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【予想】
今回は決め打ちます。前日予想の段階だと馬場が読み切れないんだけど、今日の淀もそうだけど、騎手の意識より馬場の回復の方が先になる可能性が高いかなと。天皇賞の頃には思っていたより馬場が良くなっていたという想定で取りあえず行く。明日の午前中様子を見るけど。
展開はトウケイヘイローの単騎逃げまでは予想がつくが、むしろ今回はトウケイは無視して2番手以降が大事。恐らく内からダイワファルコンが枠を活かして先行策、これに外からレッドスパーダがある程度出して行くが枠が苦しくこれは3列目ぐらいになりそうか。ジェンティルドンナはトウケイヘイローよりも内に入っていて、トウケイが外から内に切り込みながらのスタートになることを考えるとポジショニングは楽ではない。良くて好位ぐらい、多分中団ぐらいの競馬になると思う。ダノンバラードがじわっと外目の好位ぐらいで、エイシンフラッシュはそこそこ好位の内目ぐらいになるかな。いずれにせよトウケイがある程度のペースで逃げ、少し離れたところにダイワファルコンが実質ハナでスロー気味に刻む想定で行く。馬場回復の割に道悪を意識してペースが上がるタイミングが遅くなる可能性を考え、ギアチェンジ、トップスピード面で良さを見せてきた馬を狙い撃ちしたい。
【予想】
◎06エイシンフラッシュ
〇11トウケイヘイロー
▲01コディーノ
△03ダイワファルコン
△04トゥザグローリー
×07ジャスタウェイ09ジェンティルドンナ
3連複◎軸〇▲△BOX
3連単F◎〇▲→◎〇▲△→◎〇▲△×
◎エイシンフラッシュはややスローでギアチェンジを要求される競馬ならば右に出る馬はいない。前走の毎日王冠でも12.6-11.1-10.9-11.3と超スローからの瞬発力勝負でしっかり加速して楽な手ごたえで直線序盤からジリジリ伸び、L1でしっかりと突き抜けた。直線どの地点でも前との差を詰めているように、トップスピードまでのギアチェンジ能力が問われれば現役最強クラス。いかにもキレる馬というイメージのせいで道悪は恐らく人気を下げる要素になるのだが、ヤヤオモ天皇賞春のソフトな馬場でロンスパ戦でも突っ込んできているように、馬場適性には不安はない。恐らく基礎スピード面で本来1800は短い馬だと思っていて、昨年の毎日王冠、一昨年の天皇賞では基礎スピード面で追走に脚を使って甘くなってしまった形。逆に序盤楽に脚を使わず競馬が出来た昨年の天皇賞、今年の毎日王冠では鋭い脚を使えている。この距離では序盤楽に進める方が良いのは間違いない。今回はトウケイヘイローの単騎逃げ、2列目以降がある程度雁行状態で実質ややスローになる想定、ジェンティルドンナは好位~中団で岩田の事なので内に拘る。内からペースアップしていく競馬ならジェンティルドンナは置き去りに出来ると思うので、序盤からかなり縦長になって実質的にも厳しい流れにならなければ信頼できる。馬券心理的には毎日王冠で綺麗に勝たれ、昨年勝った馬というのは非常に狙いにくいのだが、逆にそこまで人気していない。平均ペースまでなら2000は安定する馬だし、馬場も問題ない。この読み通りなら期待していいだろう。
〇トウケイヘイローは、単純にタイムトライアル。自分のペースで淡々と逃げてどこまでやれるか。馬場回復とのバランスを取りながらラップを刻んでいくのは府中ということも有って決して楽ではないが、少なくとも絡まれる可能性は低い。2列目勢は消極的な馬が多いのも楽に運べる要素。札幌記念はぶっちぎったがあの時の函館は馬場が極悪で内を立ち回らないとどうにもならない状態だったから、少し嵌った要素は有る。それでも函館記念では12.1 - 12.0 - 12.0 - 11.6 - 12.1の流れでしっかりと加速して出し抜いているし、鳴尾記念もスローからのロンスパを仕掛けて押し切っている。馬場に関係なくこの馬は総合力の高さを持っているので、この馬にとってバランスのいいラップを刻めることが出来れば函館のメンバーや鳴尾記念のメンバーから考えてもここで最上位は間違いない。これを自力で潰せる馬は恐らく積極的に乗った時のジェンティルドンナぐらいだと思うし、道悪が少しでも残るというのはお互いの個性を考えた時に大きい。多分に自分との勝負になる要素が強く、武豊がしっかりとしたラップを刻むことが出来れば普通に完勝まである。ただ、今の馬場と府中の2000で逃げ切るというのは並大抵ではできないことなので、本命にはし辛かった。
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【展望】
3歳クラシック戦線も先週で終了し、これからは古馬と3歳との対決がアツくなる王道路線がスタートする。古馬は昨年牝馬三冠の上にジャパンカップでオルフェーヴルを撃破した女傑、府中でキレ味を爆発させるディフェンディングチャンピオン、更にサマー2000で大躍進を遂げた上がり馬と3強の様相。ロゴタイプの秋全休もあって3歳馬は層が薄いものの皐月賞3着馬が参戦。オルフェーヴル、ゴールドシップ不在でもかなりの豪華メンバーが目指すは秋の盾。前編は3強を中心に実績馬を展望、中編は古豪、前哨戦を勝ちあがってきた馬、後編は穴馬となりそうな馬を展望していきたい。
