ナリタトップロード物語　第１話「出会うべくして」

「ついにやった！渡辺やった！渡辺やった！ガッツポーズ！うれしい！うれしい！渡辺やったぞ〜！」

１９９９年、１１月７日。京都競馬場は沸いた。テイエムオペラオー、アドマイヤベガと並び当時３強と呼ばれながら唯一無冠だったナリタトップロード。そのナリタトップロードが遂に悲願を達成した。早め先頭で押し切る競馬は、まさに菊花賞の格言にある「菊花賞は本当に強い馬が勝つ」を証明する強い競馬だった。人馬ともにＧ�T初制覇。鞍上の渡辺薫彦は笑顔でＧ�T制覇の喜びに浸った。この瞬間は陣営もファンの誰もが「さぁこの後は有馬記念、来年は天皇賞春制覇だ！」と青写真を描いていた。サンデーサイレンス産駒がＧ�Tを勝ちまくっている中で、サッカーボーイ産駒、いわゆる父内国産産駒がＧ�T制覇。若いファンだけでなく、オールドファンもサッカーボーイの現役時代と照らし合わせてこの馬を応援した。誰もがこの馬の活躍を信じて疑わなかった。いや、この時点では疑う余地は無かっただろう。それぐらい京都競馬場は沸いていた。しかし、このあと苦悩の日々が続くとはこの時誰も想像していなかった…。

ナリタトップロードは１９９６年４月４日に北海道の佐々木牧場で生まれた。トップロードが生まれた当初、場主である佐々木氏は「はじめて自分が頭に思い描いたとおりの馬が出たと思いました」と話されている。父・サッカーボーイ似の綺麗な栗毛（サッカーボーイは栃栗毛だった）、母から受け継いだ雄大な馬体。とにかく理想的な仔馬だったそうだ。

その評判が広まり、佐々木牧場には何人もの調教師が訪ねてきた。そんな中やってきた沖調教師。ひと目でトップロードを気に入り、佐々木氏と交渉。沖氏は深々と頭を下げ、熱い気持ちを佐々木氏にぶつけた。佐々木氏は沖氏とは初対面だったが、その熱意に心動かされ、トップロードを預けることを承諾した。

トップロードはとにかくのんびり屋の馬だったという。サッカーボーイのような筋肉隆々の馬体を期待していた佐々木氏だったが、幼い頃は筋肉のつきが弱く、なかなか人を乗せられるような感じでは無かったらしい。時々様子を見に来ていた沖氏と共に、「期待しているだけに、本当にこれで大丈夫なのか…」と、よく心配していたという。

そんな周囲の心配をよそにトップロードは順調に成長はしていった。そしてその不安が残る中、トップロードは沖厩舎へと移動していった。入厩後も大きなケガなどなく、無事に新馬戦を迎えることとなった。

デビュー戦は１９９８年１２月５日の阪神４Ｒの芝２０００Ｍ。トップロードは単勝２，６倍の１番人気に支持されていた。この時、私は競馬好きの叔父に連れられ新潟競馬場にいた。ボーっとそのレースのパドックを眺めていると、ひと際目立つ存在が。それがナリタトップロードであった。競馬なんてまだほとんど知らない当時の私であったが、そんな素人目にも（今もまだまだ素人だが…）トップロードの馬体だけは他馬とは違って見えた。それぐらいナリタトップロードという馬は際立って見えた。叔父にねだりトップロードの単勝馬券を購入してもらった。その馬券は今でも宝物である。結果、先に抜け出したマイネルサクセスをクビ差とらえられず２着と敗れるが、私は何故か満足だった。もちろん勝てなかった悔しさもあったのだが、それ以上に初めて追っかける馬ができたことに心底満足していた。その日のうちにすぐにアドレスをトップロードにしたことは今でも忘れていない。

同じ日の阪神１０Ｒエリカ賞。トップロードを語る上で無くてはならない存在であるアドマイヤベガが、単勝１，２倍に応えて優勝した。父・サンデーサイレンスに母・ベガという日本を代表する超良血馬アドマイヤベガ。ここから２頭の運命の歯車は回りだしたのだ…。

つづく…。

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