突く展開。アーネストリーまでいるとなると、展開面でもなかなか緩むということは考えにくいともいえる。ただし、幸いシルポート、カレン共に距離に不安があるので、この2頭のペースの意識が少し緩んでくれれば、この馬の出番があってもおかしくはない。ダービーで見せた12.4 - 11.3 - 10.8 - 11.3のラップで馬群の中から素晴らしいギアチェンジで抜け出してきた、この適性は現役トップ。これを活かせる展開になれば…だが、ポテンシャル勝負ではやや分が悪いだろう。
昨年の2着馬もここから善戦馬の道が開けてしまったダークシャドウ。昨年は毎日王冠で12.0 - 10.9 - 11.1 - 11.6のスローから絶望的な位置でもL1のバテで鋭く食い込んできた。このトップスピードの持続力が武器。もともと昨年の大阪杯でも11.4 - 11.6 - 11.6 - 11.3 - 11.8 - 12.2と完全なポテンシャル勝負でヒルノダムールに肉薄しているし、同じく昨年の天皇賞でも11.4 - 11.8 - 12.0 - 11.9 - 12.1 - 11.8と脚を出し切る展開で最後に突っ込んできた。正統派ダンス産駒らしいトップスピードの持続力がきわめて高い馬だと言える。その点でスピードに乗りやすく維持しやすい高速馬場で強さを発揮しているのも間違いない。実際時計が掛かっていた2月の京都記念では中団から12.4 - 12.0 - 11.3 - 11.8 - 12.4の流れで伸びを欠いていた。L1落ち込むこの馬には良い展開だったはずだが、思った以上に伸びなかった。距離もあっただろうが、タフな馬場向きではないということだろう。比較的時計が出やすい状態だったとはいえ、札幌記念でも12.3 - 11.7 - 12.0 - 11.4 - 11.8のラップ推移で普段にはない番手競馬だったとはいえ、最後は少し甘くなっている。その点で、今の府中の馬場状態で時計勝負になりやすい展開になれば昨年同様期待できる条件と言えるだろう。ここ数走はある程度の位置で競馬ができるようになってきているのも安定している一つの要因。展開次第の面は有れど、ポテンシャルの高さなら通用していい。ただ、昨年は東京でかなり上手く乗っていたベリーだったので、古馬王道GIを取りきれていない福永に替わってこのメンツ。鞍上の手腕が問われそうな状況だが、こちらの方が不安かもしれない。
古馬勢で侮れないのが春の天皇賞馬ジャガーメイルだ。全盛期に比べると、やや良さが陰ってきた感もあるのだが、それでも今年の天皇賞春では後方から脚を使って鋭く伸びてきた。11.9 - 11.4 - 11.7 - 12.3 - 12.5とタフな展開になっていたが馬群の中目を割って、しぶとく抜け出しての4着。ウインバリアシオンには差されたが、どちらかというとトップスピードの高さで勝負するこの馬としては、ロンスパ戦でこの結果なら上等のパフォーマンスと言えるし、まだまだ古豪健在を示したと言っていい。この馬は実は府中のトップスピード勝負でも対応できるほどの馬。降着になってしまったが2年前の秋の天皇賞では12.2 - 11.7 - 11.3 - 11.9のラップ推移で直線序盤で手応えが良く、凄い脚で内に切り込んでいったが、ここでエイシンアポロンに体当たりして潰してしまったのと、結局内が狭くなって下がってしまったので大敗した形。しかし、一瞬のトップスピードに関しては外から来ていたブエナビスタと差のない実に鋭い脚だった。ここからも、2000m自体は問題ない。トップスピードの高さはここでも通用する。昨年の天皇賞はペースが上がりすぎて中距離寄りのスピードが問われたし、序盤のポジションが悪くて苦しかった。高速馬場向きの馬で、昨年のJCでも内を通ったとはいえ11.9 - 11.2 - 11.0 - 11.5 - 12.0のラップ推移で最後までしぶとく伸びて3着。ベスト距離ではないだろうが、トップスピード持続力もそれなりには持っている馬。2000mだとやはりカギは序盤のポジションだろう。嵌れば十分にやれるだけのポテンシャル、トップスピードを持っているので。
立て直したい昨年の宝塚記念馬アーネストリー。今年に限れば宝塚記念で先行競馬から12.5 - 12.6 - 11.6 - 11.6 - 12.1のラップ推移で4角で動き出すもここでいつもの手応えがなく、そのまま伸びを欠いた。比較的高速馬場向きの馬ではあるので、タフな馬場になった前走は辛かったかもしれないが、それでもやはり全盛期の安定感と比べると物足りないのも事実。鳴尾記念や大阪杯では消極的な競馬でしかもスローなので、度外視しても良いレベルではあるが、去年の秋からややパフォーマンスは落ち込んでいる印象は否めない。有馬記念はハナに立ってしまったとはいえ、12.0 - 11.9 - 11.4 - 11.3 - 11.3とラップ推移的にも脚を余す競馬となっていて、この馬の力は出し切れなかった。不本意だったとしてもハナに立ったらたったなりにしっかりと競馬を作ってほしかったというのが本音。これもあまり気にする内容ではない。天皇賞は厳しいペースを3番手で追走したとはいえ、これが負けすぎ。その点でも、やはり府中2000mは不安材料だろう。基本的にはコーナー4つの舞台で先行力と平均的なスピード持続力、ポジションセンスを活かす馬だけに、こういったポテンシャル勝負やトップスピード勝負になりやすいコースだとなかなか難しいところはあるかもしれない。まだ完全に終わったとは言い切れないものの、これだけのメンバーが相手ともなると、どうしても不安が先に立つ。昨年の宝塚記念ではブエナビスタを完封しているだけに、やはりその能力の高さは怖いのだが。いずれにせよ、何とか恰好はつけてもらいたいところだ。
最後にこのレースのカギを握るであろう単騎の逃げ馬シルポート。今回も陣営がハナ宣言をしているのだが、今回はやはり実績のない2000mという距離。しっかりと厳しいラップを刻んでいけるかどうかがポイントだ。この馬の場合は、意外と二の脚もしっかりしているタイプ。昨年の京王杯SCでは11.4 - 11.0 - 11.2 - 11.6のラップ推移で序盤で少し離しているように、単純に飛ばすだけ飛ばすという競馬よりもリードを広げて二の脚で突き放す競馬ができれば面白い。昨年は完全にマークされてオーバーペースになってしまったが、今回もついて来れば撃沈させるぐらいの覚悟で序盤飛ばす格好をし、どこかで上手くペースを落としつつ、リードを保てれば…あるいは逃げ残りもあるかもしれないが…。実力、適性的、更にカレンが突くという展開的にも厳しいとみるのが妥当だろうか。しかし、このレースの中ではある意味一番出方が注目されるだけに、注意は必要だろう。
http://blog.livedoor.jp/catassan/ 10/28 09:41
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