中心はオルフェーヴルをジャパンカップで捻じ伏せた女傑ジェンティルドンナ。今年は2戦してまだ勝利の美酒を味わえていない。今年初勝利を目指して府中の舞台で持ち味を活かせるか。牝馬三冠は相手が違うので何とも言えないが、少なくともオークスの勝利は飛びぬけたパフォーマンスだった。超高速状態ではあったにせよ、牝馬では考えられないほどのかなり厳しい一貫ペースの流れ。 11.9 - 12.4 - 12.3 - 12.2 - 12.1 - 11.8 - 11.8と緩急がほとんどない競馬になっていて、これを後方から鋭く…というよりは力強く突き抜けてぶっちぎった。最速地点でもしっかり伸びてはいたが、特筆すべきはL1で落ち込まずにばてた馬を尻目にぶっちぎったところにあるだろう。かなり高いパフォーマンスと言え、ポテンシャルが飛びぬけていた。平均ペースでも後方で脚を溜めて後半勝負に徹し、トップスピードに乗せてそれを非常に長く維持することが出来たと言えるだろう。翌週のダービーよりも早い時計でぶっちぎったのだから、時計的な価値も大きい。そして、ジャパンカップでのオルフェーヴル撃破も当然この馬の能力を測る上では重要だろう。このレースも超高速馬場状態で行われ、割と淡々とした流れではあったが馬場の割にはややスロー。12.2 - 12.0 - 11.9 - 11.7 - 11.5 - 11.5のラップ推移でビートブラックが早めに3角から2列目を離す競馬。外からオルフェーヴルが捲って押し上げて行く流れで、この馬は3番手から最内を終始通して直線を向き、序盤で最内からビートブラックとの大きなスペースを活かして押し上げる。しかしビートブラックが下がり、オルフェーヴルが蓋をして万事休すとなるが、岩田が強引にこじ開け、最後はオルフェーヴルを捻じ伏せた。とても褒められるようなきれいな競馬とは言えないが、どういう形であれオルフェーヴルを捻じ伏せたというのは凄い。何より、3着馬ルーラーシップを完封しているのだからケチの付けようがないだろう。
ジャパンカップで感情的には素直には称賛できないにせよ、パフォーマンスとしては認めざるを得ないであろう。オルフェーヴルが外から押し上げたロス、凱旋門の後ということを考えても、これを打ち破るのは並大抵ではない。このパフォーマンスなら2013年の主役はジェンティルドンナになると思っていたのだが…初戦のドバイシーマクラシックはこれと言った強敵は存在せず、オルフェーヴルを破った内容からもここは楽にとは言わずまでも強い競馬を期待していた。だが、3番手から、2番手にいたセントニコラスアビーを捕えるどころかL1で逆に離されて、ベリーナイスネームクラスにも最後少し詰められたというのは個人的には非常にがっかりした。初の海外遠征で楽ではなかったのは間違いないが、勝つとはいかないまでももう少しジェンティルドンナらしい競馬を期待したのだが、L1で甘くなるというのはこれまでのパフォーマンスを考えても不満が残る競馬だと言える。それで評価を一枚落として宝塚記念では岩田が負けられない宣言をするのだが、ゴールドシップに徹底マークされてしまい、12.0 - 12.3 - 12.4 - 12.7 - 12.7 - 12.6のラップ推移で直線アクションがあっても伸びはジリジリ。突き抜けたゴールドシップはおろか、逃げ粘っていたダノンシャークにまで先着を許しての苦しい3着だった。フェノーメノやトーセンラーと言った総合力タイプには先着したので、個人的には流石に強いなとは感じたものの、やはりこの舞台でポテンシャル勝負になれば化け物のゴールドシップの相手ではなかった。ドバイシーマクラシックは想定以上にダメだったが、この2走は敗因はハッキリと馬場にあったと言えるだろう。恐らく超高速馬場巧者ということで良い。桜花賞のパフォーマンス、チューリップ賞の負け方からも、この馬はスピードに乗せやすい舞台が合う基礎スピードが高いタイプとみるのが一番自然だろう。ギアチェンジはそこそこだがある程度のペースを楽に追走する基礎スピード、そしてそこからトップスピードを発揮し最後までしぶとく伸びるポテンシャルが武器。だからドバイシーマクラシックではタフな馬場でスローの流れ、基礎スピードを活かせなかった。宝塚記念では基礎スピードの高さで良い位置につけたが馬場が悪く、ゴールドシップの追走が楽になった。結局消耗戦でポテンシャルの鬼のゴールドシップとの差が出てしまったという所だ。
その点で、今回は高速馬場になりやすい府中と条件は整った…はずなのだが、週末に台風接近とこの馬としては非常にありがたくない材料が出現した。馬場が悪化して重くなればこれまでからもこの馬のパフォーマンスは1枚落ちる。軽い馬場でスピードに乗ってこその馬であり、府中の2000の舞台で道悪想定になってしまうと、絶対視できるほどパフォーマンスは見せていないだろう。また、秋華賞のパフォーマンスからも、純粋に2000mは少し短い感は有る。もちろん、岩田の仕掛け遅れがあってギリギリになった形で、序盤からポジションを取っていればもう少し楽に勝てたのは間違いないが。それでも、2000よりは2400の方がパフォーマンスが高いのは確か。そんなこの馬とすれば直前には決して良い条件とは言えない要素が揃うことになるだろう。ただ、前述で宝塚記念でゴールドシップ、ダノンバラードにも負けたと言っても、あの条件下で目標になっても3着に粘れるほどのポテンシャルの高さは武器で、ここはあの馬場で強靭なパフォーマンスを見せたゴールドシップ級ほどの化け物はいない。台風接近で2000mと条件は決して良いとは思わないが、この馬の持っている実力を考えれば、それが致命的になるほどではない。相手関係も宝塚や昨年のジャパンカップから比較すれば骨っぽい馬はいても飛びぬけた実力馬は存在しない。この逆風、台風を打ち破ることができるか。歴史的名牝へ向けての道を歩む今年の秋。勝ち負けもあるだろうが、それ以上にどういう条件でもここは恥ずかしくない競馬をしてもらいたい。
相手筆頭には昨年の秋の盾を制したディフェンディングチャンピオン、府中のギアチェンジ戦なら右に出る馬はいない、ダービー馬エイシンフラッシュだ。この馬の鮮烈な印象はダービーで競馬ファンの心に突き刺さるがごとく植えつけられたことだろう。史上最高の日本ダービーとまで言われた豪華メンバーの中で鋭く中から突き抜けたのはダークホースのこの馬だった。超スローの中で各馬も動かず、団子状態の中で12.9 - 12.4 - 11.3 - 10.8 - 11.3と究極のギアチェンジ戦。これで馬群の中からしっかりとペースアップに反応して直線で鋭く伸びてくると、最後は外からしぶとく襲いかかってきたローズキングダムを封じての見事な勝利だった。トップスピードもさることながら、そこに持って行くまでの強烈なギアチェンジは現役最強と言ってもいいだろう。昨年の天皇賞秋ではシルポートの大逃げという余計な要素があってラップ推移で判断は難しいのだが、11.6 - 11.8 - 12.0 - 12.8 - 11.8の流れとはいえこの馬は上り3F33.1という脚で出しきっての完勝。フェノーメノ比較で比べるとわかりやすい。最内をぴったり立ち回って中団から直線を向いたのだが、直線の最序盤で鋭く伸びてL2でフェノーメノより前に出る。L1ではフェノーの方が詰めているように、トップスピードに持って行くまでのギアの切り替えが異常に速い。他馬よりも早くトップスピードに乗せることができるのがこの馬の武器で、そういう要素が問われやすい府中でこそこの持ち味が活きる。前走の毎日王冠はまさにそれが分かりやすい舞台で、同じギアチェンジタイプのクラレントがマイペースで進めて12.6 - 11.1 - 10.9 - 11.3と10.9からL1ですら11.3とあまり落としていない、明らかにギアチェンジが問われる競馬となっている。ここで2列目からロスなく進めて直線序盤も楽に先頭列を見ながらL2で進路を確保し、L1で突き抜けた。流石に今回はクラレントやレッドスパーダと言ったギアチェンジタイプが相手だったので、反応面で分かりやすい程のパフォーマンスとは言えなかったが、この馬の器用さを活かしての好位差し切り勝ちだった。
さて、この馬の場合は非常にわかりにくいレースが多数ある。先週のエピファネイアに通じるところもあるのだが、この馬は本来平均ペースにも強く、基礎スピードもポテンシャルも持っているはずなのだ。例えば皐月賞でも休み明けという条件でヤヤオモ、中山2000の舞台。12.5 - 12.3 - 12.1 - 11.8 - 12.0とポテンシャルを出しきる競馬ではなかったにせよ、外々からしっかり伸びてローズキングダム、外から突っ込んできたヒルノダムールとの接戦の中の3着だ。また大阪杯でも一昨年の大阪杯、宝塚記念でも厳しい平均ペースの競馬に対応できている。極めつけは一昨年の天皇賞春で、道悪でタフな馬場状態となっていた中で、スローペースから12.6 - 12.0 - 12.2 - 11.7 - 11.4 - 12.1 - 12.5とL1落ち込む厳しい早仕掛けの競馬。ここで外々から押し上げて一瞬は勝つかというほどの脚を見せたが、コーナーで楽をしたヒルノダムールに内から出し抜かれる形で勝利を逃がしている。どうみても府中のエイシンフラッシュからは想像が出来ない強烈なパフォーマンスなのだ。昨年は不調期を乗り越えての天皇賞秋制覇もあったが、有馬記念4着で見せたあわやの場面も印象的だ。12.5 - 11.9 - 12.1 - 12.1 - 11.9 - 12.0のラップ推移で最内から一気に出し抜く強烈な脚を一瞬だけ見せた。最後はゴールドシップら外差ポテンシャルタイプに呑まれたものの、どう見ても一介のギアチェンジ馬ではない。エピファネイアの回顧の時にもこの馬を引き合いに出したのだが、恐らくトップスピードは一瞬しか出せないが、この馬にとって楽なペースで走らせたうえで、平均的なロンスパ戦でも長く脚を使えたうえでトップスピードは一瞬しか使えないというような少し変わった馬というイメージで良いと思っている。無酸素運動の持続性に弱い…とでもいうべきか。単に軽い馬場でギアチェンジ、トップスピード勝負が強いだけという認識ではこの馬は説明できない。
今回の天皇賞秋だが、個人的には昨年のようにある程度のペースでもギアチェンジが要求される競馬ならば恐らく安定して力を発揮できるだろう。この馬が崩れているケースはハイペースだったり、厳しい流れで序盤ある程度無理をしているケースに多く、ゆったり運んで後半勝負になっているレースでは大きく崩れていない。JCではオルフェーヴルの流れに沿って大外から追走する競馬になったし、ラップ推移的にもギアチェンジがあまり要求されないトップスピードの持続力が問われる競馬だった。ゆったり進めてペースアップする流れ、ギアチェンジとトップスピードの質が問われる競馬になればチャンスだろう。加えて天皇賞春の内容からも、皐月賞の内容からも、少しぐらいのタフな馬場は苦手とはしていない。流石に良発表とはいえ昨年オルフェーヴルやルーラーシップが活躍したタフな阪神2200の宝塚では苦しかったが。今回の台風予想で道悪になったとしても、全くこなせないことは無いだろう。とにかくこの馬の持ち味であるギアチェンジを活かしてすっと出し抜けるような競馬になればジェンティルドンナには優位に立てる。後は恐らく前にいるであろうトウケイヘイローを捕えることができるかどうかだ。天皇賞秋連覇を目指して、閃光の名の如き末脚を引き出せ。
3番手にはサマーシリーズでも台風の目となった快速逃げ馬トウケイヘイロー。これまではマイル路線でなかなか安定しない走りを見せていたが基礎スピードの高さはマイルでも十分通用していた。ダービー卿では前半からハイペースを番手追走、11.2 - 11.8 - 11.7 - 11.8 - 11.8の流れで一気に抜け出してダイワマッジョーレの追い込みを封じ切っての勝利。基礎スピードの高さが最優先される中山マイルでこの競馬なのだから、マイルでもある程度やれるのは間違いないだろう。京王杯では坂スタートの東京1400だが逃げ馬が集まってその中で強引にハナを取り切って終い甘くなってしまった。基礎スピードの高さと同時に気性面でも脆さがあった馬でもあり、武豊が鞍上に替わって2000と延長になった鳴尾記念でどういう競馬になるかとハラハラしていたが、スローペースを2番手で何とかギリギリ折り合わせていた。が、流石に途中であきらめて12.6 - 11.4 - 11.9 - 11.9 - 11.3 - 11.4 - 12.0のラップ推移を見てもわかるようにハナを取り切ってからは淡々と進めたが、このラップ推移についてこれる馬はいなかった。まさに文字通りの完勝だったと言っていい。続く函館記念では洋芝でややタフな馬場状態の2000m。高速状態だった鳴尾記念から条件がガラッと変わったのだが、今度は序盤から淡々とレースを刻んでいく平均ペースの競馬。12.1 - 12.1 - 12.0 - 12.0 - 11.6 - 12.1のラップ推移で4角で加速して出し抜いての完勝だった。最後まで詰めさせない内容で、このラップ推移で〆られては後続は成す術がなかっただろう。そして極めつけは函館記念。流石にメンバー強化でロゴタイプやトーセンジョーダンと言ったGI馬相手にどこまでと思っていたが、馬場の割に更にペースを引き上げる競馬。極悪馬場も功を奏したか、12.7 - 12.7 - 12.4 - 12.7 - 13.0 - 14.0の消耗戦で誰もついてこれず4角からぶっちぎっての独壇場だ。馬場もかなり酷く大味な競馬になりやすかった函館なので、これを額面通りには受け取らないにしても、これまで3走の内容はどれも完封だったと言っていい。
今回は府中の2000mということになり、まず決定的に違うのが1周コースではなくコーナー3回で直線の長い東京という舞台。これまでとは違う面が多少は求められることは確かだが、この馬にとって明らかに追い風となるのが台風による道悪想定。もちろん開催がずれる可能性もあるので何とも言えないのだが、重馬場、タフな馬場の適性に関しては既に札幌記念や函館記念で証明済み。気性面をどうコントロールするかの不安はもうすでにクリアしているとみていいだろう。武豊の馬任せの逃げで後続を引き離しての単騎の競馬になる可能性は高いし、これを積極的に突いてきそうな馬というのも、シルポートのいない今回は皆無と言っていい。自分の出せる精一杯の時計を叩きだし、後続が追走に苦しみバタバタになるような競馬こそこの馬の持ち味だ。抜群の基礎スピードを上手くコントロールして、府中の舞台を独壇場とすることができるかどうかが勝敗のポイントであることは言うまでもない。3強の中で最も不安材料の少ない馬。後は自分との戦いと言っても過言ではないだろう。自分のペースを作って負けたら仕方がない。それぐらいの気持ちを持っての逃げを見せてもらいたい。サイレンススズカほどの大逃げは必要ないが、府中の舞台を考えればやはり直線までにある程度のリードは欲しいだろう。スローからのペースアップは鳴尾記念からも手綱を緩めることで出来そうだが、ギアチェンジやトップスピードの質に関してエイシンフラッシュには及ぶまい。自分の土俵で正攻法の逃げを期待する。
中編は3強だけじゃない、これまで王道路線を引っ張ってきた実力馬に、前哨戦で結果を出してきた馬たちを注目していく。
巻き返しを狙う筆頭は、昨年の王道路線でも善戦、一昨年天皇賞秋2着も光るダークシャドウ。元々基礎スピードも高い上で、トップスピードの質、ポテンシャル共に高く非凡な馬だったが、脚を出しきれないと甘くなる傾向が強い馬で、ギアチェンジ戦では中団でワンテンポ置かれ気味になる馬だった。一昨年の天皇賞秋の2着はかなりのハイペースで11.8 - 12.0 - 11.9 - 12.1 - 11.8の流れ。直線中団からジリジリ伸び、一旦トーセンジョーダンに交わされてからL1で内から再度詰めて伸びてきての2着。直線で少し進路確保に手間取って少しロスが有ったし、最後まで伸びてきてあの当時のトーセンジョーダンに対してあの競馬が出来ていたし、最後の最後は甘くなっていたが、基礎スピードを要求されるハイペース、さらにそこからトップスピードに入れ、L1でしぶとく伸びてきたように高いパフォーマンスを見せたのは間違いない。この馬は高速馬場でこそ高いパフォーマンスを見せてきた馬であり、昨年の毎日王冠でもスローからの3F勝負だが、12.0 - 10.9 - 11.1 - 11.6とL3最速で脚を出しきりやすい展開ではあった。ここで後方で馬群を捌くのに手間取り、捌いてから一頭鋭く伸びてL1急追しての差し切り勝ち。差し切るのは難しいかなというような位置からL1の減速戦でばてずに鋭く伸びてきた。トップスピードの持続力も極めて高い。高速馬場で脚を出しきれば合がり32秒台を出してこれるほとでもあり、平均ペースの天皇賞秋2着のパフォーマンスを見る限りでも、スピードに乗せた状態を維持できれば高いレベルのパフォーマンスを常に見せてきているといる。府中巧者というだけでなく、ヒルノダムールとエイシンフラッシュの対決となった平均ペースの大阪杯でもL1でエイシンフラッシュを差し切っている。時計が出やすい馬場でスピードにゆったりと乗せ、それを維持する競馬が合っているタイプの馬だろう。
今年はその点で非常に恵まれていない。まず前走の毎日王冠ではドスローなのに後ろにポジションを取りすぎ、12.6 - 11.1 - 10.9 - 11.3のラップ推移で出し抜かれ、L1ようやく伸びてきたもののこれでは苦しかった。安田記念ではマイルでも楽についていけるだけの基礎スピードは見せたが、今度はポジションを取りすぎ、好位外々から11.4 - 11.7 - 11.5 - 11.3 - 11.7の流れで伸びあぐねた。流石に序盤からある程度追走しすぎて持ち味の後半の良さが活き切らなかった形だろう。大阪杯ではさらに如実で、12.2 - 11.6 - 11.3 - 10.9 - 11.5と加速していく流れで4F戦にはなっているが、内に入り込んで前を向けないうちに直線を迎えてしまった。最後まで全く伸びる気配もなかったが、前を向けずこの馬の弱点である動き出しの悪さを露呈させ、上り坂の手前までにしっかりとトップスピードに入れきれなかったのが響いた形だろう。この馬の弱点ではあるが、嵌らなければパフォーマンスは安定しない。逆に言えば嵌れば強敵相手にも互角以上に戦えるだけの武器を持っていると言える。ペースアップには弱い事を除けば2000前後ならGIでも十分通用するはずで、昨年の天皇賞秋はL1でジリジリ伸びてきてはいたが、ルーラーシップにポテンシャルでは見劣った。それでもルーラーシップはオルフェーヴルに伍する唯一のポテンシャルタイプの馬なので、これで見劣ったのはさほど悲観材料ではない。それでも2000mなら平均ペースの方が良いのは一昨年からも確かだろう。
問題は今週の台風の進路だ。基本的に高速馬場を得意としているこの馬にとって、台風で道悪になるという可能性が高い、順延したとしても馬場の悪化は避けられないことを考えると、これまでのパフォーマンス的には不安は有る。ハッキリとした道悪を経験したことが無いのでやってみないとわからない面もあるのだが、エプソムCや調布特別を見る限りはあまり気にする必要はないのかなという気もする。少しソフトな馬場になるぐらいなら、むしろL1で落ち込みやすいので、トップスピードを出しきる展開、または平均ペースとなった時にこの馬の良さが活きてくる可能性は十分にある。最もポテンシャル面だけに関して言うならばジャスタウェイと言った強敵も出てきているので、この辺との力関係がどうかだろう。いずれにせよこれまで王道路線で脇を固めてきた実力馬であることは間違いないし、今年はやや展開面で恵まれていない。巻き返すだけの余地は十分に残されている。後は戸崎がそろそろこの馬の良さを掴んで、しっかりと脚を出しきる競馬ができるかどうかだろう。毎日王冠のような競馬では苦しくなる。
GI馬を忘れてもらっては困る、天皇賞秋の覇者としてはエイシンフラッシュよりも先輩のトーセンジョーダンだ。この馬は全盛期は本当に強く、現役最強クラスの1頭だった。まずは高いパフォーマンスで完勝した一昨年の天皇賞秋を見返したい。ペースは2000mでもかなりのハイペース。シルポートの単騎逃げだったとはいえ、1000通過が56.5で、2番手もある程度ついていってのもの。全体的にもハイペースではあっただろう。この流れの中で中団追走から直線しぶとく伸びてきてダークシャドウやペルーサを抑えての完勝は高い評価をすべきだろう。特にL1では序盤詰めてきていダークシャドウを最後に離している。相手関係を考えてもブエナビスタやエイシンフラッシュがいた中での完勝と見れば、ハイペースで基礎スピードとポテンシャルが要求される厳しい競馬でこそ良さが出たとみていいだろう。ジャパンカップ2着は個人的にはこの馬の競馬の中で一番評価しているレースで、2着にはなったが勝ちに等しい強い競馬だった。ややスローの団子競馬で落ち着いていたのだが、アンカツのウインバリアシオンが3角で捲って12.3 - 12.5 - 11.9 - 11.2 - 11.0 - 11.5 - 12.0とペースアップしL3最速の消耗戦となっている。特にL4が11.2とコーナーの地点でこれほど速い脚が要求されることは極めて稀な競馬になったのだが、ここでペースアップについていって中目から4角で勝ちに行って2列目外で直線。序盤で外から最速地点でもジリジリ伸び、L2で先頭に立つ。ただL1でブエナビスタに外から差されての2着。何故評価しているかというと、ブエナビスタはペースアップした3~4角で速い所で最内を追走するという楽な競馬になっている。このレース、トーセンジョーダン以外の上位4頭は全て最内を回している。この馬だけ勝ちに動いて最速地点で外目を回してのもの。これは非常に価値があるし、目標になって最後差されたが内容とラップ推移を見れば勝ちに等しい。極めて高いポテンシャルを見せていた。
有馬記念ではスローで12.0 - 11.9 - 11.4 - 11.3 - 11.3の流れ、仕掛けも後手になったので全く気にしなくていい。この展開ではトップスピードの質で足りないのはその前のヴィクトワールピサの有馬でも証明済みで、出来れば平均的な競馬か、仕掛けが早く脚を出しきれる競馬で良さを出してくる馬だ。昨年の大阪杯でもタフな馬場で超スローからのトップスピード勝負で12.7 - 12.3 - 11.9 - 11.2 - 12.2の流れでハナを切ったがトップスピード面で優位に立てなかったし、L1もしんどくなってショウナンマイティに豪快に差し切られ、フェデラリストにも交わされた。こういったギアチェンジの競馬は合わない。加えて、重のアンドロメダSでナムラクレセントに敗れたり、函館の五稜郭Sでも敗れたり。休み明けがダメだったり、或いはタフな馬場を好まなかったりと弱点は有る。ショウナンに敗れた大阪杯もヤヤオモで時期的にも少し時計が掛かる馬場だったが、完敗だった。特に今回はタフな馬場で結果を出せていないという点が個人的には気がかりだ。土日は恐らく台風で開催すら際どいラインにあるはずなのだが、順延になったとしても翌週の祝日に代替とかでもならない限りは道悪が付きまとう。前走の札幌記念は休み明けの上に重馬場ということもあったので、いたかどうかすら分からないほどレースに参加できなかった。あれは流石に極端なケースだが、高速馬場でスピードに乗せてポテンシャルを活かしたいタイプには間違いないので、当日に考えられる台風はこの馬にとっては良い材料とは到底言えないだろう。しかし、叩いて2走目、これで劇的に替わる馬でもある。高速馬場向きなのは傾向からも確かだが、2走目で全盛期の力は最上位だった。巻き返しを期待したい。
今年の宝塚記念で3強の2頭を崩しての2着で一気に頭角を現したのがダノンバラード。元々は重賞では少し足りない馬という認識で、オープン特別では強い勝ち方が出来ても、重賞となるとなかなか勝ち切れなかった。皮肉にも転機となったのがAJCC。このレースは後になかなかのハイレベル戦だったとわかるのだが、ある程度タフな馬場で平均ペースからの12.2 - 12.4 - 12.5 - 12.1 - 11.5 - 12.7の流れ。中団で進め、3角で動いて4角では先頭列に並びかけるような形で直線を向く。ここで内からまだ手応えがあったであろうトランスワープの前を完全にカットして押し切った。これはかなり酷い騎乗であり、またトランスワープがあそこから伸びを見せようとした時のものなので、正直アレが無ければ勝っていたかはハッキリわからなかったと思う。ただし、トランスワープ比較で見たら難しいが、3着はアドマイヤラクティであり、4着はサトノアポロ。厳しいペースで3,4着馬を問題とせずに突き抜けたという点は単純に評価できる。これは宝塚記念2着への伏線とも言うべき、2200mで時計が駆るタフな馬場での積極策でポテンシャルを活かしてきたと言える。そして宝塚記念では雨が降って渋った状態、時計が掛かるタフな馬場で積極果敢に先行策。大逃げのシルポートを無視して実質ハナでレースを作る立場となった。11.9 - 12.0 - 12.3 - 12.4 - 12.7 - 12.7 - 12.6のラップ推移でシルポートただ1頭超ハイペースだが、2番手のダノンバラードの1000通過が61秒ぐらいだったので他は平均ペースぐらい。3角で積極的に動いて出し抜きを狙い、4角ではジェンティルらよりも先にトップスピードに乗ると、直線序盤で先頭に立つ。流石に一瞬だけでゴールドシップが一気に交わしてしまったが2着は確保した。こういった平均ペースで積極策が合うという一面を示したのは大きく、AJCC同様この馬のパフォーマンスを発揮するには序盤からポジションを取って追走することが重要だったと言えるだろう。
また、ここからもこの馬は道悪に強い。道悪というよりは適度に時計が掛かる馬場とでも言うべきか。AJCC、宝塚記念を見ても明らかだろう。早めに仕掛けても最後までしぶとく粘れるポテンシャルが武器で、良馬場だとこれまでからも要所での反応で明らかに見劣っていた。ギアチェンジ面で弱さがある馬なので、高速馬場でも小倉記念のように緩急少なく淡々とした競馬なら置かれずついてこれるが、それでもトップスピード面で苦しい。L1ばてないと良さが出ない馬だ。積極策で良さが出たのは自然ともいえるし、タフな馬場でトップスピードが相殺され、ギアチェンジも要求されずポテンシャルや基礎スピード面が要求される競馬が合うというのも納得だ。今回は東京2000なので渋った方が当然良い。その点で台風で馬場が悪化しそうなのは歓迎材料なのは間違いない。またトウケイヘイローがある程度厳しいペースを刻む可能性も高く、この馬の良さが非常に引き出しやすい展開、条件となる可能性が高いと言えるだろう。宝塚記念でもゴールドシップには完敗だったが他は完封。普通にこれまでの実績と適性を考えればここでも主役を演じるだけのパフォーマンスは見せてきている。
京都大賞典でゴールドシップ食いを達成し、一躍時の馬となったヒットザターゲットがこの舞台に駒を進めてきた。ただし、前走京都大賞典は流石に嵌りすぎた。中団で進め、11.7 - 11.4 - 11.1 - 11.6 - 11.3 - 12.0とニューダイナスティの仕掛けで一気にペースアップした流れ。その中で内枠を利して3~4角では最内をロスなく立ち回って直線で横に広がった馬群の外に持ち出すと一気に伸びての完勝だった。内からアンコイルドの強襲もあったがこれを捻じ伏せての驚きの単勝万馬券勝ちだ。ただ、もともと高速馬場下でのロンスパ戦には定評があった馬で、小倉大賞典でも11.7 - 11.2 - 11.5 - 11.8 - 11.9のL4最速戦でロンスパ戦。後方最内から上手く立ち回って最後はキッチリ差し込んできた。高速馬場でのポテンシャル戦ならばダコール相手に勝ち切っているわけで、完全に嵌り切れば苦手条件のゴールドシップや勝ちに動いたトーセンラーの内で脚を溜めて直線外でズドンだったとはいえ、取り立てて驚くほどではない。流石に勝ち切るほど展開が嵌るとは思わなかったが、個人的にはこの展開なら来るよなあ、と思っていたので。今回は府中の2000。この馬は極端に酷い馬場になるとまずいが、軽い道悪はそれほど気にはならない。基本的にはポテンシャルタイプの馬で、重賞3勝はいずれもL1落ち込んだレースでの差し込み。今回の天皇賞秋も馬場悪化が予想され、ペースも上がる要素が多い。今回も運び方次第でノーチャンスではないだろうが、同型が強く京都ほどコーナーワークの差が出ない舞台。過度な期待は禁物だろう。
オールカマーの覇者ヴェルデグリーンも急浮上。前走のオールカマーでは昨年ほどの超高速状態ではなかったとはいえ、好走状態には有った中山2200mの舞台。平均ペースから11.8 - 12.2 - 12.1 - 12.4 - 11.8 - 12.1の流れで後方から3~4角で外目を回りつつ出口で大外に出すと直線序盤で一気に2列目まで押し上げ、L1でそこからしぶとく粘り切っての勝利だった。L1は思っていたほど伸びきることは無かったが、4角で内々から一気に外に出してからのトップスピードは非常に非凡だったと言える。最後はメイショウナルトが内から伸びを見せていたが、通っていた場所を考えれば強い競馬だったのは間違いない。もともと調布特別で面白い競馬をしていた馬で、スローからの12.3 - 11.1 - 11.0 - 11.1と典型的ギアチェンジ戦のレースだったのだが、3列目の最内で直線進路が無く外に持ち出してからの競馬になったが、L2からじわっと伸びを見せてくると、L1で11.1の流れで2馬身差ほどを差し切っているようにトップスピードの質は極めて高い。このレースだとギアチェンジ能力が問われるはずなのだが、これはそれほど見せず、L1で11.1と落とさない中での差し切り勝ち。これは大いに評価したいところだ。今回は恐らく道悪想定となるのだが、傾向を見ている感じでは不安材料と言えるだろう。良馬場でトップスピードに乗せて良さが出るタイプの馬で、質は高いがすっとは動けない。オールカマーのように外々から勢いに乗せてL2の最速地点で凄い脚を使えていることからも、道悪でスピードに乗せやすい舞台だったり、序盤からペースが引き上げられて追走に脚を使わされる場合は不安の方が大きいだろう。前走は鮮やかだったが、ここは試金石の一戦だ。強さを見せることができるか?
後編では穴馬を発掘していきたい。今年は面白いメンバーが揃っていて、台風の影響を受ける可能性も高く、適性的に面白そうな馬を掘り下げていければ。
毎日王冠で2年連続の2着、エプソムCから3連続重賞2着と既にシルバーコレクターぶりが板についてきたジャスタウェイ。昨年の毎日王冠ではペースが早く、非常にタフな競馬での差し込みだった。11.8 - 11.8 - 11.5 - 11.7 - 12.2とL3最速でL1落ち込む良馬場の府中としてはかなり例外的な競馬となったが、中団で進めると序盤はジリジリながらも最後までそれを維持して前にいたカレンブラックヒルにL1で急追するパフォーマンスを見せた。この馬の持ち味は明らかにポテンシャルの高さにある。L1で落ち込む競馬になれば安定して食い込んできていることからも明らか。またトップスピードの質自体もそこそこは良いものを持っているが、昨年の天皇賞秋を見ても11.6 - 11.8 - 12.0 - 12.8 - 11.8とシルポートが単独で飛ばしただけで、2番手以降はそこまでペースが上がっていない中では、直線序盤での伸びは微妙でL1でジリジリと伸びてきているように、最上位の馬相手に戦えるほどではなかったし、要所で加速が問われると甘くなる傾向が強かった。所が、今年の夏から事情がちょっと変わってきた。エプソムCではややスローの流れの中、12.0 - 12.1 - 12.0 - 11.2 - 11.5の流れで最内をスムーズに突いてきたが届かずの2着。これは少し展開が恵まれたにせよ、トップスピードの質の高さを見せてL1ではクラレントに迫った。毎日王冠では更に極端なスローになり、12.6 - 11.1 - 10.9 - 11.3の流れでクラレントを交わしての2着である。この毎日王冠では中団で外を向けたこともあるだろうが、最速地点まででも置かれず、それでいてL1でもこの馬らしくトップスピードを持続させてのものであり、この内容は非常に価値がある。これまでポテンシャルを出しきって良さがあった馬がこういったスローでのトップスピード面でも磨きが掛かってきたというのは大きいだろう。今回は道悪だが、東スポ杯の4着ぐらいしかないので何とも判断しづらい所。力をつけてきた馬、菊花賞を勝って牡馬クラシックを制し勢いに乗る福永とのコンビで沸かせることができるか。
3歳から唯一の参戦となりそうなのが皐月賞3着馬コディーノ。2歳の段階ではクラシック最右翼と言われながらも、結局大きなところは取れないまま菊花賞に参戦せず天皇賞に矛先を向けた。札幌2歳Sでは12.5 - 12.6 - 12.0 - 11.6 - 11.3の流れでラウンドワールドが緩い地点で押し上げてきていたのを見て好位から外に出して仕掛けるとすっと動いて出し抜いての完勝。L1最速でこの競馬が出来ているように、ギアチェンジとトップスピードの高さをはっきりと示したと言える。朝日杯ではハイペースでロゴタイプに乾杯したが3着以下は問題としておらず、皐月賞でも同様にハイペースを好位追走して、4角で外から押し上げてきたロゴタイプやエピファネイアに出し抜かれて2列目内からジリジリばてずに食らいついての3着ではあった。4角で前を向けなかったのも多少痛かったのもあるが、この2頭に正攻法でこの差なら悪い内容ではないだろう。ダービーは鞍上が替わって積極的に出していって1角で接触して掛かって終わってしまった感じ。立て直しての毎日王冠は期待していたのだが一伸びとまでは行かなかった。だが、一応同じぐらいの位置にいたダークシャドウやショウナンマイティと言った強敵とはさほど差はなかったので、展開を考えればポジションが悪かったことが最大の要因であり、出負けが結果的に大きく響いたとみていい。本来はある程度の位置からすっと動いて総合力の高さを活かしてくるタイプなので、良い位置につけて器用さを活かせる競馬になればという所。今年は道悪想定なので、重い馬場に対する適性がどうかのかは不安材料もある。札幌2歳Sは洋芝ではあったが、昨年の札幌はかなり時計が出ていた軽い状態だったのであまりあてにはならないだろう。何とか意地を見せてもらいたいところだ。今年の天皇賞のCMが3歳(旧4歳)で秋の天皇賞を制した史上初のバブルガムフェロー。同じ藤沢厩舎が送る3歳の才馬の復活に期待したい。
復活の目途を立ててきたのがトゥザグローリー。前走の京都大賞典ではスローからの超ロンスパ戦の流れ。12.4 - 11.7 - 11.4 - 11.1 - 11.6 - 11.3 - 12.0と厳しい競馬になったのだが、中団からじわっと仕掛けて3列目の中目でしっかりついていくと、直線で2列目ゴールドシップの内から一旦は先頭に立つ見せ場を作った。流石にL1で甘くなって3着争いの中不利な6着となってしまったが、これは6着という着順以上に評価できる内容で、良かったころのトゥザグローリーの武器である要所の最速地点での強さをしっかりと見せてくれたといえる。この馬は王道路線だと甘くなるが、有馬記念2年連続3着時はスローからの向こう正面下りでのペースアップで平均的な脚を長く持続する競馬で良さが出ていた。また、スローからのギアチェンジ、トップスピード勝負でも強く、昨年の鳴尾記念では2列目から12.5 - 11.9 - 11.2 - 10.6 - 11.6と要所でペースアップしてギアチェンジや最速10.6が示すように高いトップスピードの質が要求されたが、この競馬でもきっちり抜け出してショウナンマイティの強襲を封じている。この馬の場合は馬場はあまり拘らないが、序盤はスローの方が良さが出やすい。レコードとなった秋の天皇賞でも見せ場があったように全盛期なら問題なかったが、それでもトーセンジョーダンや、ダークシャドウら基礎スピード適性がある馬には完敗している。天皇賞春の惨敗で分からなくなっているが、気性面の問題であって本質的には距離が長い方が競馬がしやすいようにも感じる。阪神2400で行われた日経賞なんかはスローから12.3 - 11.9 - 11.5 - 10.8 - 11.4 - 12.3とかなりのロンスパ戦でL3最速とえげつないポテンシャル勝負を好位から仕掛けてペルーサやローズキングダムを子ども扱いしていた。ピーク時の強さがGI級なのは間違いないだろう。今回は道悪というよりも、馬場が重い中でペースが下がらず追走に脚を使わされるケースになるので、その点のリスクは有る。ただ前走を見る限り、長いトンネルの中に一筋の光は見いだせたか。
昨年の有馬記念2着馬オーシャンブルーがどん底にあえいでいる。昨年の有馬記念ではゴールドシップが早めに押し上げてきてタフな競馬が展開され12.5 - 11.9 - 12.1 - 12.1 - 11.9 - 12.0とロンスパ戦となっていたが、中団から3~4角で中目追走し、直線でも馬群の中からしぶとく伸びて2着を確保。外々のゴールドシップには完敗したが、向こう正面の下りからのペースアップでスピードに乗って長く維持するポテンシャルの高さでは良いものを見せた。かなり出遅れたとはいえ、ポテンシャル型の強敵ルーラーシップに先着できたのは非常に価値がある。しかし今年は酷い。日経賞ではスローの3F勝負だったとはいえ一伸びすらなかった。ただこれは有馬記念とのレースの質が全然違うし、昔からそういったレースの質の差で有馬記念馬が崩れてきたレースでもある。前走のオールカマーでは中団で何とか追走し、3~4角で中目を追走したが出口で少し壁になったとはいっても最後までジリジリで伸びでも見劣った。このレースでは基礎スピード面で苦しんだ感じは有るが、それでももう一伸び位は欲しかった。ただ、ばててはいないのでこれは日経賞ほど悲観する材料ではないだろう。金鯱賞のように序盤スローからの11.9 - 11.8 - 11.8 - 11.7 - 11.5 - 12.0とロンスパ戦こそがこの馬の持ち味で典型的なステイヤー要素が強い馬。それだけに、東京2000の舞台で器用さや基礎スピードを要求されたケースでどうかだろう。今回は台風の影響で道悪になる可能性が非常に高い。その点がこの馬にとってどう転ぶかにもよるだろう。そろそろ復活の兆しを見せてもらいたい。
道悪で浮上してくるのがナカヤマナイト。オルフェーヴル世代のダービーでも離されたとはいえ不良馬場で4着と適性を見せていたが、やはり中山の道悪で見せた2走だろう。一つはAJCCで、ポテンシャルの鬼ルーラーシップにL1で差されはしたものの、12.5 - 12.4 - 12.3 - 12.1 - 12.0 - 12.2の流れで中団から進め、3~4角でじわっと動いて勝ちに行ってL1甘くなった形。相手が悪かったがこの馬自身は強い競馬をしていて3着以下はしっかりと離している。また昨年のオールカマーでもスローから12.9 - 12.6 - 12.6 - 12.0 - 11.7 - 12.3の流れで中団から3角でダイワファルコンが動いたのと一緒に動いて4角では2頭で捲って後続を引き離しつつ直線を向くと、最後はこのダイワファルコンを捕えての勝利。道悪となると高いパフォーマンスを示しているが、意外にも序盤はどちらもスロー気味での競馬だったと言える。序盤にペースが上がるとあまり良くないというのはこの馬にとっては馬場に関わらずで、あまりタフな競馬は好まない。どちらも要所で動いて行くことで良さが出ているので、その点では中山の方が合うというのは間違いないだろう。今回は道悪想定なので、これは単純にプラスになるが、やはり東京2000mでペースが上がったり、ややスローだったとしてもトップスピードの質が少し要求されるとなると、これまでのパフォーマンスからもGI級には足りない馬。楽に好位につけてペースが上がらずという流れになれば要所の動き出しで出し抜いての粘り込は面白いだろう。
京都大賞典2着、函館記念2着、札幌記念3着と安定してきたアンコイルド。この馬は平均ペースで良さが出てきた基礎スピードタイプで、11.7 - 11.4 - 11.1 - 11.6 - 11.3 - 12.0のラップ推移で内からしぶとく伸びてきての2着だった。札幌記念も函館記念も、どちらもタフな馬場で、緩急の少ない競馬となっていて、インを立ち回ってしぶとく伸びてきての善戦といえ、ポテンシャルもさることながら、厳しい流れに対応出来る基礎スピードが魅力的と言えるだろう。元々寿Sでもきれいな平均ペースでしぶとさを活かしてきた馬。2000の舞台でも厳しい流れになるのは歓迎できそうだ。加えて雨で馬場が渋りそうなのも、この馬にとっては札幌記念からも歓迎できそうで、ここ数走確かに恵まれたが今回もそうなる可能性は十分にあるといえるだろう。怖い存在だ。
最後に今年の天皇賞春で2着と健闘したトーセンラーにも触れておこう。天皇賞春では12.8 - 12.9 - 11.9 - 11.8 - 12.6のラップ推移で外目中団からゴールドシップの押し上げを待って仕掛けた上で、好位で前にいたフェノーメノを目標にしぶとく伸びた。流石にフェノーメノを捕える脚は出せなかったが後続は封じきっての2着は評価できる。この馬は、これまで基礎スピード面に関してはやや劣勢を強いられていて、序盤ゆったり運ばせて後半のトップスピードで良さを出してきた。ポテンシャルもある程度は見せているが、本質的には要所で速い脚を使いたいタイプ。2000だと基礎スピード面で苦労して、要所で良さが出なかったり、ポジショニングで苦労して終いようやくだったり。その点で府中の2000がこの馬にとってどう転ぶかは、展開や馬場次第といった所だろう。馬場悪化で追走に苦労するようだと難しい面もある。実際良馬場発表だが雨でソフトな馬場だった宝塚記念では追走に脚を使って良さがでなかった。厳しい流れになると不安材料が大きいだろう。 10/27 13:56
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